「ネクタイ事件」で学んだ、本当の問題解決ーポジティブ思考でいこう
※本記事は、2017年11月に書かれた↓の記事のリライトになります
こんにちは。ランサーズの曽根(@hsonetty)です。最近は「#採用やめよう」というキャンペーンを展開して日本社会の価値観に一石を投じていたりもします。
前回からだいぶ間が空いてしまいましたが、シリーズの第6回目、今回からビジネス・ノウハウ編になります(今後、ビジネス・ノウハウ編→事業・戦略編、経営・組織編と続きます)。
ビジネス・ノウハウ編の最初、まずはすべての基礎となる「問題解決」からはじめていきたいと思います。
1. すべての問題解決は、問題の特定から。
「問題解決」とは良くいったものですが、そもそも、「問題」ってなんでしょう?
禅問答みたいに聞こえますが、ビジネスの世界では、問題(=Problem)とは「理想(あるべき姿)と現実(現在時点)とのギャップ」と定義できると思います。
一方で、「そのギャップをどのようにして埋めるか」という意思を伴うものが課題(=Issue)。「問題」というと客観的かつ批判的に聞こえますが、「課題」というと自分ごと化されてグッと主体的になりますね。
たとえば、「どちらにいくべきか?」「何を行うべきか?」「どう進めるべきか?」といった、WHERE, WHAT, HOWといった質問形式にすると、グッと課題としての「迫ってくる感」に変わってきます。
この課題を因数分解して、優先順位をつけて、その中で重要な課題に対して仮説を考え、施策に落として実行する。
これ、言葉で説明すると、とても簡単に聞こえますね。でも、実はこのステップには無数の落とし穴が存在します。
その一つが、「そもそも問題は正しく認識されているのか?」ということ。ともすると、どうしても、「目の前の問題(らしくもの)」という現象に目がいってしまう。
たとえば、「この企業の問題は長時間労働にある!」とメンバーが言っていたとします。 本当ですか?それだけですか?そもそもなぜ長時間労働になっているのですか?
あるいは、「この商品の問題は競合に比べて機能が劣っていることにある!」と言っている商品設計担当者がいたとします。 本当ですか?機能が良ければ売れるのでしょうか?そもそもなぜ競合に比べて機能が劣ってしまっているのでしょうか?
最初に認識・特定された問題が間違ってしまうと、その後のすべての活動・取り組みは無駄になってしまいます。
これからのAI時代において、おそらく、意思決定とならんで、もっとも人間の本質的な洞察が試されるところ。それが「問題の特定」です。
2. 良い課題=本質的選択肢×深い仮説×答えが出せる
安宅和人さんの『イシューからはじめよ』という本をご存知でしょうか? ※すべてのビジネスパーソンにとって必読の書だと思っているので、未読の方はぜひ一読をオススメします。
安宅さんがおっしゃっているのは、問題(=Problem)の特定を見間違い、そこから設定した課題(=Issue)を見極めずに、ただひたすら作業(=Task)をこなすのは、「犬の道」であると。
では、「良い課題」の条件とは何でしょうか? 結論からいうと、本質的な選択肢である、深い仮説がある、答えが出せる、の3つになります。
・本質的な選択肢である:その答えを出すことが、先の方向性に大きく影響を与える
・深い仮説がある:「常識を覆すような気づき」「新しい観点での説明」がある
・答えを出せる:いまの自分の状況・手段で答えを導き出すことができる
わかりづらいと思うので、少しかみくだくと、たとえば↓みたいなイメージです。
「いやぁ、まさにそれ、どうしようか議論してたんだよ。3年後にうちの事業部の営業利益率を10%から15%にするために、あたらしい料金体系にするべきかどうかって。ここ3か月で競合もどんどん新プラン導入してきているしね」(=本質的な選択肢である)
「え?変動的な従量課金モデルから固定的な会員制モデルに変えるべき?でもそれって短期的には利益率下がらない? え?試算すると翌年度には営業利益率はいったん8%に下がるけど、3年後には15%まであがる?そうなの?」(=深い仮説がある)
「でもいくらなんでも変更しすぎじゃない? え?海外ではカテゴリー特化型でこのモデルが流行ってる?そうなの? うちで最近ローンチした新カテゴリーだけ切り出してユーザーテストできるって?開発部長がそう言ってたの? いいね、じゃあすぐやろう!」(=答えが出せる)
ちなみに、安宅さんいわく、世の中の「問題といわれているもの」の98%は単に「気になる問題」であり、「本当に解くべき問題」は2%。そのうち、「答えが出せる」問題はさらにその半分、つまり全体の1%であると。
目をそむけたくなる厳しい内容です。。が、頭にたたきこんでおきたい事実だと思います。
3. 問題解決に必要な心得=”So What?”と”Why So?”
