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電影鑑賞記『虎毒不 Montages of a Modern Motherhood』(2024)
東京国際映画祭2024で『母性のモンタージュ』という邦題でジャパン・プレミア公開された作品。
監督の Oliver Chan 陳小娟は『淪落人 Still Human』でその実力を知られている。この作品も期待して鑑賞。
『淪落人』と同じく、市民の日常生活の状況や起伏を丁寧に描いている。自身が母親となったことで感じたあれこれを伝えたかったとのこと。
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母親になるまでわからなかったこと、街で接したり話を聞く限りでは正直なところ反感を持ってしまっていたようなことが、いざ自分が母親になってみると「そういうことだったのか」と理解でき、当時の自分の気持ちを恥じたという。
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母親という役柄が増えたとはいえ、女としての自分、妻としての自分、好きな仕事を続けることを諦めたくない一人の女性の気持ちと境遇を丁寧に描いている。
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私も本編で主人公が体験するのと同じような姑との諍いや手伝ってくれない夫への腹立ちなどを経験しているだけに、描き方が少し物足りない気もした。それは私の性格が主人公より更にキツイ気性だからなのかもしれない。
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それにしてもまだ子供のいない Hedwig Tam 談善言の演技が素晴らしい。どうやってここまで初めて母親になった女性の気持ちや状況を表現できたのか聞いてみたところ、やはり周りの女性にいろいろと質問をして勉強したとのこと。この作品で更に幅を広げたね。
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そして小野こと廬鎮業も良かった。まずは脚本での設定が良い。本当に心から妻を愛し、子供のことも大切に思っている。のではあるが時に腹立ちまぎれに「子宮も母乳も持ってるのは君だろ!俺にはどうしようもない!」というような本音を爆発させてしまう。とはいえ、なるべく妻の助けになろうとはする。この人物設定が、本作全体が罪深くなりすぎないよう救っている。廬鎮業が、ちゃらけでもなければガンガン詰めるわけでもないが、不安や不満も持ちつつそれでもなお妻を支えようとしている夫をさらっと演じていてとても良かった。
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救いといえば、淑貞の媽媽や晴晴を昼間預かってくれる女性の存在が大きい。日本では特にワンオペで子育てする女性が非常に多い。こういった血の繋がりに関係なく手を差し伸べてくれる人がもっと周りにいればいいのに、と思わずにはいられない。私もシングル・マザーとして子育てをしたが、自分の母親の助けが本当に本当に大きかったので。
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謝票での質問コーナーではほとんど手が挙がらなかった。普段あまり質問しない私だが、これではちょっと寂し過ぎると思って手を挙げてみた。一番後ろの列の一番奥にいたので、マイクを持ってくるのが大変ということで「ちょっと大きな声で言って!」と司会の Felix に言われ、声を張り上げた。『虎毒不』というタイトルはどういう意味なのかと。Felix が「おお、やっとこの質問が出た!」と喜んでくれたのが笑えた。
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香港ではモーレツな教育ママを「虎母」という。後半、ストレスが溜まりに溜まって、晴晴に対して「毒=厳しい態度」になってしまう淑貞であるが、結局のところ「毒」に「なりきれなかった=不」、ということでこのタイトルにしたというのが監督の回答、だと思った。私は監督の話したことを的確に理解できていたのかと少々不安に思っていたところ、「片名取自諺語「虎毒不食子」,意指再怎麼狠毒的老虎,都不會傷害自己的孩子,蘊含母愛乃普天下皆然的預設。」と釀電影というサイトにあったので私の聴き取りと理解力は大丈夫だったようだ。
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ということで高先電影院のセールス・ポイントの一つ。大ポスター前での記念撮影。陳小娟導演とは東京国際映画祭での関係者パーティーで延々お喋りしていたし、阿談ともいろいろ話したので、二人とも私のことを覚えてくれていて「久しぶり~」と喜んでくれた。
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鑑賞に来ていた Rachel Leung 梁雍婷とは『破・地獄』の謝票の時に話せなかったので、今回、『山旮旯』も『白日之下』も『破・地獄』もあれもこれも凄く良かった、演技の幅の広さが素晴らしい!とやっと伝えられた。
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そして私の隣の隣の席に『盗月者』の袁劍偉導演が座ってきて「あら!久しぶり!」となったのでこちらも一緒に写真を撮っていただいた。
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作品としては『淪落人』より更に小ぶりで、これといった大きな見せ所は無いけれど、新手媽媽にもまだ媽媽になっていない女性にも観ておいてもらって、これはよくあることなのだと心の準備をしておいてもらいたい。
高先電影院にて鑑賞。★★★