三百五十話 よくわからない

「ごきげんよう」「神のご加護を…」

朝の清冽な空気の中、女子生徒の挨拶がこだまする…。

学校の校門をくぐると、そこは身も心も清らかな乙女の園…。

そう、ここは神田ミカエル女学院…。

中庭の大天使ミカエル像が、通う女子生徒たちを守護している…。

天界の大天使ミカエルは、ここに通う女子生徒たちを見て何を思うか…?

その御心は、まさに神のみぞ知るということなのだろう…。

ここに三年間通えば、お淑やかなお嬢様になって卒業できるという…。

制服は翻さないように、静かに歩き…。

清廉潔白で文部両道、それでいて純粋無垢な心を持った乙女たち…。

この学院には、そういった生徒しか存在しないのです…。

否、今日から新たに校門をくぐった、たった一人の生徒を除いて。


冬休み目前のある日…。

寮生活をしている宮園花子さんに寮にお呼ばれされた。

花子さんは前に天使側の人間に拉致されて…。

生命エネルギーが低下していたところを…。

私が助けたのである…。

それでも、花子さんの生命エネルギーは低下していて。

寮の部屋に来る前に、花子さんの身体は半透明になっていた。

今にも消えて無くなりそうな、儚げな雰囲気を醸し出していたのだ。

早く助けないと、本当に消えて無くなりそうな花子さんの身体…。

私は花子さんを救出することに決めたのであった…。

以前にも花子さんを助けたことがあるのだけれど…。

その時も生命エネルギーが低下していた花子さん…。

その花子さんに私は私のおしっこを飲ませたのだった…。

何を言っているか、さっぱりわからないだろうけど…。

私のおしっこには魔力が凝縮されているらしく…。

おしっこを飲んだ花子さんは、どうにか助かったのである…。


今回も私のおしっこを花子さんに飲んでもらって…。

生命エネルギーを回復してもらおうかなと思う…。

ちょうど、小さめのペットボトルがあったため…。

どうにかペットボトルの中におしっこを入れることに成功…。

ペットボトルを、花子さんに渡した…。

これを飲んで…!と言うわけである…。

花子さんは何の疑いを無く、飲んでいく。

飲んでいる途中、??って表情になる花子さん。

それでも、花子さんは全部飲み干してくれた…。


私は花子さんの身体を見つめていたのだけれど…。

半透明の身体が、少しは輪郭が濃くなった気がするけれど…。

あまり変わっていない気がしてきた…。

花子さんは私の顔をじっと見つめている…。

なんと、花子さんはそろそろお迎えが来たという…。

花子さんは涙を流しながら微笑んでいる…。

花子さんの瞳からは、一筋の涙が流れ始めた…。

花子さんの半透明な身体が、透明になっていって…。

透明な身体の端々が、光の粒子になっていった…。

花子さんは私と過ごした時間が楽しかったという。

私もいつしか涙が溢れ出ていた…。

花子さん!消えちゃダメだよ!いなくならないで…!

花子さんは、また会いましょうと言って消えつつある…。

そして、花子さんの身体は光の粒子になり虚空に消えていった…。


花子さんが消えてしまった…。

私は泣きながら途方に暮れてしまった…。

何分かそれとも何時間か…。

時間の経緯はわからないぐらい泣いたけど…。

私は何故か泣きながら花子さんの作った唐揚げを…。

リュックに詰めたのである…。

花子さんがせっかく作ってくれた唐揚げ…。

ここに残しておくにはもったいない…。

そう思ったのかもしれない…。

あと、花子さんの制服も抱きしめて持って帰ろう…。

そう思った…。


私は泣きながら、グレモリーの家に帰ったのだが…。

なんと、そこには消えたはずの花子さんが…。

呑気にカップ麺を啜って、存在していたのである…。

どう言うことか、私は全く理解できなかったが…。

グレモリーの説明によると…。

花子さんの消えかけた魂をこの家に固定したという。

どうにかアストラル体をここに固定できて…。


というか、アストラル体ってなんなのだろう?

グレモリーが説明してくれたのだが…。

アストラル体とは神智学の体系の一つで…。

精神活動における感情を主に司る…。

身体の精妙なる部分のことで…。

主に情緒体、または感情体、感覚体、星辰体などという。

人間だと感情や欲望、発想、恐怖などを司るもので。

花子さんは特に感情や欲望が強く…。

花子さんの魂が消えようとしたその時…。

グレモリーは魔法でアストラル体だけを固定したという。

人間の身体はアストラル体をはじめとして…。

何層にも不思議な層が重なっており…。

他にもエーテル体とメンタル体と言う層があって。

本当はエーテル体を残そうと思ったのだけれど…。

魂が希薄すぎて無理だったという…。


説明されても、いまいちよくわからない私…。

カップ麺を美味しそうに啜っている花子さん…。

その姿をよく見てみると…。

花子さんの身体は半透明で…。

黄色い燐光に包まれていた…。

花子さんの身体は全裸で…。

ふくよかな体型はそのまま見えている…。

私は花子さんに制服を差し出した…。

一応、着てくれたけれど…。

なんかいまいち着心地が悪そうだ…。

アストラル体だからだろうか…?

そもそもアストラル体っても物を食べれるのだろうか?

花子さん本人も不思議そうな顔をしている…。

私もよくわからなくなってしまうのであった…。

よろしければサポートお願いします❗ たいへん励みになります。