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人事評価は不毛?〜評価なしで100名の壁を超えたUbieの事例〜

こんにちは、Ubie Discovery(AI問診ユビー/AI受診相談ユビー)でカルチャー開発を担当しているsonopyです。
タイトルの通り、弊社Ubieには人事評価がありません。「スタートアップなのでまだ評価制度を作れていない」というわけではなく、「評価はしない」と方針を決めています

一般的には、社員数30名程度か、遅くとも50名規模では評価制度を整えていくかと思います。Ubieは現在社員数3桁に乗ったところです。この規模で評価なしの組織運営は珍しいので、「どういうこと?」と聞かれる機会も増えてきました。
私自身も大小IT企業の組織を経験してきましたが、過去の経験にない、ユニークな制度だなと感じます。評価せずどうやって士気の高い組織づくりをしているか、そのメリット・デメリットなどについてご紹介します。

個人評価や等級・役職はなし。昇給は会社成長と連動

Ubieにおける「評価しない」の概要は以下の通りです。

概要
個人評価はしない。評価制度もない
等級や役職がない。共同代表の2名以外は全員(前職CTOも外コンパートナーもGoogle統括本部長も)役職なくフラット。「等級が上がる」といった概念もない
・目標はOKRを運用。当然、OKRの結果は評価に使わない
・金銭的報酬は、全社の事業進捗と連動

これをどのように成立させているか説明していきます。

報酬制度:年収よし、SOよし、昇給あり

まず、評価がないとすると給与はどうしているか?という話ですが、報酬関連では以下の制度を運用しています。

・年収水準
まず、基本の給与水準はそこそこ以上です。GoogleやIndeedには及びませんが、一般的なWeb系企業(M3、リクルート、クックパッド等)と比較して遜色ない水準です。スタートアップだからといって特段給与が低いわけではありません。(いつかGoogleとも給与水準で闘えるようになりたいです)

・ストックオプション
そのうえで、全社員がストックオプション(以下SO)を持っています。時価総額を上げる=全社の事業価値向上がメンバー個人にも金銭的に還元されます。
また、オファー時には給与重視プラン・バランスプラン・SO重視プランの3パターンを提示し、本人がライフスタイルなどに合わせて選択しています。
一般論として、スタートアップにおけるSO付与の基準はピンキリです。Ubieでは明確に「事業がこのレベルまでいけば時価総額はこうなる、個人のSO価値はこうなる」と明示しており、その期待値は多くのメンバーが魅力を感じる水準です。ボーナス程度の額ではありません。
ただし前提となる「事業がこのレベルまでいけば」については、もちろん現時点で確実なわけではありません。だからこそ、各メンバーが事業全体に主体性を持っています。

・業績連動昇給制度
さらに最近は、業績連動昇給制度を作りました。評価がないからといって昇給しないわけではありません。
「MRR(Monthly Recurring Revenue,毎月決まって計上される売上)がこの水準までいけば全員の給与がこの程度上がる」という制度です。上場でSOが金銭的価値を持つのを待たずとも、全社の事業成長によって短期的な昇給も実現できます。

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評価がないとサボるような人は採用しない

上述の制度は、全員が当たり前に成果を出していることを前提にしています

頑張った人・成果を出した人が正当に評価されるべき、という考え方はまっとうです。正しいです。ただそれは、頑張っていない人・成果を出さない人がいることを前提にしています。
全員の能力が高く、成果を出していることを前提にできれば、業績次第で給与は全員上げたらいい。これがUbieの考え方です。

この理想論が成立するのは、徹底的な採用基準維持によるものです。
「この人材要件を満たす人しか所属していない。だから背中を預けられる」と相互に信頼できることが重要です。そのために、採用基準維持・向上を徹底しています。(詳しくはこちらの記事の後半を参照)

