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燐光よ、天に輝く暁星となれ 1
前書き
このお話はFF14自機二次創作。この話から続く物語の完結編になります。時系列としてはパッチ5.5part2から始まりますので、そのあたりまだ未プレイの方は気をつけて読んでくださいませ。いつもの如く暴力は多いです。
「前方に敵兵。数4。仕掛ける」
イズミはリンクパールにそれだけ伝え、走りながら短刀を投擲。きらめく刃は過たず帝国兵の鎖骨付近に突き刺さった。イズミはアウラ・レンの白く太い尾を靡かせ、そのまま全速力で疾走。倒れゆく敵兵から飛び出している短刀の柄を握った。腕に伝わる相手の体重が異様に重い。傷口から噴き出す血は紫色。こちらを睨む眼球は四つ。変異者である。もう取り返しはつかない。イズミは短刀を捻り、首筋を切り裂いた。残り3。抜いた刃をそのまま次の標的に投げつける。だが刃は戦斧に弾かれカルテノー平原の闇に消えた。
「ゔぁぁぁぁ!」
濁った叫びと共に帝国兵の戦斧が振り下ろされる。しかし致死の一撃は身を翻したイズミの尾を掠めるだけに終わり、反撃の回し蹴りが帝国兵の顔面に叩き込まれた。残り2。血は赤い。とどめを刺すべきかイズミは逡巡する。だが決断する間もなく槍が突き込まれた。イズミは舌打ちして側転回避。腰の刀の一振りを抜き放ち、槍兵と斬り結ぶ。幾合かの打ち合いの末、間合いを詰めたイズミの刃が槍兵の胸を貫いた。槍兵はイズミの知らない国の言葉でなにごとか呟き、果てた。残り1。
槍兵の骸を無造作に押し除け、視線を上げる。残敵の呪術士は魔導ロッドを構えもせず、ふらふらと立ち竦んでいる。その背後、聳える高台の向こうに禍々しい光を放つ立体魔法陣が見えた。テロフォロイを名乗る軍勢が作り出した致命的な楔。通信ではそう聞いた。一刻も早く一帯を制圧して、主力の進路を確保しなければならない。だが、イズミの眼前で怯える敵兵は未変異にも見える。可能であれば敵兵を助けろ。これも通信の言葉だ。そんな余裕があるとすれば今だろうか。
「……おい、お前!」
イズミは敵兵に問うた。相手はびくりと体を震わせる。意思疎通が出来るのかもしれない。
「死にたくなかったら、どっかその辺に隠れ——」
投降勧告は遮られ、伝わる事なく終わった。巨大な岩塊が隕石の如く落着し、敵兵を押し潰したからだ。残り0。粉塵と衝撃波がイズミの身体を吹き飛ばす。イズミは手近な瓦礫を掴み、どうにか踏みとどまった。狩人は息を呑み、前を見た。
巨大な岩塊は赤熱し煙を上げていたが、いちど身震いするように全体を震わせた。それを合図に岩塊はガチャガチャと目まぐるしく姿を変え始める。やがて大地を踏み砕く足が生え、山脈をも吹き飛ばさんばかりの剛腕が生えた。そして捻れた顔面が胸部に生えた。紫色の禍々しい光を漏らしながら、人型となったそれは咆哮した。
カルテノー平原の大地が根こそぎ裏返るような、凄まじい圧力がイズミの身体に襲い掛かる。魂が削られるような暴圧に抗いながら、彼女は顕現した巨大な存在を見上げた。該当する存在はひとつしかない。イズミは角に取り付けたリンクパールに触れ、通信する。
「……こちらD1イズミ。異形の蛮神と遭遇。タイタンだ。交戦開始」
《こちらH1……って、はぁ?!いや交戦開始じゃねーよ!戻って来いアホ!》
「無理。そっちが来て」
イズミは罵声を聞き流しながら腰の刀をふたつ抜き、二刀の構えを取った。懐に忍ばせた魔法弾の残りを計算し、戦術を組み立てる。やるしかない。異形の蛮神の捻れた頭部を睨みながら一歩踏み出した。その一歩に応えるように、蛮神の瞳が妖しく輝いた。イズミの鱗をぞわりとした気配が撫でる。足元を見れば、異様なエーテル光が漏れ出していた。《大地の重み》だ。範囲外へ退避——範囲外?イズミは目を疑った。見える範囲全ての大地が輝いている。
