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Xperia™チームの体験研修「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」に潜入!純度100%の暗闇で感じたこと

広報部のYTとYIです。

ソニーでは、アクセシビリティに配慮した製品・サービスや、インクルーシブデザインに関するさまざまな取り組みを行っています。

その一例として、Xperia™スマートフォンのチームが、一般社団法人ダイアローグ・ジャパン・ソサエティの協力を得て実施したアクセシビリティの体験研修、「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」についてご紹介します。

「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」とは完全に光を遮断した「純度100%の暗闇」の中で、視覚障がい者(アテンドスタッフ)の案内により、視覚以外の様々な感覚やコミュニケーションを楽しみながら、新たな気づきを得る体験です。Xperiaに携わる社員に向けてカスタマイズされた内容で、商品開発をはじめ、コミュニケーションやチームビルディングなど、日々の業務に活かす目的で実施されました。商品企画や設計の他、品質保証、マーケティング、広報などさまざまな職種や役職のメンバーが参加した研修の様子を、感想を交えてレポートします!


いざ「純度100%の暗闇」の中へ

まず、参加者は明るい部屋でオリエンテーションを受けます。光を発する物はすべて置いていく必要があり、携帯電話はもちろん、蓄光塗料が使われている腕時計や、眼鏡も不要なので外すよう指示がありました。その後、白杖を持ち、アイマスクで目隠しをして会場へ移動します。

前の人の肩に手を置いて、そろそろと一列で移動

会場で目を開けると真っ暗!どんなに目を開けたり閉じたりしても何も見えない状況で、最初に感じたのは恐怖でした。いつも頼っていた視覚情報がなくなることで周囲の様子が全く分からなくなり、一歩足を前に出す、ちょっと屈むなど、すべての行動が恐る恐るになりました。
視覚を奪われるとスマートフォンを触る、絵を描くなどいつも使っている恐怖心を紛らわせる方法も使えません。個人差はあるでしょうが、私YTは中盤まで暗闇に慣れられず、何も見えないことがこんなにも怖いとは思いませんでした。

何も見えないため、自分が目を開けているのかすら分からなくなりました

■ワーク①ボールをメンバーにパスしよう

その後、各グループで円を作り、ニックネームで自己紹介した後、音の鳴るボールをパスし合います。渡したい人の名前を呼んでボールを転がすのですが、暗闇で記憶だけを頼りにメンバーの位置を割り出すのは難しいため、名前を呼ばれた相手が自然と「ここにいます」と発声するようになったのが興味深かったです。このあとのワーク全体を通じて、暗闇ではいかに視覚以外の感覚を駆使してグループメンバーと上手にコミュニケーションできるか、という工夫が重要だと感じました。

■ワーク②みんなで椅子に座ろう

続いて、隣の人に椅子を渡してグループ全員が椅子に座るよう指示があります。始まる前は簡単だと思っていましたが、椅子の数を把握できず、隣の人との距離もうまく測れないため、何度もメンバーとぶつかってしまうなど、想像以上に大変でした。
視覚に頼れない分、すべて声で情報共有する必要があり、常に複数の人が大声で話す熱気で急に部屋が蒸し暑くなったような気も・・。改めて「見る」という行為で得られる情報量の多さを実感しました。

■ワーク③Xperiaを充電しよう

印象的だったのは、暗闇の中説明がないままXperiaが渡されて、充電ケーブルを差し込むワークです。最初は自分が持っているものが何か、さらに上下逆に持っていたことに長い間気がつかず、挿し口を見つけるのにいつもの3倍ほど時間がかかりました。スマートフォンはボタンが少ないため、普段からいかにスクリーンを見る前提で操作しているかに気付くとともに、視覚に頼らないと、便利であるはずのスマートフォンもうまく使いこなせないという発見がありました。

■ Xperiaのアクセシビリティ機能で集合写真撮影

Xperiaスマートフォンにはソニー・太陽株式会社に在籍する弱視の社員と一緒に取り組んだインクルーシブデザインが取り入れられています。

ソニー・太陽は1978年に設立され、全社員の約6割を障がいのある社員が占めるソニーグループ(株)の特例子会社です。障がいのある社員が働きやすい職場環境を整備することで、障がいの有無に関わらず社員が活躍しています。
 
