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散步香港143 < 長洲 / 久別長洲 重逢記憶 - 長洲電影之旅 >

「久別長洲 重逢記憶 - 長洲電影之旅」という電影ロケ地巡りツアーに参加してきた。「團長:《電影現場之旅》作者 奇夫」とある。この奇夫氏は香港電影ロケ地巡りの始祖だそうな。

実はこのツアー、Facebook で見かけたのだけれど『久別重逢 The Last Song For You』のロケ地巡りだというので、まだ観ていないしと申し込んでいなかった。

前記事 電影鑑賞記『點對點 Dot 2 Dot』(2014) で Amos Wong 導演にこのツアーにおいでよと言われたのだけれど、『久別重逢』をまだ観ていないし、朝早くから長洲行くの大変だからやめとく、と返事をしたのだった。そしてやはりあっという間に定員に。

が、開催前夜になって港產片迷にはおなじみの電影朝聖 Gary から「実は僕、こんなツアーを明日挙行するんだけどご招待したい。」って言われてしまった。奇夫は電影朝聖の始祖で Gary よりもずっと前から電影朝聖を始めた人で、知識量やリサーチ力が凄いから Gary もお手本にしているという。移住してしまって今は香港に住んでいないから、次にいつ戻ってきて、いつこんなチャンスが訪れるかもわからない、滅多と無いチャンスだから是非来て欲しいって仲良くしている Gary に言われちゃったら断れないよ。しかもよく見たら集合時間は朝一番でもないし、船の所要時間も1時間程度なので、ウチから川龍村へ飲茶しに行くより近いじゃないかと考え直し参加することにした。

めちゃくちゃ久しぶりの長洲はやっぱり良いね。

さてさてこの方が今回の團長・奇夫である。妻がここの出身なので長洲はよく知っているし、ツアーで回っている間に街坊から声が掛るかもしれないよと。

そして Amos に「おはよ」と声を掛けたら「あれっ?来たのかよ?」と。そりゃそう言うよね。数日前に「朝早いからやだー」とか言ってた人がいるんだから。「Gary に呼ばれたら来ないわけにいかないっしょ?」と。

そしていきなり Amos が「あ、澄碧村往きの船がいる!」と指差し、奇夫から「じゃあ、まずは Amos 團長の話から始めよう!」と。

澄碧村とは、『緣路山旮旯 Far Far Away』で咩姐こと Melanie(余香凝)が住む村。ツアーの幕開けはいきなりのボーナス・トラック『緣路山旮旯 Far Far Away』の船登場からとなってしまった。

小ぶりで可愛い船。

ちょうどもう船が出る時間だということで全員で走って桟橋へ入り、船腹からの写真をバチバチ撮る。澄碧村という文字が消えかかっている。

「澄碧村は、ほらあそこに2列に並んだ茶色の屋根の樓宇が見えるだろ、あそこなんだよ。この船で20分。実はとても近いんだ。」との解説。

碼頭を出て、いよいよ村へ入っていく。

このタイル壁が可愛すぎる。

Gary でさえここは通ったことがないという住宅と住宅の間の細道を進む。さすが地元民の先導。

ここが第1ポイント。

ここを『久別重逢』の主役が走るらしい。ちょっと韓国の住宅街に似てるよねと。確かにあるある。韓国映画でこういう坂道でしかも二叉路とか三叉路になってる風景をよく観る。

そして坂道を上っていく。

ここが次のポイント。

この広場になった場所からのショットがあるらしい。私はまだ観ていないのでよくわからん。

この緑色の手摺りも撮影ポイント。

Amos がこの広場を見て「なぜここを撮影場所に選んだかわかる。ここなら撮影現場から幕後の設備から何から何まで全部置ける広さがあるからだよ。」と。さすがの導演の視点。

そしてこの天福亭も劇中に出てくるポイントだそうな。

この華園という可愛い建物の名前が後に別のポイントでの話の際に出て来たのだったが、なんせ『久別重逢』をまだ観ていないので印象が無さすぎて話の内容を覚えていない。

更に上を目指す。

石壁やシースルーの壁が可愛い。

頂上。

ここもロケ地。

頂上に到着すれば次は下っていくわけで。こういうシースルーの露台の囲みは可愛いよね。

タイルが可愛い。

良い感じに錆びた鉄門の可愛さよ。

ちょっと廟的な建物があったのだけれど、そこは撮影ポイントではなかったので降りず。

この辺りは学校や教会が多い。実はその昔、長洲島の南側は西洋人(主にイギリス人)のみが住める地域として区割りされていたせいで、その区域内だった場所には学校や教会が多く残っているのだそう。

西洋人地域の境界を示す界石が残っている。

随分朽ちていて見難いけれど文字が刻まれていることがわかる。

このグラウンドは許鞍華《撞到正》(1980) で使われた場所だそうな。

12月にしてはまぁまぁ暖かいとはいえ、海に入って遊んでいる子供たち。海水あったかいのかなぁ。

そしてここは『麥兜』のロケ地ならぬインスピレーションの地だそうな。

上のキャプチャと下の山の形が同じでしょ?

