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香港電影鑑賞記:武影江湖『猛龍過江 The Way of The Dragon』(1972) Teach-in 講者:張同祖、張偉雄

Fists and Swords Kaleidoscope of Hong Kong Martial Arts Films 武影江湖と銘打ったシリーズ上映に『猛龍過江』があったので、李小龍會メンバーの皆さんと観に行ってきた。上映作品は1本だけなのに表紙中央にドカンと載っているのはやはりレジェンドだからだよね。

モデレーターは脚本家の張偉雄、ゲストは導演、編劇、監製、演員の張同祖。実は本作では場記と副導を担当したらしいのだけれど、クレジットは場記のみ。

この張偉雄という人物を全く知らなかったのだけれど、自分の思いを喋り過ぎでイラついた。私はこの作品の現場にいた祖哥の話を聞きたいんだよ!あんた喋り過ぎ!

場記だったのでローマでの撮影には同行していないそう。

これはもう宝物だと。龍哥の向かって左が祖哥。私には洪天明に見えた。

これは龍哥が敵ボスのオフィスに連れて行かれた陳清華を救い出しに行った際、飛び上がって頭上の電燈を蹴り割るシーンについて話した時。人の身長より更に高い所にある電燈を飛び上がって蹴るのだから、当然NGは何度も出たよとのこと。「こんなに高いんだから!」と高さを示してくれた。

祖哥の話の要点:
・龍哥は暇さえあれば体力を向上させる為に常に飛び跳ねていた
・龍哥は茶より常に絞ったオレンジジュースを(ビタミン摂取の為に)飲んでいた
・龍哥は現場でクルーたちとふざけたりするのが好きだった。ある時、ふざけて立ち回りをしていたら、Tシャツが破れてしまった。龍哥が弁償として$100くれた。Tシャツ自体は$10程度のものだったので儲かったなと思った。それより何より、龍哥に破られたTシャツ自体を宝物として置いてある。
・コロシアムのセットでの撮影は十数日だったと思う
・本作ではワイヤーは全く使っていない(蹴られて吹っ飛ぶのは武師が自分で吹っ飛んでいく)
・コマ落としは使っていない、全て実際のスピードのまま

若い観客からの質問で「龍哥と Colt(チャック・ノリス)が闘っている間、猫をどうやっておとなしく座らせておけたのか」というのがあった。映画はすべてそのままずっと継続していると思っている人がいることに驚いた。

別の若い観客からの質問で「この作品が2024年の今、初めて公開されたものだったらどうなっていたと思うか」というのがあったが「当時と今では撮影技術も変わっているし、当時はフィルムで今はデジタルという違いもあるし、テクノロジーが全く変わっている。そして、1970年に龍哥が功夫というものを初めて世界に紹介したから、その後の香港映画があり、今の世界があるわけで、その仮定は質問として成り立たない」と張偉雄に却下された。歴史の流れを無視した仮定は説を立てる根拠を持たないので、この対応は正しいと私は思う。

今回の鑑賞で私が新たに思ったこと。それは、李小龍導演はローマでロケハンした後、ローマ撮影の部分については Storyboard をきちんと作成していたに違いない、ということ。そうでなければ、時間の限られたゲリラ撮影でここまできちんと計算された絵は撮れないから。ストーリー上の挿入の尺然り、アングル然り。監督としての龍哥の凄さに改めて驚愕した。

香港電影資料館にて鑑賞。★★★★★

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