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電影鑑賞記『臨時決鬥 Hit N Fun』(2025)

賀歲片だから、いや、賀歲片だけに、観るべきかどうか迷っていた。

German Cheungと Philip Ng は絶対に観たいが、Gigi Leung がボクシングやるとかフニャフニャでもまあ良しで流してるんじゃないだろうか、Louis Koo 古天樂のコメディ・タッチの芝居は『喵星人 Meow』(2017) で背中がむずむずしたのでキャップ被っちゃってる今回もちょっとキツイかもしれないし、いやでも陳湛文がどんなキャラと芝居なのかは観たいし、周秀娜は『女士復仇』(2017) でアクション練習したから今回のボクシングは安心して観ていられるかもしれないし・・・といろいろ心揺れたのだけれど、German の謝票があるとなったのでもう迷うことなくチケットを取った。

Wiki によると「導演麥啟光指本片本來不是賀歲片,但因為籌拍時港產賀歲片檔期懸空,所以就臨時「轉陣」將該片變成賀歲片=麥啟光導演によると、本作はもともと賀歲片にするつもりはなかったのだが、準備期間中に賀歲片上映スケジュールに空きがあると聞き知ったので急遽「陣容を変えて」賀歲片にした」とある。10月末から11月末に撮影して賀歲片として上映するにはかなりキツいスケジュールだったと思うけれど、よく頑張ってくれたものだ。単なる賀歲片ではない賀歲片に仕上がっている。

鑑賞後に知ったのだけれど麥啟光は2024年の賀歲片『臨時劫案 Rob N Roll』の導演。なるほど、だから中文戲名が「臨時」繋がりで、英文タイトルも「Rock'n Roll」からの「Rob N Roll」で、「Hit and Run」からの「Hit N Fun」、しかも真ん中に「N」なんだね。納得した。こういうセンス大好き。

導演は文字選び・言葉遊びのセンスが本当に良い。

まずは初っ端。客を連れて来た高秋(胡子彤)が紹介する鍾磊(古天樂)のジムの名前が「鍾磊舍」。ここで観客大爆笑。「鍾磊舍」の音が「中旅社」と同じ音だから。これで掴みはOK。私も、あれ?この作品もしかしたらいけてるかも?とちょっと身を乗り出す。しかし実はこの作品、もともとの題名は「中女社」だったらしい。核となるストーリー・ラインは3人の中年女性のお話だったからだそうな。「中女社」=「中旅社」=「鍾磊舍」。いいわぁ、この言葉遊びのセンス。

そして鐘磊の娘の名前が「鍾意」。広東語を解する人なら必ず知っている「好き」の意。『九龍城寨之圍城』の魚蛋妹を起用している。子供の成長は早い。顔を観れば魚蛋妹だとわかるけれど、随分大きくなっているよ。

そして王丹妮の役名がなんと「林雪」。登場シーンでは会社CEOという設定により皆から「雪總」と呼ばれているので皆気付かない。暫くしてからフルネームの「林雪」で呼ばれた所でまた観客ドッと沸く。ネタ落下のタイミングがいいねぇ。

あと、何の名前だったか忘れた(ツアー客に配ったお土産?じゃないよね?)がいきなり「高瘡建(字幕きっちり見ていなかったので字面あまり覚えていない)」と聞こえてきて「え?高倉健じゃん!」と、ここでも私は大笑い。

先ほど『九龍城寨之圍城』の魚蛋妹起用の話をしたけれど、本作では『九龍城寨之圍城』班底(=出演者)を起用しパロディしまっくっている。

ここからちょっとネタバレするよー。知りたくない人はこの段落飛ばして下にリンク貼ってるトレイラーだけ観てねー。

1. トレイラーにあるおばあちゃんがボディに一発決められた瞬間に入れ歯が飛び出す・・・それを空中で指で挟んでキャッチ!龍捲風やん!カメラ・アングルもそのまんまやん!
2. トレイラーで Gigi と古天樂の会話のシーン。「老公,過嚟同我對戲呀=脚本読みの相手してよ」「九龍剩女之臨時圍揪龍捲風?」「我係龍捲風=私が龍捲風」「我要做信一!=俺、信一やる!」で皆大爆笑。「九龍剩女之臨時圍揪龍捲風?」もネタ詰めまくりの字面。「九龍剩女 gau2 lung4 sing6 neui5」は言わずと知れた「九龍城寨 gau2 lung4 sing4 jaai6」の似た音でのパロディだが、それに加えて「剩女」という近頃よく聞くようになった「売れ残った女」という意味の単語を入れて笑い処を作ってある。もとが「中女社=中年女のコミュニティ」というコンセプトだからね。そして、「圍揪=囲んでボコボコにする」なので、この脚本のタイトルを無理やり訳すと「行かず後家が龍捲風を一時囲んでボコボコにする」かな。

