限局型肺小細胞癌に対する抗PD-L1抗体Durvalumabの性有効性 (NEJM)
Durvalumab after Chemoradiotherapy in Limited-Stage Small-Cell Lung Cancer | New England Journal of Medicine
要約
肺小細胞癌(Small cell lung cancer)のLimited stageの5年生存率は29-34%程度であるが、何十年もの間、新規の治療法は登場していない。今回、高親和性PD-L1特異的ヒトIgG1モノクローナル抗体であるDurvalumabの、放射線化学療法を施行後進展していない患者におけるAdjuvant治療としての有効性と安全性を検証する試験が行われた。
本試験は多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照第3相試験(進行中)であり、対象患者はStage 1-3のSCLCの患者で、手術適応がなく、放射線化学療法を施行後進展していない患者が対象となった。56人の患者が登録し、1:1にDurvalumab群とプラセボ群に割り付けられた。治験薬は4週に1回静脈注射され、最高24か月間投与された。
主要評価項目は、全生存期間と無進展生存期間であった。事前に予定された中間解析において、全生存期間は、中央値で37か月の追跡期間において、Durvalumab群では55.9ヶ月、プラセボ群では33.4ヶ月とDurvalumab群で有意に延長を認めた。また、無進展生存期間は、中央値で27か月の追跡期間において、Durvalumab群では16.6ヶ月、プラセボ群では9.2ヶ月と、同様にDurvalumab群で有意に延長を認めた。安全性に関しては、Grade 3以上の有害事象の発生率は、Durvalumab群では24.4%、プラセボ群では24.2%と群間に差はなかった。
結論として、肺小細胞癌(Small cell lung cancer)のLimited stageの患者のうち、放射線化学療法を施行後進展していない患者において、高親和性PD-L1特異的ヒトIgG1モノクローナル抗体であるDurvalumabによるAdjuvant治療は、全生存期間と無進展生存期間を延長した。
所感
私自身は肺小細胞癌の治療を主治医として行ったことは研修医の時を除いてないが、研修医の時には、肺小細胞癌が完治した症例は残念ながら経験できなかった。最初は治療に反応するが、すぐに反応しなくなる患者が多かった。
PD-1抗体のNivolumabはアメリカではSCLCに対して承認されているが、これは初期段階の治験の客観的奏功率に基づいたものらしく、生存期間に関する有益性は示されていなかったようである。
Durvalumabは抗PD-L1抗体の1つであり、既に進展型SCLCに対しては承認されている(その他、胆道癌、NSCLCなどにも)が、今回の試験は、放射線化学療法後進展していない限局型SCLC症例を対象としたものである。37か月の追跡期間ではあるが、全生存期間はDurvalumab群では55.9ヶ月、プラセボ群では33.4ヶ月と2年近く延長しているのは画期的な結果。