糖尿病のないCKD患者に対するSemaglutide 2.4 mg/週のアルブミン尿に対する有効性 (Nature Medicine)

Semaglutide in patients with overweight or obesity and chronic kidney disease without diabetes: a randomized double-blind placebo-controlled clinical trial | Nature Medicine
要約
Semaglutideは、2型糖尿病と慢性腎臓病(CKD)を有する患者のアルブミン尿および腎疾患進行リスクを軽減することが知られている。今回、CKD (eGFR≥25 ml/分1.73 m2および尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)30~3,500 mg/日)とBMI≥27 kgを有する患者を対象に、無作為化プラセボ対照二重盲検臨床試験を実施した。参加者は、Semaglutide群 (2.4 mg/週)またはプラセボ群に無作為化された。主要評価項目は、24週目のUACRのベースラインからの変化率であった。101人が無作為化され、Semaglutide群(n = 51)またはプラセボ群(n = 50)に無作為化された。平均年齢は55.8歳(SD 12)、女性は40名(39.6%)であった。UACRの中央値は251 mg/g(四分位範囲100, 584)であった。eGFRの平均値は65.0 ml/min/1.73 m-2、平均BMIは36.2 kg/m2であった。CKDの病因は、慢性糸球体腎炎(n = 25)および高血圧性CKD(n = 27)が多かった。Semaglutideによる24週間の治療はプラセボと比較してUACRを−52.1%減少させた(95%信頼区間−65.5, −33.4、P < 0.0001)。消化管関連有害事象は、プラセボ群(n = 15)と比較してSemaglutide群(n = 30)で多かった。結論として、肥満・過体重と非糖尿病性CKDを有する患者において、Semaglutideによる24週間の治療は、アルブミン尿を有意に減少させた。

感想
Semaglutideに関しては、既に発表されている、2型糖尿病とCKDを有する患者での2重盲検試験において、Semaglutide 1.0mg/週の腎複合アウトカムの改善作用(-24%)が示されている。
Effects of Semaglutide on Chronic Kidney Disease in Patients with Type 2 Diabetes | New England Journal of Medicine
また、肥満で心血管疾患の既往を有する患者に対する心血管イベント予防効果を見たSELECT試験の事前に規定された追加解析でも、腎アウトカム改善効果が示されている。
Long-term kidney outcomes of semaglutide in obesity and cardiovascular disease in the SELECT trial | Nature Medicine

今回の試験は、非糖尿病CKD患者に絞って、Semaglutide 2.4 mg/週 (つまり、肥満用量)の効果を見たものである。
結果として、尿中アルブミン低下作用は約50%で主要評価項目は達成。
この尿中アルブミン低下作用は、SGLT-2阻害薬など、他の薬剤と比較しても十分に臨床的に有意義なものである。一方で、臨床的有効性に関してはこの試験からは不明であるが、登録症例数は約100名と少なく期間も短いのでこれは致し方ない。
興味深いのは、なぜこの患者群でSemaglutideがアルブミン尿の低下作用を示したか、である。
体重減少やそれに伴う血圧の低下などの代謝パラメーターの改善、糸球体の血行動態の改善作用、抗炎症作用、など、さまざまな可能性が考えられるが、おそらくは上記やそれ以外のメカニズムが合わさって効果を発揮しているのだろう。このあたりはなかなか答えの出ない問題だろうと思われる。

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