ダミアン・ハーストにみられるネクロフィリアー死をこよなく愛する男ー
ダミアン・ハーストというと、やはり一番目に思い浮かぶのは、サメのホルムアルデヒド漬けですよね。
実際、ハーストはこの作品で大ブレークして、一躍トップアーティストの仲間入りを果たしたわけです。
今回は、このサメのホルムアルデヒド漬けについて、わたしの個人的な感想を書きたいと思います。
わたしがこのホルムアルデヒド漬けのサメを観て感じるのは、ああそうか、この作者はこのサメを死に至るまで支配したいのだなぁということです。
ここで、ネクロフィリアという言葉を紹介したいと思います。
ネクロフィリアとは、ひとことで言うと、「死をこよなく愛する」という意味です。
ダミアン・ハーストの作品をざっと知っている方ならピンとくるのではないでしょうか。
そう、ハーストはかなりのネクロフィリアだと思われます。
ネクロフィリア的な傾向を持つひとは、すべて死んでいるものに惹かれこころ奪われるそうです。
また、ネクロフィリア的な傾向を持つひとにとって、動物含む他者をその死に至るまで完全に支配することが、至上の喜びなのだとか。
ハーストのホルムアルデヒド漬けのサメを観ていると、彼の声が聞こえてくるような気がするのです。
「僕は、この狂暴で強く美しいサメをすべて支配したぞ!!」
という誇らしげな声が。
ちなみに、ユダヤ人心理学者のエーリッヒ・フロムによると、ネクロフィリアは「悪」だとか。
そうだとしたら、ハーストの作品が持つ魔力的な美しさは、悪の魅力であるのかもしれません。
ハーストの作品を「残酷」「グロテスク」と言う人も多いですね。
トップアーティストでありながら、ハーストの作品は賛否両論を巻き起こします。
ちなみに、初老を迎えた現在のハーストはもうネクロフィリアではないのかもしれません。
桜の絵について語っている動画の冒頭で「死は嫌いだ」と言っていました。
確かに、あの桜の絵を見ていると、あのサメのホルムアルデヒド漬けを作った作家と同じ作家とは思えないですよね。
何か心境の変化があったのかもしれません。
こればかりは、作者本人にしか分かりませんね。
彼の死後、美術史家たちがハーストについて調べ上げ、なにかその理由を見つけるかもしれないし、謎のままかもしれません。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?