続いては、問題解決に必要な要素について。問題解決のステップについてはすでに述べた通りですが、ではどうやったらそれができるようになるのか。
簡潔に、問題解決の①心得(Mindsets)、②技術(Skillsets)、③方法(Toolsets)、という形で説明していきます。
まずは、①の心得(Mindsets)から。重要なのは、”So What?”と”Why So?”です(日本語で言い換えると、「それで?」と「なんで?」ですね)。たぶん、問題解決において、この心得がもっとも重要だと思います。
特に“SoWhat?”。たとえば、ある企業での新サービス企画の部署での会話を想定してみます。
「インスタ、ほんと最近はやってきてるよね」
「それで?」
「リア充アピールからのインスタ疲れとか出てくるんだろうね」
「それで?」
「じゃあさ、リア充代行サービスとかどう?あ、それか、毎日のご飯をただアップする機能に特化したインスタっぽいやつとかどう?」
それぞれ、全然トーンが違いますよね。つまり、「未来を予測」して自分ごと化するということです。
次に、②の技術(Skillsets)。重要なのは、MECE(ダブリなくモレなく)とフレームワークです。
MECE(Mutally Exclusive, Collectively Exhaustive:ダブりなくモレなく)にものごとを考えるときのコツは、「粒度をそろえる=同じレベルのものを並べる」ということ。「フルーツとミカン、どっちが好きですか?」と聞かないこと。でもビジネスの現場でついつい、これをやってしまうんですよね。。
最後に、③の方法(Toolsets)です。ここで重要なのは、ロジックツリーとピラミッドストラチャです。
ピラミッドストラクチャについてのコツは、結論から伝えるべく、「エレベーターテスト」をたくさんやることです。エレベータで社長とたまたま2人になってしまったと想定して、「今あなたの部署の重要な課題とそれに対する仮説は?」と聞かれて、30秒以内で答える。それをやり続けると、自然と結論を最初に言えるようになってきます。
4. 前向きな思考で、日々ただ実践する。
つらつらと書き連ねてきましたが、最後に一番重要なことを書きます。問題解決をするためには、「問題解決をするんだ」という前向きな思考を持つこと。
当たり前ですよね。そう。でも、この当たり前が重要なんです。
新卒でマッキンゼーに入社して、入社後の5週間の座学でいろいろなインプットをうけて、最後の最後に言われたのは、「PMA=Positive Mental Attitude(めげない気持ち)」が大事ということ。
ここでひとつ、自分の実体験、というか社会人になって最初の大きな(今から見ると小さいこと極まりないですが)失敗体験をご紹介します。
とあるクライアント企業の新規サービスのコンセプトを考えるプロジェクト。僕にとっての実質的に最初のプロジェクトでした。ユーザーニーズを深く知るべく、地方で富裕層向けのインタビュー、特に地場の企業の社長の方々へのインタビューをしていました。
インタビュー場所に向かうタクシーの車中。耳鳴りがするほど暑い、夏の昼さがりのことです。
マネージャー(以下、M)「おい曽根、そろそろ到着するし、ネクタイしめろ」
私(以下、S)「え、あ!ネクタイ!!」
M「お前、その様子、、まさか、忘れたのか?!」
S「はい、すみません!ホテルに忘れました!」
M「お前、どうするんだ!」
S「本当にすみません!帰ります!」
M「・・・」
しばし、沈黙。やがて、マネージャーは語りだします。
M「お前、入社後の研修で、問題解決って習ったよな?」
S「はい、習いました」
M「お前、今言っていることわかってんのか?」
S「・・・」
M「お前が言っていることは、お前が仮にとある会社の社長だったとして、『売上下がりました!すみません!会社辞めます!』と言っているのと同じことだぞ」
S「・・・」
M「何のために研修受けてたんだ!いまからが問題解決だろ!
