東畑開人『ふつうの相談』
悩みに苦しんだり、メンタルの不調に陥ったときに、いきなりカウンセラーと面会したり、精神科に行く人はそれほどいないのではないでしょうか。
家族や友人、職場の同僚や上司など、多様な「ふつうの相談」がカウンセリングの専門家への相談の前に広がっています。
経験知や世間知、現場知などの「ふつうの相談」を分析し、掘り下げることで、カウンセラーや心理療法家による専門知の間に架け橋をかけ、心を治療するということ(ケアやセラピー)を考察し、社会と個人のつながりについて模索する野心的な一冊です。今月は東畑さんのデビュー作『野の医者は笑う』が文庫化されますが、併せて読むと、東畑さんが一貫して追い続けていることがくっきりと浮かび上がってくると思います。
これまでの東畑さんに比べてやや硬い文体で書かれていますが、専門家以外にも開かれている本。特に補遺として置かれた「中断のための十箇条」は若いビジネスマンにぜひ読んで欲しい。