採用基準の徹底はUbieの制度やカルチャーの根幹を支えているので、今後も万難を排して遂行する所存です。

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「評価しない」のメリット

メリットは、簡単に言うと以下の2つです。

1)事業への集中
評価は私たちにとってとても難しい。正当に評価しようとすると時間がかかりすぎる。評価をやめれば、その時間や心理的コストをユーザーや事業のために使うことができる
2)個別最適の防止
個人評価があると個人や自部署の成果に目が向きやすく、個別最適やサイロ化につながりやすい。評価をやめれば、シンプルに全社の成長に目を向けることができる

一つずつ説明していきます。

1)事業への集中:有能な人材には、生産的な仕事を

この半年でAさんとBさんどちらがどのぐらい仕事出来たか。事業Xと事業Yどっちがどう成果を創出したか。半年前と今で能力の違いはどの程度なのか。これらの差分を精緻に割り出すのは非常に難しいです。
ほかにも、本人の納得感はどうか。中長期の指標から考えて短期の成果をどう評価すべきか。評価制度は会社のカルチャーを増幅させるものになっているか、などなど。評価及び評価制度にまつわる難しさは枚挙にいとまがありません。

評価を行う以上は正当性を追求すべきです。ただ、正当性を追求するのはあまりにも時間的・心理的コストがかかります。特に、Ubieのようにまだメトリクスの蓋然性が証明されていない、イノベーションを生み出そうとしているスタートアップにおいてはなおのこと。3ヶ月前・半年前に設定した目標との整合性や、正確な評価指標の制定に価値を見出すのは困難です。

一度でも評価をする側になった経験がある方は、想像に難くないのではないでしょうか。
時間をかけ心を砕いて評価して、評価会議でメンバーの成果を主張し、それでもメンバー本人に納得してもらえず何度も話し合い、そうこうしている間に数週間が過ぎ、あぁまた開発に時間を使えなかった・・・。
こうした苦悩に苛まれるのは、多くの場合「有能だから昇格したメンバー」です。

Ubieはそうした評価の難しさや過大なコストに正面から取り組むより、「評価せずに組織拡大するにはどうしたらいいか」と考えてきました。有能な人には生産的な仕事を。常識への実直さより、目的へのハックを。これらはUbieの基本的な考え方に基づいています。

AさんとBさんの比較、事業Xと事業Yの比較をやめて、その時間や心理的コストをユーザーや事業のために使える。これが第一のメリットです。

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2)個別最適の防止:「評価されるためのムーブ」はスタートアップに不要

個人評価があると、自分が評価されるための力学が働きます。だからこそ頑張れるなどのメリットもありますが、その「頑張れる」のベクトルは必ずしも個人に向く必要はありません。Ubieでは、各メンバーが個人の評価を気にするより、自然と会社全体に目を向けられるほうがよいと考えています。

個人や事業単位での評価があると、「自分/自分たちの部署が今期いかに素晴らしい成果を出したか」の社内プレゼンテーションが発生します。
それ自体が悪いわけではありません。ただ、社内で比較して自分の部署の素晴らしさを主張したり、そのために局所最適が生まれたりするのは、ユーザーや顧客にとってはさしてメリットがありません
また、「あぁこの人は評価のために自分の成果を大きく見せようとしているな」と感じると、仲間への不信感や、それを評価する組織への不信感につながります。
評価されようとするムーブが短期的な成果を生むことはありますが、中長期的には評価ムーブが本質的な価値を生むことはほとんどありません。

また、Ubieは事業が複数あり、事業間の連携が肝になります。「自分の部署の数字を伸ばそう」などの視点で個別最適が起こると、事業全体の成長速度は遅くなります。
評価を排し、全社成長が個人の報酬につながるようインセンティブ設計しておくことで、会社全体に自然と目線を向けやすくなります。これが2つ目のメリットです。

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デメリット:評価はなくても、目標設定・フィードバック・個人の成長機会は必要