今回の謝票にも来てくれた喬靖夫。『九龍城寨之圍城』ではセリフもほとんど(全然?)無いスキンヘッドの武術の達人で超怖い人だったけれど、本作ではお茶目な不動産屋。芝居の幅が広すぎて最初は凄く違和感あった。というか、家を売るだの売らないだのとなった時にいきなり開山刀とか出してきちゃったりするんじゃ?とか変にドキドキしちゃったが、ただのお茶目な不動産屋で終わった。強面だけど全然怖くない。

そして特筆すべきは『惡戰 Once Upon A Time In Shanghai』(2014) からの推しの Philip Ng 伍允龍!『九龍城寨之圍城』でいよいよブレイクしてくれて嬉しいようなちょっと悔しいような。いやでも、ホント、彼は大きくなると信じていたので嬉しいよ。その Philip がメッチャおもろい役で出てくる。先に声だけ聞こえて、本人が登場した途端「ぎゃー!」「ギャハハ!」の声が上がった。こんな芝居もできるのか Philip!しかも、あざとくない!取ってつけた感が無い!(それはそれでいいのか、むむむ?)

German の話をする前に少しだけ脱線しておく。鍾磊(古天樂)の武替(スタント・ダブル)を数人使っているのが見て取れた。が、全員古生よりだいぶデカい。デカすぎや。太肥や。足のアップのダブルは足ツルツルすぎや。古生はもっと毛深い。あの明るさで使うなら脛毛もっと付けたって。

さて、ここからは『九龍城寨之圍城』で大ブレイクして突如アイドルになってしまった German について。

今上映中のド兄さん最新作『誤判 The Prosecutors』のオープニング・シーンに出演しているのですよ。『誤判』が晴れて日本で公開されたら、German ファンはオープニング・シーンから気を抜かぬようにね。

実は私、それまで German を知らなかった。オープニング・シーンの内容が決まって、さて誰をキャスティングするかとなった時に最初に German の名前が出た。けれどド兄さんは「まだまだ売れていない新人に出演のチャンスを与えたい。」ということで一旦 German は候補から外れた。

が、結局、スケジュールやアクションが出来るかどうかの観点から鑑みて、やはり German しかいないとなり、急遽キャスティングした。

そして撮影当日。現場に現れた German に一目惚れした私。なんだ、この超級靚仔は!!!私の好みど真ん中ストレートぉおお!!!撮影日までに見せてもらっていた German のキャスティング参考フッテージ、こんなにかっこよくなかったぞおおお?

現場に入った途端、武術指導のタカさんから動作の指定やらなにやらが飛ぶので、私は動作組の通訳ですと挨拶する間もなくいきなり指令を出す形になってしまい、まだブレイクしていないとはいえ業界のキャリアもあるし武術の基礎もある German としては、どこの誰やねんこれ?な感じではあった。そらそうだよね。私としても挨拶すらできなくて申し訳なかったのよ。

なので現場で German に会ったのは一日か二日程度だった。

そうこうしているうちに Germen は『九龍城寨之圍城』で大ブレイクしてしまい、謝票もこんな大きな劇場でしかやらないステイタスに上がってしまった。あーあ、もう少し現場での接触が欲しかったなぁと思うなど。

暫し可愛い German の写真をお楽しみください。

そしてこの謝票の前日。Twitter で衝撃の事実を知ってしまった。『怒火 Raging Fire』での傲チームの一人が German だったと!ひええええ!

実は私、『怒火 Raging Fire』でも動作組翻譯として現場に入っていたのだけれど、German を発見していなかったという節穴。傲チームは谷垣さんと直接コミュニケーションを取れるので私は引っ付いておく必要が無く、ほとんど接触しなかったのよね。しかもその時の German はほぼ丸坊主。ちょっとイケメンかなぁ・・・ぐらいにしか思っていなかった私の目は節穴だな。

「あれが German だったと今更知ったよ私」という tweet に港產片迷朋友の皆さんも「え、嘘でしょ、Sophieさん・・・」だったらしい。反応が無かったのはそういうことだったのね。そらそうだよね。一緒に現場にいるのに気付いてなかったってどういうことよね私。正直な所、あの現場ではその時いろいろな出演作が続いていた胡子彤に「あ、お久しぶり!」とかやって阿彤に気が取られていたのよ。

ということで、映後分享が終わって皆が German に写真だのサインだのを貰うために突進していく中にガッツリ入って私も写真を一緒に撮ってもらった。その時に「認唔認得我?誤判動作組翻譯呀!」って言ってみたら、一瞬顔見て考えて「啊!認得認得!」って一応言ってくれたけど、絶対覚えてないだろ(笑)。

パンフレット開いて四仔のページにサイン貰えば良かったのだけれど、皆さん突進してて大混乱で、ページ開いてもたもたしていると時間切れになりそうだったので表紙にサインしてもらった。金色のペンを持って行ったんだけど、久々に使うから乾いてしまっていて、一度サインしたものの「このペン、色が出ないよ。誰かほかにペン持ってる人いる?」ってそこらへんの人から銀色のペンを自分で借りてくれてサインしてくれた。優しい German。

また現場で一緒にお仕事できる日がくることを祈るばかり。

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