S「・・・」
M「タクシーの中でネクタイを忘れたことに気づいたという現実。でも社長インタビューを実行したいという理想。さぁ、どうする?今から解決しろ!」
笑えるくらい何も言えず、とにかくタクシーから放り出されて、あたりを駆けずり回りました。
ネクタイを調達しなきゃ。。 どこかで買おう。コンビニで買えるか? (行ってみたら)売ってない。どうしよう?! うーん、、、仕方ない、そうだ、買えないならどこかで借りよう! どこか借りられる場所ないだろうか・・・まわりに店が・・・あった! でもラーメン屋。ネクタイなんてないか・・・ん、店長がネクタイしてる! いいや、なんでもいいからもう、借りよう!!
そうです、僕なりにひねり出した解決策は、「ラーメン店長から、ナルトの柄の入ったネクタイを借りる」というものでした。
必死すぎてよく覚えていませんが、マネージャーは、息を切らせてナルト柄のネクタイを握りしめてタクシーに戻ってきた僕を見て、ちょっとゆがんだ笑顔を見せたと思います。
あとで聞いたのですが、マネージャーは、ポンコツすぎるぼくがネクタイをきっと調達できないことまで想定して、「ランチで新米(=ぼく)がスープをこぼしてネクタイを汚してしまったので、新米はインタビューをネクタイなしで同席させてもらう」という口実を考えていました。
ぼくが設定した課題が「いかに自分がネクタイを調達するか」だったのに対して、マネージャーが設定した課題は「いかに曽根を同席させる形でインタビューを実施するか」。見えている問題もそこから導く課題も違っていた。
この話にはさらに後日談があります(ラーメン店の店長にどうやってネクタイを返したのか、というウブな話もあるのですが、ここでは割愛)。
翌日、マネージャーと、先輩のS氏と、ぼくの3人でまた別のインタビューに向かうタクシーの中でのこと。
M「S、今日、インタビュー対象はAさんだよな?」
S「はい、そうです」
M「たしか、手土産買っておいたよな?」
S「あ、ホテルに忘れました!」
S「(いっさいの間髪入れずに)到着までにまだ時間があるはずなので、近くのデパートで別のものを買います!タクシーの運転手さん、xxまで向かってください!」
M「(満足そうにうなずいてちらっと僕の方を見ている・・・)」
ネクタイ事件(と呼ぶことにします)がなければ、僕にとっては意識することもない、なんてことのない普通の会話だったと思います。
ところが、僕にとって、この一連の流れは、座学での研修とはまるで異なる、しびれるくらいの衝撃が走りました。ああ、これが問題解決か、と。
マジメに受けた研修で「これで問題解決できる!」と勘違いしていた自分。
いざプロジェクトに入って、小さい問題で解決をあきらめていた自分。
より広い俯瞰的な視野で問題をとらえて解決策を考えていたマネージャー。
反射神経に近い形で、瞬時に問題を解決するマインドがしみついた先輩。
問題解決は、あらゆる場面で必要となります。でも、多くの場合、多くの人は、「問題解決しよう」というマインドにはなっていない。もっと言うと、思考停止していることもある。
マッキンゼーの入社研修で安宅さんがおっしゃっていた、「ビジネスにおいて『悩み』などない。あるのは『課題』だけである」という言葉。
「悩む」というのは答えが出ないという前提のもとに考えるフリをふる、「考える」というのは答えが出るという前提のもとに建設的に考えを組み立てる、ということ。心にきざみこんでおきたい言葉だと思います。
今回のポイント
というわけで今回のまとめです。
今回は特に長くなってしまいましたが、最後まで読んでくださった方、ありがとうございます。次回は、今回の話ともつながる部分ありますが、プレゼンについて書きます。
今後も気になる!という方は、良ければぜひフォローしてみてください!
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