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電影鑑賞記『教宗選戰 Conclave』(2024)

おひとりさま聖誕節2本目は『教宗選戰 Conclave』。タイトルそのまま教宗(教皇)選挙戦をベースにしたサスペンス・ドラマ。

斜め上に出てる光は単に劇場のライトの映り込みなのでポスターにはありません、念のため。

時間があったことと、なんとなく面白そうだったので観た。当然ストーリーの予習も無し。タイトルで教皇選挙戦だなとだけ。

出演者はハッキリ言って Isabella Rossellini 以外誰も知らんかった。John Lithgow の顔は見たことあるような無いような・・・なので調べたところ、もしかしたら『The World According to Garp(邦題:ガープの世界)』(1982) か『Footloose』(1984) で見たのかもしれないなというところ。

主要人物を演じている俳優を誰一人知らない(Isabella Rossellini はシスターなので選挙戦の候補者ではないし、John Lithgow は暫く経ってから登場するのでカウントしない)上に皆ご老人で顔が皺だらけだわ、髪が減って額が広くなっていて髪型での判別は不可能なうえにその頭にちょこんと載せた帽子も同じだわ、しかも服装も同じだわで、最初はもう誰が誰か顔見ても判断つかないしわけわからない状態で話が進んでいく(のは私だけか)。更にセリフが冒頭はイタリア語ばかり。ヤバい、やっぱり英語字幕追うしかないのかと思いつつ、英語セリフがメインになっても知らぬ単語が多くてついていけないというアウェイ。

しかし、さすがサスペンス・ドラマだけある。原典小説がしっかりしているせいなのだろうが、それぞれの人物の設定がはっきりしているので、話が進むにつれてそれぞれの人物が特定でき始め、セリフが聴き取れ始め、様々な事件が起こることでどんどん引き込まれる。面白い作品である。

いや本当に面白いのよ。やはり教皇の選出も根回しして選挙するのか、ふーん。しかし2/3以上の得票者が出るまで何度でもやるのか、ふーん。それは良いやり方だな。フェアではない選挙手法を使った斎藤元彦を再選させた先だっての選挙に未だ怒っている兵庫県民なので、単独で2/3の票を得るまで延々と投票を続けるのは非常に良いし羨ましく思った。なぜなら斎藤元彦の得票数は半数にさえ届いていなかったから。当然、実際問題として県知事選挙を2/3以上の得票者が出るまで延々続けることは不可能であることはわかっているけれど、本作で描かれるシステムのように公正な選挙を心から今も望んでいるから。投票用紙は毎回複数の人の手と目によって読み上げの確認がなされ、全員が読み上げた票の得票をチェックしていく。素晴らしい。

そして教皇が選出されなかった回の投票用紙はその都度すぐさま焼却炉に放り込んで燃やす。なるほど、フェアだ。そしていちいち煙を立てる粉を放り込むのはなぜだろう。このように選挙の公正なシステムをきっちり描くことで投票の緊張感を見せ、それが何度も何度も続くことでの疲労とストレスをまた描く。

投票と投票の合間にスキャンダルや問題が表出し一人ずつ候補者が減っていく。その候補者に投票していた者たちに次は誰それに入れろとまた根回しをする。が、その全員が指示通りに票を移動するのではなく、少しずついびつな投票結果が出る。組織票かと思いきや一枚岩ではない。それぞれがそれなりに自分の意見を持ち、それに沿って行動しているのだな、日本の政治ではありえない個人主義がここにはあるのだなと思ってみたり。

この撮影は Cinecitta に西斯汀小堂(システィーナ礼拝堂)のセットを建てて撮影したそうだ。とても冷たい雰囲気の所だと思っていたのだけれど、監獄のような冷たい雰囲気を出す為に模倣に少々手を入れたそうだ。

それにしても衣装が実に美しい。赤と白の服に白い傘。白い壁の中庭を流れていくトップ・ショットが美しい。礼拝堂の冷たい雰囲気の中に立つからこそ余計に美しいのかもしれない。

Esquire HKより

黒ベースの衣装もあるけれど、やはりこの赤をベースにした何種類かの衣装が目を奪う。片やシスターたちの衣装は地味。多分実社会を反映しているのだろうと思う。

そして最後の大どんでん返しが意外過ぎて面白い。そんなことありかー!と心の中で叫んだ。ネタバレしたくないのでこれ以上書かないことにする。

映画の内容だけでなくコンクラーヴェについても全く前知識無しで観に行ってしまったので、今後観る機会のある方はせめてコンクラーヴェがどういうものなのかある程度理解してから行かれることをお勧めする。

高先電影院にて鑑賞。期待せずに観に行っただけに大収穫。★★★★

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