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「ファスト&スロー」を読む - ①速い思考と遅い思考

さあ、木曜日だ。

木曜日は心理学を取り上げていきたい。
とは書いたものの、ボク自身は心理学の専門家ではないし、心理学そのものに興味があるわけでもない。どちらかと言うと「自分自身の思考の中に言語化できないもどかしいものが存在していて、それを解き明かしていきたいという思いの方が強く、その答えがどうやら心理学にありそうだ」という感覚でいろいろな本を漁っている、という説明が最も近い気がしている。

さて、前置きが長くなってしまったが、今週から始めるこのシリーズでは、ダニエル・カーネマンという人が書いた「ファスト&スロー」という本を取り上げて、ボクが読み進めながら受けたインスピレーションを書き連ねていこうと考えている。

ご興味おありの方は、ゆっくりお付き合いいただけると幸いだ。


ダニエル・カーネマン著「ファスト&スロー」について

この本の著者であるダニエル・カーネマンは、イスラエルおよびアメリカで活躍された心理学者・行動経済学者だ。ブリティッシュコロンビア大学、カリフォルニア大学バークレー校、プリンストン大学などので教鞭をとり、2002年にはノーベル経済学賞を受賞されたご経歴の持ち主だが、残念ながら今年の3月に90歳でお亡くなりになっている。

「ファスト&スロー(原題は "Thinking Fast and Slow")」は2011年にアメリカで出版され、日本版は村井章子氏の訳で2012年に発刊されている。ちなみに、日本語訳版には「あなたの意思はどのように決まるか?」という副題が付いている。

今のところ「序論」とのところまでしか読んでないが、この本全体を通してテーマとして論じられるのは、「ヒューリスティクス(heuristics:発見的手法)」と「バイアス(bias : 偏見・先入観)」の2つのようだ。ヒューリスティクスとバイアスという概念は、心理学の中だけでなく、医療診断や司法判断、情報解析や哲学、金融、統計、軍事戦略など多様な分野で建設的に活用されているそうだ。

しかし、ダニエル・カーネマンは、専門家の直感的な判断(この本の中では、消防士が直感的に危険を察知して退避した例や、チェスの名人が一目であと三手で詰むことを言い当てたりする例を挙げている)について、すべてがヒューリスティクスだけで説明することができるわけではないと説いている。それ(専門家の正確な直感)は、長年に渡る訓練と実践によって培われたスキル、そしてヒューリスティクスとのバランスにおいて実現できるものであると。

ただし、これは専門家に限ったことではなく、ボクたちも普段の生活の中でそういった判断を行っている。ここではダニエル・カーネマンの言葉を借りるとしよう。

私たち自身も、毎日何度も専門家ばりの直感を働かせている。たとえばたいていの人が、電話に出て第一声を聞いた瞬間に相手が怒っていることを完璧に察知するし、部屋に入った瞬間にいままで自分が噂の種になっていたことに気づく。また、隣のレーンを走る車の運転者が危険であることをかすかな兆候から読み取って、素早く対処している。私たちが毎日発揮している直感的能力は、経験豊富な消防士や医者の驚くべき直感に勝るとも劣らないのだ。ただ、ありふれているというだけである。

速い思考と遅い思考

さて、ダニエル・カーネマンは、ボクたちがこういった直感的判断を下すに至るプロセスについて「速い思考」と「遅い思考」の二つで行われていると定義している。

速い思考=システム1
これは、専門的知識およびヒューリスティックな直感的思考に加え、知覚と記憶による「完全に自動的な」探索が行われることを指す。そして、ボクたちの判断の大部分はこちら(システム1)の方である。

遅い思考=システム2
システム1における自動探索が失敗した(専門的スキルによる解決も、ヒューリスティックな解決も、思い浮かばなかった)場合、ボクたちはより時間をかけて頭を使う熟慮熟考へスイッチを切り替えることになる。しかし多くの人が、ここにたどり着く前にシステム1のフェーズで「元々の問題に関係があるが、より簡単に置き換えた問題」への回答で済ませてしまう。

なるほど。
これは非常に興味がある理論だ。
ボク自身はシステム1の反応が早い方だと自負できる。しかし「より簡単に置き換えた問題」の回答になっている場合も多いかもしれない。しかし、正しくシステム2に移行できているかと問われると、それには自信が無いかもしれない…

(続きはまた来週)


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