「やっべ」
《ピィーッ?!不穏な事言うな!》
イズミの返事より早く、辺り一面の大地が崩壊した。転がされた帝国兵の死体、壊れかけの魔導アーマーや戦闘車両、そして白い鱗の狩人、それら全てを巻き込み、岩石と土砂が崩れ、渦潮の如く混ざり合った。岩石の流れが止まった時、動くものはそこにいなかった。ただ粉塵が立ち込めるだけであった。
異形の蛮神——ルナタイタンは直立不動のままあたりを睥睨する。数多のエーテル生物同様、蛮神も感覚は全てエーテルに頼っている。己のばら撒く地属性エーテルの中に別のエーテルがあればそれを潰す。行動原理はそれだけだ。故に、粉塵も瓦礫も関係なかった。そこにまだ獲物がいる事を見抜いていた。
ルナタイタンが巨大な脚を一歩踏み出し、大地を激しく震動させる。がらがらと崩れる瓦礫の中から、青く輝くエーテル球体が現れた。羽根状のエーテルが折り重なったその球体は粒子となって消失。無傷のアウラ・レンがそこにいた。エデンモーン様式の戦装束。イズミだ。彼女は光を失った腕輪を見やる。英雄が込めてくれた防壁も今夜はこれにて打ち止め。イズミはため息と共に、巨大な拳を振り上げた蛮神を見上げる。ランドスライドの構え。数秒後には今立っている地面が抉り取られる。事態はまるで好転していない。——イズミは更に視線を走らせ、蛮神の肩越しに高台を見た。きらめく光が見え、同時に蛮神の背中が爆ぜた。
「グォォォォッ?!」
ルナタイタンはたたらを踏み、腕を振り回す。だがその腕が一度空を切る間に、剣閃が三度はひらめいた。誰かが蛮神の背中に飛び込み、全身をあまねく斬り裂いているのだ。イズミは蛮神の体表を飛び回る存在に目を凝らす。——英雄、ではなかった。ダイヤ様式の甲冑に身を包んだ銀髪のミコッテ女性。この戦場でイズミと同じ部隊となった剣士サン・ゴッドスピード。手練れである。独断専行——もとい、強行偵察に向かったイズミのところまで追いついて来たのであろう。——であるならば。イズミはサンが飛び来たった方向を更に凝視した。夜の闇を割って魔法弾が流星群の如く飛来し、蛮神を爆撃する。
「ガァァァァッ!!!」
蛮神は怒りの叫びをあげ、新たな脅威に抗おうとした。しかし、上空30フルムに浮かぶ使役獣の背中から爆撃を続ける相手に、大地を揺るがす攻撃を得手とするルナタイタンでは余りにも相性が悪かった。そして雨のように降り来る爆撃の中にあっても、サンの動きにはいささかの鈍りもない。これだけの高度な連携が出来るのは、彼女のパートナーである召喚士リンダ・ヒュームにおいて他に無い。イズミは上空で冷たく微笑む黒髪のヴィエラ女性を幻視した。
イズミは高空に向けていた目線を大地に戻す。護り手と攻め手が来たのであれば、癒し手もいるはずだ。いた。崩れた断崖の中腹に、鶏の覆面を被った不審な術士。リンダの爆撃に慄きながらイズミの元へ向かって来ている。向こうもこちらに気付いたのか、リンクパール通信がイズミの角を揺らした。
《ピィーッ!この先釣りが!そこでジッとしとけよテメー!》
不審な術士——ウィンコの憤懣やる方ない通信をよそに、イズミは再び蛮神を見やる。サンとリンダは異形の蛮神を完全に圧倒しているが、しかし相手も膨大なエーテルで顕現した存在。討滅まで押し切るにはもう一手必要だ。なにより、このまま座して彼女らに任せていては、己の戦果という取り分が無くなる。イズミは立ち上がり、ウィンコに背を向けて駆け出した。
《話聴いてんのかボケがァーッ!》
「うるさい!まだやれる!」
