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白妙と恩徳と
「よくも、私の仲間たちを……!皆、自由を信じて戦っていたんだッ……それをッ……!」
「死んだ仲間が、復讐を望んでいるのか……?信念のためにこそ武器をとっていたのではないのか?」
「黙れ、黙れ、黙れッ……!蛮族が軽々しく、私の仲間の想いを口にするなッ……!」
怨嗟の声をまとった魔法が乱れ飛び、優勢だったレジスタンスの陣形が崩れていく。まずい兆候だ。わたしは更に飛来する魔法弾へ盾を投げつけ相殺する。ワイヤー巻き上げ機構で手元へ戻ってきた盾の衝撃を受け流しつつ、わたしは声の主に向かって叫んだ。
「…ならばわたしがお相手いたしましょう!恩徳のユンブ!」
「蛮族の英雄!貴様さえ…貴様さえいなければッ!」
レジスタンスの陣形から離脱するわたしを追ってユンブは更に追撃を仕掛ける。わたしはその攻勢を回避し、受け流し、弾き返しながら「一騎討ち」の形を作り出した。
「何が解放者だ…!血に飢えた蛮族め…!」
剥き出しの憎悪に目を背けたくなる。
遠戦の間合いにあっても彼女の狂気の相貌ははっきりと見てとれた。
それでも向き合わなければならない。
「…復讐をやめろとは言いません。憎しみを糧にする事も否定しません。」
この言葉もユンブに届いているか定かではない。
それでもわたしは続けた。
「それがあなたの信念なら、わたしはそれを受け止めます!」
「だったら、死ねェェェ!!!」
ユンブの杖から魔力が迸ると同時にわたしは剣を構え、両脚に込めたエーテルを解放してユンブへと突進した。闇の花の如き致死の魔法はユンブの切り札だったのだろう。勝ち誇った笑みからそれが読み取れた。怨念がわたしの身体に殺到する。それでもそれがわたしを貫く事はなかった。「無敵」という切り札はこちらにもあるのだから。
爆煙を切り裂いて突き込まれた刃は、過たずユンブの心臓を貫いた。そういう感触だった。ユンブは短く呻き吐血すると、その二つ名にふさわしい穏やかな声で何か呟き、やがて動かなくなった。
「わたしは…わたしは、あなたを忘れません。」
もはや誰に向けての言葉なのか、自分でもわからなかった。
◆◆◆
「…斬ったやついちいち覚えてんの?」
祈りを捧げ終わると、いつの間にかモーターバイクに跨ったサンさんがそこにいた。
「…出来る限りは。それが礼儀というものです」
「お嬢様は真面目だね〜」
「サンさんが不真面目すぎるんですよ…」
わたしの呆れた返答にも彼女はどこ吹く風といった様子だった。
「…ところで、向こうはまたドンパチ始めてるぜ」
彼女がアゴで示した先では、新たに現れた帝国軍の増援が爆炎を疾走らせていた。
「さっきのインビンチャージでバーンとやっちゃってよお嬢様」
「…あれはそんな何回も使える技じゃありませんよ。ご存知のくせに」
「乗ってく?」
「是非」
わたしは彼女の後部座席に飛び乗り、再び戦火の中へ戻っていった。
このネタはテンさんが書いた話を、ソフィアさん時空で書いたもの。
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