「公共の福祉」は可能か?〜ハイエクの『隷属への道』を読む
『隷属への道』(The Road to Serfdom)は、1944年にオーストリア学派の経済学者・哲学者、フリードリヒ・ハイエクによって著された政治学書である。中央計画経済が必然的な結果としてもたらされる国民生活全体の隷属について警告する内容であり、同時に個人主義や古典的自由主義の放棄も同じく隷属を招くと主張している。 1944年の出版以来、『隷属への道』は200万部を超える売上を記録し、市場自由主義を代表する著作であり続けている。(Wikipediaより)
1944年という第二次大戦の真っ只中に書かれたという書物であり、その後の世界経済が新自由主義(ネオリベラリズム)を中心として展開していくことを予言するかのような書である。
その主張は計画主義・計画経済に対して真っ向から反対するものであり、さらには社会主義/計画経済が全体主義/ファシズムと同根のものであり、それが自由の喪失=隷属を招くというものであった。
本書には多くの批判もある。社会経済学者のカール・ポランニーは自由市場こそが社会秩序を脅威に直面させており、繰り返される不況とバブルの崩壊こそが独裁者の出現をもたらしていると主張した。新自由主義の考え方だけでは、現在の資本主義経済の多くの弊害を克服できないのも事実である。
冒頭の引用では、「公共の福祉」という単一の目標を目指す政策に疑問を呈しており、この主張には否定できないところもある。「すべての人が目指すべき目標」というやり方には全体主義的な傾向が含まれるからだ。今の時代で言えば「SDGs」という人類全体の目標とされているものがそれに近いかもしれない。
ハイエクの文章には非常に哲学的に深いものがあり、ハイエク=新自由主義者とラベリングして片付けるのではなく、私たちにとっての「自由」とは何かという観点から、もう一度本書を読み直す価値は十分にあるだろう。