悪くなかった日

黒い雲から青空が覗く。青空がだんだん広がっていって、黒い雲奥から白い雲が見え出した。下から黒い雲、白い雲、青空。そのコントラストがなんだか、大きな池の底にいるような感覚になった。

１日の始まりに不安を感じると、何となく星座占いを見る。いくつかサイトを見て、1番良かった結果を信じることにしている。そうすると、どこかでは12位でも、どこかでは1位だったりするのだが、今日はどこのサイトでもなんだか微妙だった。10位だったり12位だったり、1番良くて4位だったが、やっぱり低い順位が多かったので、あまりいい気分ではなかった。めちゃくちゃ信じていたという訳ではないが、今日の稽古は上手くいく気はしなかった。下手するとボロボロになるかも…なんて思ったので、せめて強気になろうと思い、前向きで強気な曲を集めた洋楽のプレイリストをかけ、ノリノリでウォーキングして稽古場へ向かった。

変に不安になっていたものの、別段最悪という訳でもなかった。もちろん完璧ではなかったし、嫌なことがなかったという訳でもないが、なんというか、前なら気にして落ち込んでいたことが、今は大したことないと思えてきたのかもしれない。
以前ミュージカルのワークショップへ行ったのだが、技術の向上のためのつもりだったが、発声や歌うための練習というより、マインドについて教えてもらった。私は自信の無い人間で、自分の技術についても疑心暗鬼になるし、自信が無い故に人を信用しきれないところがあったが、参加した全員でひとつの曲を歌うというときに、いつもは「しっかり声を出さなきゃ」とか、「音程ズレたらどうしよう」など常に不安になっていたものの、役に入りきり、ちゃんと上手く歌えているかどうかではなく、クオリティではなく、心で自由に歌うことでプレッシャーがなくなり、余裕が出来たことで一緒に歌っている人達の顔の表情や、その場の空気に本当の意味で触れられた気がした。私は歌やお芝居をする上で、泣くシーンでは涙目になることはあっても、なかなか涙を流すことが出来なかったが、その時は自然に涙が零れていた。人と仲良くなることが怖い、不快にさせることがあるかもしれない、なんて不安に思うこともあったが、自分が勝手にそう思っていただけで、実は何も考えずに助けを求めたり、自分から関わりに行くことで、大概助けてくれるし、仲良くなれたりするんだと身をもって感じられた。それからというもの、もちろん、まだ怖いものは怖いし、急に変われるわけでないが、以前より人が怖くなくなったし、卑屈になりすぎることも無くなった。少しづつだが、人と話したり絡みに行くことも増えたかもしれない。だがきっとそのおかげで、今日あった嫌なことも、直ぐに人に話すことができて、引きずらずに済んだのかもしれない。それ以外にも、助けて欲しいことを助けて、教えて欲しいと言えたし、全然悪い1日なんかじゃなかった。そう思える日を過ごせたことが、とても嬉しい。

ミュージカルのワークショップを受けてから、なんだか前よりもみんなが近くに感じることができていると思う。全く自信を持てなかった私に、少しづつ自信が身について来ていると感じている。近くにいてくれる人が、自信を与えてくれるのかもしれない。不安なことはもちろん増えていくが、なんだか思っているほど怖く感じない。ある意味、これはこれでこういう成長なのかもしれない。もう何も怖くない。…訳では無いが、言ってみたかっただけ。