イズミは瓦礫を飛び渡り、惨憺たる戦場を駆けた。そして打ち捨てられた魔導兵器を次々と改めていく。魔導コロッサス、巨大すぎる。魔導ヴァンガード、動かせない。魔導プレデター、惜しい。魔導リーパー、これだ。
イズミは溝にはまって擱座した騎乗型魔導アーマー《リーパー》のコクピットに滑り込み、認証キー部を刀の柄で叩き割った。剥き出しになった配線を無造作にちぎり、それらを直結させる。帝国の魔導兵器などだいたいこれで盗めるのだ。火花が散り、機体の主機が鈍い音を立てて起動した。イズミはあらゆるレバーやペダルを前に倒し、どうにか溝から機体を脱出させた。再び戦場を見やる。蛮神は飛び回るサンに釣られて、背後をイズミに向けていた。
「ここだ!」
イズミは「飛行形態」と書かれたレバーを引き下げ、アクセルペダルを思い切り踏み込んだ。《リーパー》はがくがくと身を沈め、反動をつけて跳躍。両脚が折り畳まれ、巡航形態に変形した。瞬間、足裏の青燐機関が火を噴き、《リーパー》は凄まじい速度で蛮神へ突っ込んでいく。破損状態で限界稼動を強いられた機体はあらゆる部位から雷気と炎を噴き出していた。
「ははははは!」
イズミは狂ったように笑いながら機体から飛び降りた。高速で地面と激突する彼女はこの後ひどい怪我を負うだろう。だがすぐ近くに癒し手がいるので問題は無い。そういう計算で生きているのが彼女だ。そして無人の魔導リーパーは異形の蛮神の左膝裏に激突し、大爆発を起こした。
「ゴアァァァァァァッ!?」
左脚を完全に失った蛮神はバランスを失いよろめく。倒れまいと全身のエーテルを再構成し、失った脚が瞬時に再構成される。だが、それによっていよいよ心核を護るエーテルは枯渇してしまった。それを見逃すリンダではない。星の見えない夜空にエーテルの輝きがきらめく。リンダ・ヒュームはデスフレアの構え。
「……喰らいな」
リンダは腕を振り下ろし、握り拳大の光弾を投下した。それは一瞬で蛮神の体内に入り込み、弾けた。凄まじい破壊のエーテルは光の奔流となって立ち昇り、リンダのいる高空まで達さんばかりであった。破壊魔法の直撃を受けた蛮神は全身の岩石を吹き飛ばされ、骨格めいた構造が露出した見るも無惨な姿であった。剥き出しの心核が臓器めいて脈動している。それでもなお異形の蛮神は周囲の岩石を集め、身体の再構成を試みようとしていたが、それが叶う事はなかった。サン・ゴッドスピードはコンフィテオルの構え。
「じゃあな」
サンは己が剣を大地に突き刺す。瞬間、巨大なエーテルの剣が蛮神の足元から顕現し、その体躯を心核ごと串刺しにした。
「グギャァァァァァァァァッ!」
異形の蛮神は歪んだ断末魔と共に全身を震わせ、その動きを停止した。末端の岩石ががらがらと音を立てて崩れていくさまを、ウィンコ・コメイジは遠巻きから見つめていた。
「あ、あいつらもムチャクチャやりやがる……」
戦慄と畏怖がないまぜになった台詞を独りごちていると、足元から別の声がした。
「なぁ、右脚が折れたままなんだけど」
「やかましい!順番に治してんだから黙ってろ!」
ボロボロで横たわりながら悪びれもしないイズミに怒り心頭のウィンコであったが、それはそれとして癒し手の職務は全うせねばと治癒魔法をイズミに唱え続けた。
「ったくよォー。私が死ぬほど優しい鳥じゃなかったらお前なんか戦場のチリだぞ」
「ゴメンナサイ。ナオシテクダサイ」
「棒読みじゃあねーか!」
「……それはそうと」
「あ?」
イズミは身体を起こし、蛮神の残骸を見た。
「蛮神ってさ、討滅したら消えるんじゃなかった?」
イズミとウィンコは目を合わせ、しばし沈黙。そして、それを破るように蛮神の身体が鳴動した。
「うぉおおーい!サンちゃん!リンダさんッ!」
ウィンコはリンクパールに叫んだ。上空のリンダもまた、サンに通信を入れていた。二人の声が蛮神の目の前にいるサンの耳に届く。