デメリットもあります。評価がない組織においては、目標設定・フィードバック・個人の成長機会などの観点で課題が残ります。
Ubieでは以下のように補っています。

・OKRでの目標設定
目標管理は、OKRを徹底運用しています。特に、最適なチームOKR策定と、チームOKRと全社OKRのアラインメントのために数々の工夫をしています。詳しい説明は別の機会に譲りますが、評価がないからといって目標に困っているメンバーはUbieにはいないと思われます。

・相互フィードバックの機会
評価の意義のひとつに、「フィードバック」があります。Ubieでは評価によるフィードバック機会がないので、昨年より、相互にフィードバックする制度を運用しています。

▼不定期で送られてくるSlack Bot。メンバーを選ぶとフィードバックがもらえます

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※Ubieの課題図書(全社員が読んでいる本)のひとつに「一兆ドルコーチ」があります。ビルって誰?なぜビルがフィードバックするの?と思われた方はぜひ読んでみてください

・WillCanMustの共有
UbieではWillCanMustを共有する文化があります。
まずはWill(何をやりたいか・どうなりたいか)を相互に理解し、そのうえでWillとCanに差分があれば率直にフィードバックします。逆に、Willがなければ、苦手や欠点があってもフィードバックしません。得意不得意のデコボコは誰でもありますが、できるようになりたいと本人が思っていない場合、無理に勧めてもコスパが悪いからです。
その代わり、「MustがあるのにWillもCanもなければ採用する」という考え方を徹底しています。

ほかにもデメリット(?)として、採用がめちゃめちゃ難しくなります。評価に関係なく自律的に成果が出せて、考え方もフィットする人しか採用できないためです。これに関しては、事業と組織を磨き、選んでもらえる会社にし続けるしかありません。

出来る会社もある。Ubieに出来ないだけ

ここまで述べた内容に、反論があるのはよく分かります。いくら正当な評価が難しくても実現出来る会社はあるし、評価のデメリットよりメリットが大きい会社もあります。ただ、Ubieにとっては難しすぎる。Ubieにとっては、評価しない方が評価するより有意義である。だから私たちはやらない。というだけのことです。

Ubieの人材要件は、事業開発やプロダクト開発に特化しています。マネジメントや「誰と誰がどうこう」みたいな話には興味がなく強みもない人がほとんどです。また、(年齢ではなく)マチュアなメンバーが多く、上司からの評価で自己肯定感を高める必要があるメンバーもいません。

「評価を苦手とする人が、評価を必要としない人を評価する」。こうなるとコスパが悪いを通り越して、不毛なのです。

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まとめ

・年収よし、SOよし、昇給ありの報酬制度
・正当な評価は難しすぎる
・有能な人材には、生産的な仕事を
・「評価されるためのムーブ」はスタートアップに不要
・評価はなくても、目標設定・フィードバック・個人の成長機会は必要

以上、評価せず100名規模の組織運営する事例の紹介でした。

最後に、完全なる個人の感想を。
有能で素晴らしいと尊敬するメンバーとだけ、評価する必要なく無条件に信頼して仕事が出来るのは、本当に楽しいです。きれいなオフィスやちょっとした補助とは比べ物にならない最高の福利厚生と感じますし、自分個人の感覚では年収に換算すると400万円分くらいに感じます。(これは主観以外の何者でもなく、根拠はありません。もともと給与水準が低いわけではないので、さらに体感で400万円分くらい幸福度が上がってラッキーという程度の意味です)

評価に疲れてしまった方、評価より事業に集中したい方。
Ubieの組織運営についてもう少し詳しく紹介させてもらえませんか?詳しくはこちらのサイトからご覧ください。カジュアル面談や説明会もあります。

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※この記事においてUbieと呼んでいるのは、事業開発・プロダクト開発を担うDevチームを指しています。スケールを担うUCSチームは、メトリクスもきちんとしていますしマネジメントに強いメンバーもいるので評価制度がきちんと運用されていますチームは、メトリクスもきちんとしていますしマネジメントに強いメンバーもいるので評価制度がきちんと運用されています

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