Xperiaの開発チームは、2021年からソフトウェアのチームが中心となってソニー・太陽に在籍する弱視の社員と一緒に街を散策したり、仕事の様子を観察したりしながら対話を重ねる中で、彼らがスマートフォンで頻繁に写真を撮影し、写真のズーム機能を拡大鏡代わりに使っていることに気付きます。ただ、撮った写真を見返すと、被写体が傾いて写っているなど、うまく写真に収められていないことが多い、という課題が分かりました。
そこで、一部の独自アプリケーションを改良し、写真撮影時に画面の水平の計測情報を音で撮影者に知らせる機能を搭載しました。(以下動画の3:37~で詳しく紹介されています)

ワークの締めくくりでは、アテンドスタッフがこの水準器の機能を実際に使ってチームの記念写真を撮影。

他にも、Xperiaは音声フィードバックを使用して、画面を見ずにデバイスを操作できる機能「TalkBack」や操作画面の視認性向上などの、視覚、聴覚、操作をアシストするさまざまなアクセシビリティ機能を搭載しています。

部屋を明るくしてのフリートークでは、商品のアクセシビリティ機能について、アテンドスタッフのお二人に熱心な質問が多数寄せられました

フリートークの中で、アテンドスタッフの方は、スマートフォンの操作を「しばらくトライして反応するか」で判断していると知りました。また、よく利用するSNSもアップデートの頻度が多く、毎回内容を把握するのが大変と伺って、すべてのユーザーが自由に思う形で使うことができる商品やサービスを作る難しさを感じました。

■参加した社員の声

最後に、今回の体験を今後の業務にどう活かしていきたいかをグループ内で共有。
アクセシビリティに対する考え方については、「想像しているのと体験するのとでは大きな違いがある」、「より自分ごととしてとらえられるようになった」、「改めてアクセシビリティ機能の必要性を実感した」といった声が多く挙がりました。さらに、日ごろのコミュニケーションの取り方や仕事の進め方に対しても、お互いに積極的に声を掛け合う重要性など、各自がさまざまな気づきを得ていた様子が印象的でした。
 
<体験者の声(抜粋)>
・(視覚を使えず)人の名前を声だけで覚えないといけないことがとても難しかった。
・ 体験後、聴覚疲れをしたのか頭が痛くなった。何かの感覚が遮断されると他の感覚が研ぎ澄まされるのだな、と思った。
・自分のしたことのフィードバックが情報として得づらいのは何かと不満や不安が溜まるなと気づいた。
・Xperia も障がいの種別や有無を問わず、適切で安心なフィードバックを常にユーザーに返すことができるようなユーザビリティある設計にしたい。
・小さい、大きいなどは個々の主観に過ぎず、全員の正確な共通認識を持つ重要性を感じた。

体験を通じて得た気づきは、最後にカードに記入して各自持ち帰りました

■主催メンバーにインタビュー

左から:アテンドスタッフの一般社団法人ダイアローグ・ジャパン・ソサエティの花房さん、谷口さん、研修を主催したマーケティングコミュニケーションの冨田さん、小川さん(所属は取材当時)

研修を主催した冨田さんに、開催の目的や今後の展開についてお話をうかがいました。

この研修には二つの目的があります。一つは、社員の行動変容です。暗闇でのコミュニケーションを通じたリーダーシップ、チームビルディングに加えて、アクセシビリティ機能改善の重要度を認識してもらいたい、また、我々の商品のアクセシビリティ機能に触れたことが無い方に体験してもらうという意図がありました。
もう一つは、社員が体験する様子やそこで得た気づきを、ソニーのアクセシビリティに関する取り組みとして発信することです。「Xperiaに関わる全ての社員が、アクセシビリティを考えるようになることを目指す」というメッセージを、今後もさまざまな形で発信していきたいと考えています。

今回の「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」を通して、視覚障がいがある方の感覚を、初めて自分ごととして理解することができたように思います。「ユーザーの感覚を自分ごととして理解する」というインクルーシブデザインの重要な視点を身をもって実感しました。今後もXperiaのアクセシビリティの取り組みに注目し、紹介していきたいと思います。
 
新製品『Xperia 1 VI』『Xperia 10 VI』の本日の発表にあわせて、この「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」の体験学習の様子がビデオで公開されています。ぜひご覧ください!

参考リンク
Xperiaのアクセシビリティ | ソニー (sony.jp)
ソニーグループポータル | アクセシビリティ | インクルーシブデザインの取り組み (sony.com)
ソニーグループポータル | ソニーの「インクルーシブデザイン」とは?CEATEC出展担当者に狙いを聞く (sony.com)

左より、YT、YI
「広報部で社内コミュニケーションを担当しています。初めてダイアログ・イン・ザ・ダークに参加して色々な気づきがありました!楽しかったです!」


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