電影鑑賞記『送院途中 Vital Sign』
実はこの作品は観ていない。ちょうど私が香港に戻る直前の香港國際電影節で上映されたのだけれど、私が本格的に戻ってきてからは劇場での上映はしていない。なのにこの作品の導演の劇組に参加することになろうとは想像だにしていなかった。
作品としては全体的に薄い。薄べったいというかちょっとぼんやりというか。題材としてはとても良いのだけれど、全体を通しての一番の柱をハッキリ立てきれていなかった感はある。第一の柱を一番太くして、第二の柱をそれより少し細くして、その他はもっと薄めてやると、もっとハッキリした内容になったね、とプロデューサー氏もアドバイスしていた。
私個人としては、子供本人の意思よりも親のよかれと思う勝手な気持ちからカナダへ無理やり移住する(させる)というエピソードが自分と重なってちょっと辛かったかな。馬sir は娘に「私のことが嫌いなの」って泣かれた。ウチの子は泣きはしなかったけれど、辛かっただろうなと思い返して罪悪感にさいなまれてしまった。
この写真は上映前挨拶。
そして上映後のQ&A。
Louis Koo 古天樂は生活臭がしなさすぎて、私個人としては Family Story 的な作品だとピンとこない。敢えて言うなら、家族団欒的な作品よりこういった單親家庭の方がまだ受け入れやすいかな。
盤燦良が良い味出してて良かったのだけれど、最初見た目がちょっと違うので、これまた「誰だっけ?盤燦良?こんな真ん丸だったか?」状態で観ていた。観終わって確認したら盤燦良だったので笑っちゃった。丸くなったね。
Angela Yuen 袁澧林は最近の作品とはちょっと雰囲気が違って、あれ、これ誰だったっけ?と暫し考えてしまった。口の悪い護士を自然に演じていて良かった。ただ、あまりに簡単に Neo とくっついてしまうので、もう少し何か捻りが欲しかったところ。
小巴で二人が良い感じだったシーン。脚本ではキスする予定はなかったのだけれど、脚本を呼んだ二人が「やっぱここは自然にキスするでしょう、導演、やらせてよ」となったので Vincci は「まあそうね、じゃあやってみて」とOKを出したと。ところがずっと小巴を走らせてカメラを回し続けているのに一向にキスしない、するのかしないのか?とやきもきするだけして、結局キスしなかった、というオチだったそうな。
導演の次の作品の話で「ボクも出してくれるんだよね?」ときっちり突っ込む Neo Yau 游學修。
今回は流石に「大阪アジアン映画祭だよね」と私のことを覚えていた Neo。実はプロデューサー氏が「彼はいいねぇ。あの顔や背格好は日本で売ったら受けるよ。日本人の好きな系統だよ。」と絶賛していたので、今度会ったら本人に言って喜ばせてみようと思う。
脚本もこの Vincci Cheuk 卓韻芝の手による。どうしてこんな物語を書こうと思ったのかというきっかけが非常に重い。この前夜にホテルで私に語ってくれた。母親が重病で入院していた。内臓機能が次々にダメになっていって、安楽死をさせた方が良いのではないかとなった時、誰も何も言わない。じゃあ私が、と言って決めた。後に、あの時の私の決定が結局母を殺した。私が母を殺したんだ、という観念が沸いてきて自分の心を蝕んだ。そして自分の命を絶とうとした。命が助かった時に救命士が「あなたが生きててくれてよかった」と言ってくれた。その時に、この人の仕事はどういうものなんだろうと興味が沸き、この物語を書くきっかけになった、と。このQ&Aでも自分が救急車で運ばれた時に救命士の仕事に興味が沸いたとサラッと言ってのけていたけれど、背景には家族の命を考える重いストーリーがあったというわけ。
今回の劇場にも置いてあったこのポスター。実は Vincci 本人は気に入っていないそう。このカラーが気に入らないと。確かに、彼女のテイストならこの色は選ばないなと思った。
エビスにて鑑賞。★★★ Vincci は次の作品でもっともっと成長するよと断言しておく。