《トドメを刺せって!なぁ!》
《らしくないね?サンちゃんが仕損じるなんて》
鳴動する蛮神。その身体の隙間から僅かに光る核が見えた。魔導兵器で言うところの予備動力といったところであろうか。蛮神はぎしぎしと音を立てて再構成しようと鳴動し続ける。だがサンは不敵な笑みと共に武具をしまい、背を向けて歩き出した。剣士の目線が高台の向こうに向く。聳え立っていた立体魔法陣は既に消滅していた。
「別にこんなヤツ、いつでも殺せるけどさ……」
サンの目線の先に、高速で飛来する魔導機械が見えた。ボズヤ地方で見かけた二人乗りエアバイク。名前は確か、イクリール。
「あわてて隣の戦場から駆けつけたんなら、トドメぐらい譲ってやろうかなって」
イクリールの後部座席から影が躍った。それは青い翼を拡げ、一気に降下して来た。サンはニヤリと笑い、呟いた。
「なぁ?お嬢様」
「やぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」
それは落着寸前、サンと同じ巨大なエーテル剣を顕現させ、蛮神の予備心核を貫いた。
「ギャアァァァァァッ!」
異形の蛮神ルナタイタンは今度こそ完全に爆発四散し、エーテルの塵となって消えた。吹き抜ける爆煙がサンの銀髪を揺らす。やがて開けたサンの視界の先に、白いディフェンダーコートをまとった編み込み髪の少女が騎士剣を手に立っていた。少女は大きく息を吐き辺りを見渡す。すぐにサンを見つけると、少女は納刀してサンに駆け寄り、拳を合わせてお互いの健闘を讃えた。
「さすがですねサンさん。お見事です」
「どうって事無いよソフィア。リンダさんもいたしね」
その言葉と共に、サンの背後にリンダ・ヒュームが降り立った。リパブリック様式の魔術装束をまとった妖艶なる召喚士は、穏やかな笑みでサンとソフィアを労った。
「ソフィちゃん、あの娘なら鳥が診てるよ」
リンダは目線で促した。
「えぇ、そのようで。あの、わたし」
「行っておいで」
「はい、また後ほど!」
少女はぺこりと頭を下げ、コートを翻してぱたぱたと駆け出す。サンとリンダは少女に手を振り、やがて戦場から去っていった。いつの間にか雲は晴れ、月がカルテノーの地を照らしていた。
ソフィアは月明かりに照らされた瓦礫を飛び渡り、やや開けた場所にたどり着く。辺りを見渡すと、鶏面の不審者とその不審者に治療されているアウラを見つけた。そちらへ駆けていくと、英雄に気付いた鶏面が不満を爆発させる。
「あっ、ソフィさん!アンタんとこのリテイナー、どういう教育してんだよッ!」
ウィンコ・コメイジはそのまま今作戦でやらかしたイズミの独断専行を並べ立てた。ウィンコの治癒妖精を繋がれて座り込んでいるイズミは、憮然とした表情で黙って聞いている。全て事実だ。
「……アンタが渡したタリスマンが無かったらどーなってたことか!」
「……うるさい」
「なんだとぅ?!妖精引っこ抜くぞ!」
「まぁまぁ。……えぇと、イズミさん」
ソフィアはイズミの正面にしゃがみ込み、少し困った顔で彼女に語りかけた。
「あの防御魔法が発動したら、わたしには伝わるんです。心配したんですよ」
穏やかに諌める少女の青い瞳が狩人を見据える。イズミはその瞳を見ることが出来ず、目線を逸らした。ソフィアは何も言わず、こちらを見つめてくる。こちらの言葉を待っている。ややあって、イズミはおずおずと口を開いた。
「……サンも、リンダも、そこの鳥も」
「ウィンコだ」
「ウィンコも……私よりずっと強い」
ソフィアの視線は変わらずこちらを向いている。そういう気配がする。
「まともにやってたら、役に立てない。それじゃあ推薦してくれた、あなたに……悪い」
