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電影鑑賞記『狗陣 BLACK DOG』(2024)彭于晏映後線上分享會
Eddie Peng 彭于晏はもともと好きな俳優で、ポスターや宣伝用スティルを見て気になっていた作品。オンラインとはいえ Eddie による映後分享會(つまりQ&A)があるというので観てみた。
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いつも通り、何の前情報も入れずに鑑賞。Eddie と犬に何が起こるのだ?Eddie の役名が二郎というのは日本人には覚えやすくてとっつきやすすぎるぞ。しかし二郎の本名は郎永暉という設定なのにニックネームがなぜ二郎なのかが謎すぎていまだに引っかかる。
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オープニングから心がっちり鷲掴みにされた。フィルムで撮ったような色使い。私の大好きな Andrey Tarkovskiy 安德烈·艾森耶維奇·塔可夫斯基(アンドレイ・タルコフスキ) や 『撞死了一隻羊』のPema Tseden 萬瑪才旦(ペマ・ツェテン)のような大ワイドの風景をロングで流すオープニング。これは現実世界なのだろうかと思うような無音の荒野をゆっくりパンしながら流しているところに、突然物凄い数の犬が飛び込んでくる。心臓悪い人にはよろしくないオープニング。
皆まで言わずとも次にどうなるかわかっている部分は絵にする前にカットしていく手法。なるほど。この懇切丁寧すぎる説明をカットする膽量のある監督なのだね。二郎がサーカスのバイク乗りだったこと、お互いに惹かれ合っている葡萄と酒をがぶ飲みした後に何かあったのか、お父さんの呼吸器は結局外したのか、などなどはわざと絵を出さない。
ポスターに名前があって気になっていた Jia Zhangke 賈樟柯(ジャ・ジャンク)がエンドロールで耀叔だと知って驚いた。実は私はこの監督の作品をまだ一本も観たことがない。監督としての評価が高いのでずっと観てみたいと思いつつ観られていない。演員としての彼を先に観てしまったので、今後監督作品を観た時にどう感じるのかが自分でも楽しみ。
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Eddie を招聘しようとしたけれどスケジュールがどうしても合わずやむなくオンラインでの映後分享會にしたのだと高先のスタッフに聞いた。
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自宅からの参加で、後ろで Eddie 媽媽がご飯作っている音が聞こえていた、とそのスタッフが言っていたが、残念ながら私には聞こえなかった。
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どこからどう見ても Eddie がカッコイイのでとめどなくアップしておく。
会場の様子もこうやって映しこんでくれている。なんか私、意図せずしてエエとこに席取ってたのね。
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映後分享會は当然國語だったので全部聴き取れたわけではないのが悔しい。というか、単語としての音は聴き取れるのだけれど、そこにどの字が入るのかを探し当てられないのよ。広東語なら音を聞けば知らない単語でもどの字が当てはまるのか瞬時にわかるのだけれど、國語はまだその域に行けていない。
但し、撮影現場に関する話になるとどの字を当てるかすぐにわかって理解できるんだわこれが。
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聴き取れて覚えている限りの内容を記しておく。
全て本物の犬。全部で300-400匹ほど。40人のトレーナーで全ての犬をコントロールして撮影した。夥しい数の犬がいる絵にトレーナーが映り込んではいけないので、トレーナーは綠衣人だったり隠れたりした。綠衣人とは、後のCG処理で消せるように緑色のピッタリしたジャンプスーツを着た人のこと。緑色のもじもじ君と言えばわかりやすいかな?
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今回の役柄はセリフがほぼ無い設定だけれど、セリフが沢山ある役と今回のように全然喋らない役のどちらが好きかの問いに、そりゃもちろんセリフがある方が面白いよ、とのこと。けれど今回はセリフが無いだけにさまざまな挑戦ができて面白い経験だったとのこと。
この二郎という役、最初は本当に一言もセリフの無い設定だった。けれど観返してみると、ここは少しぐらいセリフ入れないと観客には何が何だかわからないと思うよ、ということになり少しだけセリフを足して撮りなおしたシーンがいくつかある、とのこと。
二郎がいつまでたっても何も話さないので、もしかして二郎は聾啞者という設定なのかと私は途中まで考えていた。いよいよ、一言二言のセリフが出た時に、ああ、二郎は極度に喋りたくない人なんだと知った。そして、この Eddie の解説を聴いて、ああ、確かにあのシーンはセリフ無いと何が起きてどこにどう繋がるのかわからんわ、と思った。
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そして今回の優先場のおまけ。4種類の透明?なポスト・カード。
もともと薄く色がついているのだけれど、それを透かしで観るのと、バックに色のある場所や物を置くのとではまた色が変わってきて素敵。透かしと白の壁に引っ付けたのとで比較してみたけれど、白なので写真だとちょっとわかり難いかな。実際に見ると凄く違うのよ。どちらもステキ。ちょっと高めのチケット代に見合うギフトだね。
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Eddie がバイクに乗るシーンは、私的にはスタビライザー使いすぎだと感じた。荒野を走るのだから画面が揺れて当たり前なのだけれど、Eddie が全く揺れないことに違和感があった。
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このシーンの Eddie の表情がにやついた不思議だった。何がそんなに楽しくてにやつくのか?謎だ。
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高先のスタッフはこのポスト・カードを海をバックに写真撮っていて、物凄く素敵だった。多分FBにアップするんじゃないかな。
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作品としてはとても面白かった。スタビライザー使いすぎ以外は高得点をあげたい。
高先電影院にて。★★★★★