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スキファーノ先生のレッスン室~なぜか私はときどきそこに戻る


イタリア留学時に、ローマでレッスンを受けたルイージ・スキファーノ先生
「Stabat Mater」を歌った日にも記しましたが、レッスンは厳しいものでした。しかし最近、歌の練習をしていると、先生のレッスンをよく思い出します。引き出しに入れたままになっていた大切なものを取り出している感覚かもしれません。

先生との出会い、いざローマへ

先生との出会いは、先生が日本旅行に来ていた際に、紹介によって受けたレッスンでした。

生で先生の歌声を聴いてびっくり。ものすごく力強い声で、すっかり魅了されました。そのレッスンで、イタリアでの師事を嘆願し、数か月後にはローマでレッスンを受けていました。

先生とは5歳ほどしか歳が離れていなかったためか、友達を迎えるように喜んでくれていることが事前のメールからも伝わってきました。音出しができる部屋を持っているという音楽家の知人まで紹介してくれて、至れり尽くせり。私も憧れの地ローマに行けることも相まってワクワクして出発しました。

現地では、ローマの中心地から電車に乗って先生の家に通っていましたが、風光明媚な丘の上に建つ素敵なお家から、とてもきれいな景色を眺めながらのレッスンでした。

イタリア時間

私は先生に、「自分で練習せず、週に3~4回はレッスンに来なさい」と言われ、2日に1回は電車に乗ってレッスンに通っていました

電車は15分に1本の間隔で走っていましたが、毎回先生から指定された電車に乗り、駅までは先生が車で迎えに来てくれていました。しかし、毎回のよう電車は遅れるので、先生を待たせてしまい申し訳ないなぁ、と思い、お待たせしないように、1本早い電車に乗るようにしていました。

が、ある時、先生から「1本遅い電車に乗ってきてほしい」と電話がかかってきました。「もう電車に乗っていますが、駅で待っていますので大丈夫です」と言ったところ、びっくりされ、ちょっと怒られました。
「君は日本的過ぎる。ここはイタリア。電車が遅れるのは君のせいじゃないから、指定した電車に乗ってきなさい」
と。

そして、先生が来日したときには、「私はイタリア人だから」との理由で、よく待ち合わせ時間に遅れていらっしゃいました(笑)

心が折れそうな日々

何度も言いますが、レッスンはとても熱く、厳しいものでした。先生には、君はソプラニスタと言っても、女性のソプラノに近すぎる! 男性ソプラノたるもの、もっとしっかりと……というお説教のような話をされました。語源などの話に関しては「ソプラニスタ」ってご存じですか?をご覧ください。

先生のレッスンは体当たりで、声に対する妥協はなく、ほとんど発声指導、曲のレッスンまで行きつきませんでした。お手本で歌ってくれる先生の声を聴いて、正直なところ内心「これが本場の声か、自分には無理じゃないかな」と心が折れそうになり、帰りの電車でぐったりしていました。

苦手な低音を克服する方法とは?

ソプラノは皆さん苦労するところだと思いますが、私は歌を始めた時から低音が苦手でした。あるとき「嘔吐するように歌ってみなさい! 」と言われたことがありました。

特に低音を強化するための歌い方、ということでおっしゃったわけではなかったのですが、言われるままにやっていました。当時は理解できず、頭の片隅に置いておいたのですが、帰国後日本で師事している先生のレッスンで同様のことを言われ、低音のみならず、私の問題点が随分改良されたように実感しました。

やり過ぎは禁物ですし、私個人の体感ではかなり難しい練習で、誰にでもお薦めというものではありませんが、ちょっとご紹介まで。このレッスンのおかげで、vomitare(嘔吐する)というイタリア語はしっかり覚えさせていただきました(笑)。


最後のレッスンでも厳しくご指導くださいましたが、「君が今後ほかの先生と勉強しても、僕と勉強したことはとても大切だからね。レッスンじゃなくてもまたおいで」と送り出されました。

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今とても身に染みています。

度々あのレッスン室を思い出し、初心に帰って練習しています。

いつか、親日家(?)スキファーノ先生の来日記もお届けしたいと思います。お楽しみに!

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