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『たまりの魅力を深ぼる会』開催しました 

2023年10月に、たまりのつくり手の山川醸造4代目 山川 華奈子さんと、使い手である料理人日本料理一灯 長田勇久料理長と一緒に「たまりの魅力を深ぼる会」を開催しました。だいぶ前になってしまったのですが、おいしい楽しい思い出の備忘録として、レポートをまとめました。

たまりとは?

「たまり」とは、主に愛知・岐阜・三重でつくられ使われている醤油の一種で、一般的に多く使われている「濃口しょうゆ」と比べて色が濃くどろっとして濃厚な味わいです。(詳細はこちらで分かりやすく説明されています)

愛知・岐阜・三重など東海地域では、昔から家庭で「醤油」といえば「たまり」を指しており、日常的に使われてきました。しかし近年は、これらの地域も濃口醤油を使う家庭が増えてきているそうです。

今回「たまりの魅力を次世代に伝えたい」という長田料理長の思いもあり、若手蔵元である山川醸造4代目の山川華奈子さんをゲストに迎え、たまりについてお話しいただきました。

山川醸造さんは岐阜県にあり、木桶でたまりや豆味噌を製造しています。今年で創業80周年。醤油屋さんの中では、歴史が新しい方だとお話されていますが、蔵の中には大きな木桶がずらっと並び醤油の熟成感ある香りが漂っており、歴史と迫力を感じます。

山川さんは、「再び、家庭でたまりを日常の中で使うようになってほしい」
そう願い、たまりの魅力や使い方なども発信されたり、蔵開放を定期的に開催してお客さまと交流を深めたり、新しい切り口の商品を開発などに取り組んでいます。木桶仕込みで昔ながらのていねいなつくりの味わい濃厚なたまりや、ふりかける醤油やもこもこ醤油など新しい形の醤油関連商品も人気で、地元や遠方にもファンがたくさんいらっしゃいます。

会の中では、「たまり」のことだけでなく、濃口や淡口など他の醤油についても分かりやすく解説。蔵見学でも使っている、手作りの桶の模型が色合いまでリアルでわかりやすかったです。細部までのこだわりが木桶仕込みへの愛を感じました。

開催地の愛知にもたまりの蔵がいくつかありますが、桶の大きさ、麹の仕込み方、熟成年数、しぼり方など、各蔵によってこだわりがあり、味わいが異なります。長田さん曰く、蔵人の人柄が表れているとのこと。

当日の料理編では、山川醸造さん含め、約20種類のたまりが登場しました。

たまりを味わおう

料理編では、日頃からたまりを数種類使い分けている長田さんによるたまり会席。たまりを使った昔ながらの郷土料理も取り入れつつ、それぞれのたまりの特徴を活かしたアレンジも。たまりはうま味たっぷりで濃く仕上げるのが得意なイメージですが、味のコントラスト、食感のヘテロ感、を取り入れることで、味わいのバラエティが広がり、新たな一面を知りました。

たまり尽くしのお品書き

●前菜
愛知のたまり盛り合わせ

・たまりジュレ: 南蔵なじみ(十水たまり)  色も比較的赤くおだやかな風味。他の調味料とのバランスもとりやすい。
・エノキ佃煮:はと屋昔たまりで濃い味でしっかり仕上げる。翡翠なすはしろたまりであっさりと。
・コンニャクオランダ煮:ヤマシンさしみたまり 濃厚で甘みもあるのでこっくりと。
・鶏そぼろ:丸又オーガニックたまり しっかりとしたコクで鶏肉を力強く煮上げます。
・卵焼き:しろたまり。卵にはやっぱりしろたまり。卵と出汁の風味を引き立て、色も綺麗に仕上がります。
・うなぎ寿司:中定商店 丸大豆たまり濃搾り うなぎに負けない力強さがあります。


●温物
白と黒のコントラスト

・鮎ときのこのあんかけ茶碗むし
 茶碗蒸しベースにはしろたまりでさっぱりと。あんかけには「和良」であゆだしとうま味をプラス。餡と茶碗蒸しで味の濃淡をつけて、混ぜながら食べることで味わいに飽きがこない工夫。

●刺身 
三種盛り:醤3皿で、原料違いのたまり三種を楽しみながら。

・しろたまり:小麦
・NO SOY TAMARI:えんどう豆
・長良:大豆

●揚物
海老しんじょや季節のお野菜の天ぷら。天つゆか山椒塩をお好みで。
・天つゆ:SAN-JのTAMARI 色も味わいも濃口しょうゆに近くだしの味も引き立ちます。
・山椒塩:山椒の風味も爽やかで、このまま舐めてもお酒が進みます。

●酢の物
・地豆豆腐 茹で地豆(落花生)をペーストにして、胡麻豆腐のように葛を加えて練った豆腐。
・千賀味噌で地豆のたまり煮 大豆がそのまま残る味噌とたまりの中間のような味噌で豆の風味をアップ
・中定商店の十水たまりと南蔵商店の十水たまりで土佐酢 2種類を合わせることでよりコクを増す 

