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読書感想文「親切人間論 水野しず」
「親切人間論」を読んで、私の中に何が残ったのか。それは、「考えることへの興味」だった。
「親切人間論」を読んでいて感じたのは、“理解できる部分は強く共感できるが、理解できない部分に関しては自分の中で答えを見つけながらでないと読み進めることが出来ない”ということだった。この感想は、あらゆる文章に当てはまる感想であり、あたりまえと言えばあたりまえなのだが、「親切人間論」に感じる理解出来なさは、無視の出来ない理解出来なさというか、強い共感の上に存在する理解出来なさなので、自分の中で早いうちに答えを出しておいた方が得という感じがするため、後回しに出来ない感じがしたのである。
自分の中の勝手なイメージではあるが、水野しず氏の文章を読んでいると、自分の中に存在する意見の解像度が上がっていく感覚がある。自分の中に存在する意見がスポンジケーキだとすると、水野しず氏の文章に登場する理解出来なさは、スポンジケーキをコーティングする生クリームであったり、その上に乗せられるイチゴであったり、意見の完成度を高めてくれるものばかりだ。自分の中に存在する素材のままの意見が、完成していくような感覚は「親切人間論」を読んでいて得られる特別な感覚であった。
水野しず氏の文章には、意見や考えを素材のまま終わらせないという意思が感じられて、とても刺激になる。自分も「おしゃべりダイダロス」や「親切人間論」を読んでいると、自分の中に生まれた意見について、マジに考えようという気持ちになるし、考えることへの興味が湧いてくる。
「親切人間論」は、考えることに興味がある人や、自分の意見を結論へと導きたい人におすすめの1冊だ。装丁や文章のレイアウトも最高なので、ぜひ手に取って読んでいただきたい。