オススメ映画を紹介するよ! 〈恐怖の村〉シリーズは本当に怖いのか?編
いわゆるJホラーを確立したのが「リング」であることには異論はないですよね。当時原作を読んで怖さは知っていたにも関わらず、映画館で見た時の怖さとラストの絶望感は忘れられません。「リング」の面白さは、怖いだけでなくミステリ的な謎を追っていく部分にもあったと思います。
それのフォロワーでありながら、論理的な
謎解きとは一線を画し、どうやっても逃れられない不条理な呪いを描いたのが「呪怨」でしょうか。清水崇監督はこの後ハリウッド版「JUON」でも監督を担当し、Jホラーを牽引していきます。
その清水崇監督が、〈恐怖の村〉シリーズとして、3本のホラーを送り出しました。ところが、公開当初からレビューサイトなどでは酷評が連発。現在でも「Filmarks」「映画.com」両サイトで全て2点台(5点満点)となっています。
正直自分も敬遠していたのですが、腰を据えて3作品全て鑑賞しました。その上で、本当は怖いのか、ダメ映画なのか、少し考えて見たいと思います。
犬鳴村
主役は三吉彩花。昔からちょっと霊感があるようです。冒頭兄とその彼女が村に行ってしまい、そこから異変が広がっていきます。なかなか主人公の家族は死に至らないのですが、友人など関係の薄い人は次々に不可解に死んでいくことになります。中盤からは奏の血筋の持つ因縁が明かされていきます。説明もほとんどないまま過去と現在が交錯していくのは、清水監督の特徴かもしれません。
結果として、ホラーを見慣れた人にとってはさほど怖くありませんでした。たまにしかホラーを見ない人にとっては、ジャンプスケア的な場面、グロい描写、こっそりそこにいる亡霊など、基本的なポイントは揃っているので、怖がれるのではないでしょうか。それでも怖いという人には、「恐怖回避ばーじょん」というのも存在します。コレはコレでどうなんでしょう。
中盤以降の過去の因縁を説明するところが長く、全体としても編集で短くできたのではないかなあとも思います。個人的にはホラーは90分がぴったりと思っています。ホラーでなくても邦画は長めですよね。
いろいろツッコミどころはありますが、映画として破綻はありません。「すごく怖くて息をもつかせぬホラー」みたいな先入観が無ければ、普通に見られる映画だと思います。
樹海村
実は最初に見たのは「樹海村」です。山田杏奈を見にきました。結論を言ってしまえば、山田杏奈の魅力は発揮できていないと思います。あのフニャッとした笑顔が好きなのですが、割と変わり者のキャラクターで、やっぱりホラーですからあまり笑顔はありません。逆に辛さを全部背負い込んだような存在でした。
「犬鳴村」では血筋がキーとなっていました。「樹海村」では親子(特に母娘)の愛情がテーマです。そしてまた過去と現在が入り混じり、「コトリバコ」の呪いの源が説明されます。
ラスト近くになるとゾンビ的な(ゾンビではない)クリーチャーが現れ、Jホラーの特徴である亡霊や呪いといった忍び寄る恐怖とは違ってきてしまいます。そこを怖がれるかどうか。
そこにいる幽霊、思いがけない死、巻き込まれ呪われる人々など、前作同様「怖っ」と感じる場面はたくさんあります。特に◯を包丁で切るシーンはグロさもあり、身を背けたくなります。パクったわけではないと思いますが、「ダーク・アンド・ウィケッド」にも同じような場面があり、そっちの方が怖かったです。
もっと短くていいのにと思うところも同じです。最初に見たからなのか、編集には少し不満もありました。監督の癖なのか、カットを切り替えるまでが微妙に長かったり。配信者のファンが樹海を捜索するシーンが時系列的にちょっと不自然で分かりづらかったり。この辺りの意図は読み切れませんでした。
逆に2作目として楽しめるのは、シリーズとしての繋がりです。「犬鳴村」で呪われ悲惨な最期を迎えた「明菜」が、配信者「アキナ」として復活。最速で呪われます。大谷凛香が共通して演じています。さらに「犬鳴村」の「りょうたろう」もチラッと登場します。今流行りの「シェアードユニバース」とも言えるでしょうね。続けて見ている人向けのちょっとしたお楽しみでした。
牛首村
最初に触れておくべきなのは、主演のkōki,でしょうか。まず表記が面倒だな。世間的にはゴリ押しと言われているようですが、演技も普通に及第点だし、表情も良いので、ヒロインとして批判される筋合いはないでしょう。ただせっかく主役をもらったのに、その後の出演作品が多くないのは残念です。海外映画の出演があったり仕事を選んでいるようですが、山田杏奈や河合優実など、びっくりするくらい様々な映画に出ている人が結局は売れていくようにも思います。頑張ってほしいですね。(自分何様・・・)
もう一人挙げるならば、芋生悠の残念な使い方です。今回も過去の因縁が呪いを引き起こします。その根源とも言える女性を演じています。コチラも役柄上仕方ないとは言え、芋生悠の魅力を引き出せてはいないと思います。いや、まあそういう役なんだけどね。
3作連続で見ると本当に慣れてきてしまって、恐怖の演出も共通してきます。普通に映り込む何か。落ちる人(清水監督の趣味でしょうか)。グロい死に方。そしてまた巻き込まれ呪われる人。関わっただけで死ぬハメになるのは、「呪怨」っぽさがありますね。そして今回も過去と現在が混じり合っています。因縁のポイントとなるのは「双子」でしょうか。「アキナ」と「りょうたろう」も当然の如く登場します。
〈恐怖の村〉シリーズとして
途中でも触れたように、このシリーズ自体は極限の恐怖を求めたものではないように感じました。宣伝的にはホラーですから、怖さを強調するのは当たり前ですが、監督としては恐怖に振り切った作品を目指しているのではないと思います。共通して時間も長く、力を入れて描写されているのは、その呪いを作り出した過去の因縁です。不幸な境遇に晒された人々の思いが呪いを生み出す。「呪い」という言葉の意味からして当たり前ではありますが、その物語を描きたかったんだろうなあと。そこに血筋とか親子とか双子とか、あえて血のつながりをミックスして、過去と現在は切り離せないものなんだよということを、時間が入り混じった描写も使い表現しているようです。ただそれがホラーとして見た人々のニーズと合っていたのかというと、だいぶ違っていたように思えます。
清水崇監督の作品としては、〈恐怖の森〉シリーズの後継作「忌怪島」、GENERATIONS from EXILE TRIBEが主演した「ミンナノウタ」を既に鑑賞済みです。いずれまた監督の意を探りつつ、ご紹介したいと思います。