二百三十七話 白いブレザー

グレモリーさんのお家で、お世話になるようになって数日後…。

四月になった…。こないだまで肌寒かったのにすっかり陽気は春…。

数日前、春の嵐…。春の撹乱とも言える大雨があり…。

桜の花もすっかり散ってしまった…。と思いきや…。

桜の花さんの凄い生命力というのか、また満開の花を咲かせたのだった。

別に花が好きでもない私にとっても、満開の桜の花は見ていてとても美しいと思う。

満開の桜が視界を埋め尽くして、周りの風景はピンク色に染まっている…。

そんな春の情緒満開の都会の朝を、私は高校の制服に身を包んで歩いている。

なんかものすごい久しぶりの制服…。そして、違う高校の新しい制服…。

真っ白なブレザージャケットの制服…。私には眩しすぎてなんだか気恥ずかしい。

私は漆黒のセーラー服を着て行きたかったのだけれど…。

どうしても、グレモリーが真っ白なブレザーを着て行って欲しいと駄々をこねたので。

(本当に床の絨毯に転がって、駄々をこねたのである…)

いい歳こいたお姉さんが何をしているんだと、私は呆れかえってしまったのである。

そんなにこの白いブレザーがいいのかと、私はしょうがなく着ているのである。

編入の前夜、真新しい制服が綺麗に畳まれ、箱に入って届いた…。

なぜかグレモリーは飛んで喜んで、早く試着してくださいとわめいたのである。

私は最初、黒いセーラー服を着てみせたけれど、グレモリーは不服そうであった。

どうしてもこっちの純白なブレザーがいいのかな…?

私がそちらを着てみると、グレモリーは目を輝かせて喜んだ…。

そして、私にグレモリーが抱きついてきそうになっているので…。

私は身をかわして、逃げた…。

グレモリーに抱きつかれたら、制服がシワになってしまうし…。

どうもグレモリーの見た目と身体の匂いが好きになれない私なのだ…。

翼さんなら、抱きついちゃうんだけどなぁ…。

グレモリーも凄い美人なんだけれど…。

なんというか西洋の悪魔だけに…。香水?の匂いがきつい…。

少し弱めてくれたから、耐えきれないほどではないけれど…。

うぅん、まだこの匂いには慣れきれないなぁ…。

「ご主人様、そんなにグレモリーのことお嫌いなんですか?」

見ると、泣きそうな顔をしたグレモリーがこちらを見ている…。

そうか、私の考えていることがグレモリーには筒抜けなのか…。

いや、嫌いとか好きとかじゃなくて…。

匂いの話で…。私は翼さんの匂いが大好きなのです…。

やっぱり、好き嫌いの話か…。

あははは、ごめんなさい、グレモリーさん。

恨むなら、天使のような美しさの翼さんの美貌を恨んでください…。

「そんなにあの翼さんとかいう女が好きなんですか!?ご主人様!?」

好きですが!?愛していますが!?何か???

「うぅぅ、私がこんなにご主人様を愛しているのに…」

遠路はるばる魔界からご主人様を探して、人間界に来たのに…。

そして漸くご主人様を探し当てたのに、こんな仕打ちを受けるなんて。

とか言いつつ、よよよ…と泣き崩れる真似をするグレモリー…。

泣き真似なの、モロバレですけどぉー…?

とかなんとか昨晩に女子校の制服を試着して…。

今日の朝、制服を着てその学校に向かって歩いてる私なのです。

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そのさき@小説
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