盛り上がらない時期をあえて盛り上げる「逆張り」戦略?
秋は「食欲の秋」「読書の秋」なんて言われる。
「食欲の秋」はまあ分かる。冬眠する生き物が冬を越すために食べて体内に蓄えておく。そんなことにあやかって「食欲の秋」と呼ばれるようになったのだろう。
だが、「読書の秋」という言葉には少し違和感を覚える。秋になると手は乾燥しやすく、寒さも加わり、日も短くなる。本を読むにはむしろ厳しい季節なのではないかと思ってしまう。今では地球温暖化(地球沸騰化?)の影響で秋も比較的暖かいが、昔はもっと寒さが厳しかったはずだ。そんな環境で本のページをめくるのは、一苦労だったのではないだろうか。
もっとも、現代には電子書籍という便利な選択肢がある。ページをめくる手間も、乾燥する手の問題も解消されている。だが、昔はそういった手段はなかった。秋が読書に最適な季節というのは、むしろ後付けの理由のように感じられる。
これを考えると、「読書の秋」はまるで「ジューンブライド」のようだ。梅雨の時期に結婚式が減るからこそ、結婚式を増やすために作られたのが「ジューンブライド」と言われているように、「読書の秋」も本が売れにくくなる季節に、読書を推奨することで売上を維持しようとする出版社の意図があるのではないかと思う。秋だから読書がしやすい、というよりも、むしろそういった理由で生まれた言葉なのかもしれない。