●煮物(三重のたまり)
鰹と豆腐のたまり煮
たまりの使い方として定番の家庭料理、煮物を料亭風にアレンジ。素材に合わせて、味の濃淡をつけるのがポイント。
・鰹は東海醸造の濃厚な底引きたまりでコックリと煮る。
・豆腐は伊勢蔵の丸大豆醤油で少しあっさり目に。


●食事(岐阜のたまり)
釜炊きごはん
鶏の照り焼きは、みのびとみりんでこっくりと焼き、長良を使って炊き込んだご飯の上に乗せて混ぜ合わせる。

●デザート
さつま芋ムース
もこもこ泡醤油(たまりムース)を添えて。塩味とうま味がさつま芋の甘い風味を引き立てます。キャラメルのような味わい。
たまりクッキー 
プレーンのクッキー生地と長良を加えた生地をマーブル状にして、あまじょっぱく。醤油ごまもアクセントにのせて焼き上げました。

【参考】
今回登場した たまり達。長田料理長のコメントともに。

■岐阜県
山川醸造
今回のゲスト、山川醸造さん。
全て木桶仕込み。
 ①「長良」岐阜県産大豆と長良川の伏流水。五分たまりより少しあっさりした十水仕込みです。
②「みのび」脱脂加工大豆と少しの小麦で2年熟成。昔ながらの濃厚なたまり。
③「和良」:「長良」に、清流・長良川の伏流水を使用した鰹と混布の出汁に、長良川産の素焼きの鮎と岐阜県産の干し椎茸を入れ、香りと旨味を引き出した溜つゆ。
④「もこもこ泡醤油」ムース状の泡たまり醤油。
⑤ 「醤油ごま」醤油味の煎りごま。そのままおやつとして食べてもおいしいとお子さんから大人まで人気商品。
⑥「ふりかける醤油 山椒」醤油粕を特別な加工法で塩のようにパラリと仕上げました。山椒をブレンドしており、爽やかで上品な風味も特徴です。

■愛知県武豊町
中定商店さん(左)、南蔵商店さん(右)
五分たまりと十水たまり
武豊町でどちらも木桶で3年造り。
南蔵さんはたまりとしては、あっさりめできれい。
中定さんは濃くてまろやか。
蔵ごとに味わいが違って面白いです。

■三重県
三重も愛知に近い地域でたまり醤油を造ってます。
今回の2蔵はどちらも木桶仕込み。
やはり蔵によって味わいは大きく違います。
生産者の個性もかなり出てます。

左は四日市の伊勢蔵さん
「丸大豆醤油」のラベルですが、たまり醤油。大豆に小麦も加えて1年ほどで造るあっさりタイプです。
 
右は鈴鹿の東海醸造さん
「底引きたまり」一つの木桶で、豆味噌とたまり醤油を一緒に仕込みます。5年近く熟成、木桶の底から引いた、かなり濃厚なたまりです。
 
■愛知県
尾張(知多)と三河(西尾)
右が西尾のはと屋さんの「昔たまり」
原料は大豆と塩。木桶で1年半ほどかけて仕込まれてます。三河の昔ながらの製法。
 真ん中は武豊の丸又商店さんのオーガニックたまり。原料はオーガニック大豆と塩。木桶で2年。オーガニックとグルテンフリーで海外輸出が多いたまり。
左は丸又商店さんの尾張のたまり。国産大豆と塩で3年。濃厚です。

■アメリカ
アメリカで一番売れているたまり醤油。「TAMARI」
soysauceでもshoyuでもなくTAMARIとして、アメリカで広く販売され流通。SAN-Jさんがアメリカで醸造されています。
 
佐藤社長の説明より
有機溜まり(米国産丸大豆、ビオックさん種麹)と、No Soy Tamariです。
No Soyはエンドウ豆を使用した大豆不使用発酵調味料でして、大豆アレルギーの方向けの商品です。勿論大豆不使用なのでJASでは溜まりや醤油とは名乗れません。

佐藤社長より素敵な「タマリマニア」帽を参加者皆さん分プレゼントいただきました!

■愛知県碧南
碧南の白醤油屋さんのたまり
白醤油屋なのにたまり?と、思われるかもしれませんが、碧南ではお馴染みのたまりたちです。JASの分類ではたまりではありませんが、今回は仲間に入れてあげてください。
 
左から2番目 ヤマシンさしみたまり
ヤマシン醸造さんのたまり醤油
令和1年の醤油の鑑評会で農林水産大臣賞を受賞。かなり濃厚で甘味もしっかりついています。
 
一番番左 しろたまり
日東醸造さんのしろたまり。大豆を使わず、国産小麦と塩で仕込んだしろたまり。こだわりの白醤油でありながら、大豆を使わないので醤油の区分から外れてます。昔は、三河では醤油のことを「たまり」と呼んでいたことから、白いたまりで「しろたまり」。

日本料理一灯さんで普段使っているたまりたち。一升瓶です備わっています。


最後はみんなで「タマリマニア」帽子をかぶって記念撮影。
おいしいたのしい時間でした!ご参加くださったみなさまありがとうございました!
参加者皆様分の「タマリマニア」キャップをプレゼントくださったSAN-J佐藤社長にも大感謝です。

たまりの魅力が深まり広がる会となりました。

昼の部
夜の部


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