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大体答えは出ない、でも考え続ける——小原ブラスさんの世界を平和にする方法

とにかく考えつづえけましょう。大抵答えは出ないけど、考え続けることには、必ず意味があります。
いま盛んに叫ばれている「多様性」という言葉は、「自分の価値観を恥ずかしがらずに主張していい=我慢しなくていい」という捉え方をされることが多いです。でも、誰かが我慢しないということは、その価値観に疑問を抱く人にとっては「我慢しなくてはいけない社会」になっているのかもしれない。僕は14歳の頃、自分はマイノリティだと思い込んでいたけど、音楽やファッションの好みとか、趣味だとか、探せばいくらでもマジョリティな部分もあったと思います。
白でも黒でもない、答えの出ないグレーゾーンはどの価値観にもあります。それでも、考え続けましょう。考えて議論しましょう。

『from under 30 世界を平和にする第一歩』河出書房新社, 2022. p.16-17.

なぜ争いは起きるんだろう。いま、世界を平和にするためにできることって?本書は、作家、発明家、ピアニスト、起業家など30歳以下の19人からの多彩なメッセージが詰まったアンソロジーである。

引用したのは、小原ブラスさんの文章。1992年生まれ、ロシアのハバロフスク出身、兵庫県姫路育ち。見た目はロシア人、中身は関西人。ブラスさんは、日本で育っているため、第一言語は日本語、友達も日本人、中身は完全に日本人だと自称する。しかし見た目が「外国人」なので普通の日本人とは異なる感性を磨いてきた。

そのブラスさんが、平和のために主張するのは「考え続けること」の大事さ。ブラスさんは「日本人は優しい人が多い」という。しかし、優しいがゆえに、思っていることを言葉にしない文化があるとも感じる。「なぜ?」と思ったことをやり過ごして、わからないままに黙っていると、言葉にしなかった本心が心の中にたまっていく。それがいつかはじけると争いが起こる、と考える。だから「なぜ?」と思ったときには、さらに一歩踏み込んで、考え続けることが大事だという。

ブラスさんは「自分とは反対の意見を持っている人の論理を想像するのが面白い」という。ブラスさんは高校生のときからネットで配信を始めた。すると「日本とロシアの北方領土問題についてどう思っているんだ」というコメントがたくさん来たという。そのとき、ブラスさんは「日本育ちで中身は日本人でも、ロシア人の見た目である限り、国と国の問題については、ずっと言われ続けるんだ」と初めて気づいたという。そして、専門的な本を読んで勉強しようとしたが、退屈でまったく頭に入ってこなかった。そこで、議論ができるネット掲示板で、まずは日本側に立って主張を書き込んでみた。そうすると、ロシア側の主張を持つ人がコメントを多く書き込んできた。別の掲示板で、今度はロシア側の主張を書き込むと、今度は日本側の意見が聞けた。「そういう考えがあって反対しているんだ」とリアルな意見に触れることができて、本を読むよりもずっと面白く、勉強になったと感じた。

ブラスさんは「大人になると、知識のなさがバレるのが怖くて、議論を避ける人も多くいる」と喝破する。でも「知識がないからこそ、議論した方がいい」と断言する。反対の人の意見を聞かずにいたら、結局は感情論のぶつかり合いとなり、分断や対立は解決しないからだ。

「大抵は答えは出ない、それでも考え続けること」。世界を平和にするための第一歩を小原ブラスさんはそう考えている。


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