ウィンコが何か言いかけたが、ソフィアが制したのか言い淀むだけに終わった。
「イズミさん」
呼びかけられて、ようやくイズミは正面を向いた。少女の青い瞳が、橙の髪が目の前にある。
「無茶して手柄を立てても、あなたに何かあったら意味がありません。そうですよね?」
少女の言葉はどこまでも穏やかだ。
「……そうだね」
イズミは自分でも驚くほど素直に応えた。ソフィアはにこりと笑うと立ち上がり、手を差し伸べた。
「立てますか」
「うん」
イズミはその手を取り、立ち上がった。出会った頃と変わらない、優しい温もりが伝わる。
「それじゃあ一緒に帰りましょう、と言えればよかったんですけど……」
ソフィアはバツの悪い顔を浮かべた。
「《暁の血盟》のところに戻らなきゃなんないんでしょ。いいよ」
「ごめんなさい。また拠点で。ウィンコさんも、本当にありがとうございます」
少女はウィンコにぺこりと頭を下げた。
「あー、まぁいいよ。大変だよな世の中」
ウィンコは空に浮かぶ満月を見上げた。
「それでは、また!」
少女は駆け出すと、空に向かって手を振った。どこからともなく降り立ったイクリールに飛び乗ると、英雄はそのまま丘の向こうへ消えていった。イズミは英雄の消えた夜空をしばらく見つめていた。
ウィンコの言う通り、世界にはかつてない危機が迫りつつある。この戦場で刃を交えたテロフォロイの勢いは留まるところを知らず、エオルゼア各地に出現した《異形の塔》の対策はいまだ確立していない。その後ろに潜む陰謀も闇の中だ。ソフィアは英雄としてこれまでになく大きな運命の渦中に飛び込もうとしている。
イズミは先程自分に投げかけられた言葉を思い返した。——手柄を立てても何かあったら意味がない。果たしてあの英雄は自分自身にそれを実践するのだろうか。わからない。絶対に大丈夫と言い切れないほど、あの少女も無茶ばかりしている。深淵の奥底で出会って以来、主人と従者として少なからぬ時間を共に過ごして来たがゆえの理解。
そしてそんな彼女を引き留めているのが、今まで歩み刻んできた足跡。縁を結んだ人々との絆だろう。自分もその一つとなれているだろうか。胸に秘められた烏滸がましい願い。伝えられる日は来るだろうか。未だ見つからない最後の仇。それを討ち果たして自由になれたら、その時は——。
「黄昏れてんのはいいけどさぁ、なんか言うことない?」
ウィンコの声がイズミの意識を呼び戻した。
「あーーー、うん。色々ごめん」
「まぁよし。帰ろうぜ」
イズミはウィンコの転送魔法に相乗りし、戦場を後にした。
◆◆◆
そして世界に終末が訪れた。英雄は運命に抗い、絶望巣食う天の果てで眩い希望を示した。星は救われた。星渡る船に乗り、英雄は戻って来た。
——数週間が経った。
英雄の目は、未だ閉じられたままであった。
【続く】
登場人物紹介
青葉イズミ…アウラ・レン族の女剣士。呪われた冒険者にして英雄の従者。仇である妖異を追い続けている。
ソフィア・フリクセル…ヒューラン族の少女。当代光の戦士にして星を救った大英雄。
サン・ゴッドスピード…エレゼンとミコッテの間に産まれた女性。英雄の冒険者仲間。今回はタンクを担当したが赤魔道士としても規格外の強さを誇る。攻め固定。リンダのパートナー。
リンダ・ヒューム…妖艶な雰囲気を纏ったヴィエラ族の女性。英雄の冒険者仲間。魔道士として比類なき実力と豊富な知識を備えるサンのパートナー。
ウィンコ・コメイジ…鶏面の不審な女。言動は怪しいがレンジ職とヒーラー職、そしてギャザクラ職の腕は英雄の人脈の中でも上位の腕前。中身はヒューランらしい。
ルナタイタン…テロフォロイが呼び出した異形の蛮神の一体。FF14本編には登場しないが、まぁルナイフリートとか居るしどこかに出現していたのではないだろうか。