砂浜に映る樹の影が美しい。

そして道なりにこれを見つけて皆で大歓声。「珊珊!」そう、英屬香港最初で最後のオリンピック金メダルをもたらした李麗珊のボードがここに。

そしてここは李麗珊のコーチであり叔父である根叔のお店。なんと根叔がテラスにいらして、もう皆さん「根叔だ!根叔~!」とアイドル並みに叫ぶやら手を振るやら。根叔もニコニコして手を振り返してくれた。もう30年近く前のことなのに、それでも皆、李麗珊が金メダルを獲ったことや根叔の功績を覚えている。香港の大切な集體回憶。

1970年に発見された香港原居民の「石刻」。この部分を見えていなかった時に解説してくれた Amos が「Sek Hak」と言うのを聞いたのだけれど、何のことを言っているのかよくわからなかった。近付いてみてこれが見えて「石刻」のことか!とわかりまた一つ新しい単語を覚えた。

そしていよいよ皆さんお待ちかねのカフェへ。

こちらのカフェでございますよ。

知った顔を見つけたワンコたちが嬉々として勝手に入っていくこのカフェは

Amos の『全個世界都有電話 Everyphone Everywhere』で鍾哲の妻 Ivy が働くカフェ。このシーン大好き。というか Ivy の同僚の芝居が好き過ぎる。Ivy の話を聞いている時は「昔の彼女だからって、バレたら困る人なら妻に連絡先探してくれなんて言わないから大丈夫よ」って普通のトーンなのに、自分の夫が連絡先を知っているからと電話を掛けた時の、夫に対する声のトーンの変わりようが、もう凄すぎて。「喂!BB呀~!點解咁耐先聽電話啫」だったかと思うのだけれど「喂!BB~呀!」のインパクトたるや!いやもうあまりのトーンの変わりように死ぬほど笑った。本当に凄いからみんな観て!

この植物、なんという名前か知らないけれど、めちゃくちゃお高い物なので絶対に触らないでね、と Amos からも溫馨提示が出た。

棍棒を引っ張るタイプの門、とても魅力的。

このカフェは陳皮咖啡が有名だそうで、それならばとツアー参加の皆さんが一斉に並んで買い始める。いみじくも小休止となる。

私は陳皮があまり得意ではないので、隣の店で長洲大魚蛋を。

そして次のポイントはやはり Amos 作品関連の場所。

皆さんここへ出た瞬間に口々に「Happy Birthday~~!」と叫ぶ。よくわかっていらっしゃる。そう、ここは『緣路山旮旯 Far Far Away』で咩姐の住む澄碧村に阿厚が借りた部屋の屋頂。

ここの階段も

門扉も可愛い。唐樓萬歲。

そして長洲戲院へ。

今は閉鎖中なので入れないが

この『無映之地』(2020) という作品では、荒れすさんだ長洲戲院の中がトップ・ショットで観られるらしい。

そしてまた海沿いへ抜けていくとここにもポイントが。

そしてここは

蘇昇華の隠れ家。

この右側の鉄門を入ってグルグル上がっていくと隠れ家がある設定。当然外から眺めるだけ。

そしてその目の前には魅惑的な小碼頭が。

実は先ほどの隠れ家の裏手に冰廠があって、これを使って氷を船に乗せて運搬していたそうな。

碼頭外側から観た時に看板のようになっているのに碼頭の名前も何も書いていないのでどうなっているのか気になって碼頭側に回り込んでみると

値段やら連絡先やら営業時間が書いてある。なるほど、買い付けに来た人からよく見えるようにしてあるのね。面白い。

そしてなぜか突然「おきなわ」の文字。

そして突然、この看板横の冰廠の職員が現れて、「何かのツアー?中を見たいなら案内するよ。」と驚きのオファーが。「普段から慈善団体や学校の見学を受け入れている。今日は休みで暇だから冰廠を案内してあげる。」となんとも嬉しいサプライズ。今回はたまたまラッキーだったけれど、普段は参観予約が必要らしいので、行ってみたい方は予約をしてね。

昔はここで大きな塊の氷を作り、柱状に切り出して出荷していたそうだ。壁の黒い部分まで水を入れて氷にしたそうなので25mプールの水が全部氷ったぐらいの規模。こんなに暑い香港で冷凍庫どころか冷蔵庫さえ無かった昔にどうやって氷を作っていたのか不思議。そういえば『唐山大兄 The Big Boss ドラゴン危機一発』もタイのパクチョンという香港より更に暑い場所での製氷工場が舞台だった。「昔はここで大冰を作ってたんだよ。塩を入れて。」と言っていたので、本当は「こんなに暑い場所で塩だけでどうやって氷を作れるのですか」と質問してみたいところだったのだけれど、かなり話好きのお兄ちゃんで話が長くなりそうだったので質問はしなかった。

冰廠の屋頂。

蘇昇華の隠れ家として撮影したのは前方の赤レンガの建物。伊健たちはあそこで撮影してたよ、と案内してくれたスタッフの言。

今の製氷工場はこんな感じ。

今は使っていないが歴史の遺物ではある機械。

そして昔に操業していた時の台所。

冰廠の見学を終えたら、なんと、先ほど入るのを諦めた蘇昇華の隠れ家へ案内してくれた。上がる時に写真を撮るのをすっかり忘れていたのだけれど、赤い鉄柵をぐるぐる回ってこの屋頂へ。この鉄の欄干が劇中で観られると。

先ほどの碼頭を見下ろす。

退出時に道へ出る部分だけ写真を撮ったので載せておく。

ツアー終了で、皆それぞれ團長二人との3ショットを撮る。しかしなんで私はこんなドヤ顔の写真なのだ?

ハッキリ言って、映画を観てから参加するべきだったと悔しい思いをした。はよ観に行こう。

【追記】
Gary がこの記事を奇夫に見せてくれた。奇夫から「とても詳しく書いてある。それぞれのポイントで見解を述べているし、道なりの美しい景色も載せてあり、パーフェクトな記録だ。」と過大な評価を頂いた。ちょっと汗出るわ。

多謝 Gary!多謝奇夫!

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