更年期障害の血管運動発作の非ホルモン性治療薬の第3相試験 (JAMA)
Elinzanetant for the Treatment of Vasomotor Symptoms Associated With Menopause: OASIS 1 and 2 Randomized Clinical Trials | Gynecology | JAMA | JAMA Network
要約
更年期血管運動症状(VMS)に対する安全で効果的な非ホルモン治療が必要である。今回、中等度から重度の更年期血管運動症状の治療における選択的ニューロキニン-1,3受容体拮抗薬であるElinzanetantの有効性と安全性を評価するために、2つのランダム化二重盲検第3相試験(OASIS1および2)が行われた。中等度から重度の血管運動症状を有する40~65歳の閉経後女性が登録された(OASIS 1:2021年8月27日から2023年11月27日まで米国、ヨーロッパ、イスラエルの77施設、OASIS 2:2021年10月29日から2023年10月10日まで米国、カナダ、ヨーロッパの77施設)。参加者は、Elinzanetant群 (1日1回経口投与, 120mgを26週間投与)、またはプラセボ群に割り付けられて12週間投与盲検下で投与が行われ、その後Elinzanetant 120mgが非盲検で14週間投与された。主要評価項目は、ベースラインから4週目と12週目までの、ほてりに関する電子日誌で測定した、中等度から重度の血管運動症状の頻度と重症度の平均変化であった。副次評価項目には、ベースラインから12週目までの、Patient-Reported Outcomes Measurement Information System Sleep Disturbance Short Form 8bの合計Tスコアと、更年期特有のQOL質問票の合計スコアが含まれた。
参加者(平均[SD]年齢、OASIS 1: 54.6[4.9]歳、OASIS 2: 54.6[4.8]歳)は、Elinzanetant 群(OASIS 1: n=199、OASIS 2: n=200)またはプラセボ(OASIS 1: n=197、OASIS 2: n=200)に無作為化された。合計309人(78.0%)と324人(81.0%)がそれぞれOASIS 1と2を完了した。24時間あたりのベースライン平均(SD)VMSの頻度は、Elinzanetant群およびプラセボ群で、それぞれ13.4(6.6)と14.3(13.9)(OASIS 1)、14.7(11.1)と16.2(11.2)(OASIS 2)であった。ベースラインのVMS重症度は、Elinzanetant群およびプラセボ群で、2.6(0.2)と2.5(0.2)(OASIS 1)、2.5(0.2)と2.5(0.2)(OASIS 2)であった。Elinzanetant群では、プラセボ群と比較して、4週目(OASIS 1: −3.3 [95% CI、−4.5~−2.1]、P<.001、OASIS 2: −3.0[95% CI、−4.4~−1.7]、P<.001)および12週目(OASIS 1: −3.2 [95%CI、−4.8~−1.6]、P<.001、OASIS 2: −3.2 [95%CI、−4.6~−1.9]、P<.001)のVMSの頻度を有意に減少させた。Elinzanetant群は、プラセボ群と比較して、4週目(OASIS 1: −0.3 [95%CI、−0.4~−0.2]、P<.001、OASIS 2: −0.2 [95CI、−0.3~−0.1]、P<.001)および12週目(OASIS 1: −0.4[95%CI、−0.5~−0.3]、P<.001、OASIS 2: −0.3[95%CI、−0.4~−0.1]、P<.001)のVMSの重症度も改善した。Elinzanetantは、12週目の睡眠障害および更年期関連のQOLを改善し、安全性プロファイルは良好であった。
選択的ニューロキニン-1,3受容体拮抗薬であるElinzanetantは、中等度から重度の更年期血管運動症状(VMS)に対して忍容性が高く、プラセボと比較して有意に4週ごと12週後のVMSの頻度と重症度を改善した。
所感
内科医でも更年期症状の相談を受けることはよくあるが、ホルモン補充療法を導入するのはハードルが高く、漢方薬(桂枝茯苓湯など、効く人には効く)を試すか、症状のひどい人は婦人科を紹介するか、ということになることが多い。
今回のElinzanetantは、ニューロキニン受容体拮抗薬で、要は視床下部の体温調節中枢が作用点らしい。少なくとも評価された期間においては忍容性は高そうである。
ただ、この種の薬剤は長期投与が基本だと思うが、わずか12週間の評価しかされていない点、おそらく血管運動症状以外には効果がないのではないかと思われる点、ホルモン補充と比較した際の効果が不明である点、などは今後の課題だろう。