冬のエトセトラ
週末まで続くらしいね…!寒波……!!(ハチワレ風)
せっかく寒いので(?)、寒波なんて嫌いよなんて言わずに冬に関する思い出話でも。
ただ「~のエトセトラ」って言い回しをしたかったからとか、そんなんじゃないから。なんかすごい意味深で俗に言う「エモい」感じが出て良いよなぁとか思ったわけじゃないから。
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ウインタースポーツが苦手
雪が降り積もる地域に住んでいたわけではないし、冬のアクティビティ含めたアウトドアな家族じゃなかったので、キャンプもBBQも、大人になってから友人と遊んだり会社の行事でするようになった。だから、炭に火をつける方法も未だによくわかっていない。
初めてスキーをしたのは高校2年生。
3泊4日で北海道に修学旅行へ行き、中日の2日間スキーをした。正直、この時の記憶が全く無いので、よっぽどおもしろくなかったんだろうな。
宿泊したホテルで、女子部屋に転がり込んで夜中までジェンガしてそのグループの女子のことが好きな友達も呼ぼうとしたら本気で嫌がられてて可哀想に思ったことと、どうせ回転寿司でしょ?と舐めてかかった小樽の寿司が美味しすぎたことは鮮明に覚えてるのに。
初めての雪国へ行く前に、ダウンを買った。当時、東野圭吾原作のドラマ「流星の絆」が放映中だったか直後だったかで、戸田恵梨香演じる静奈が着ていた紫のダウンベストが「めっちゃおしゃれやん!!」と思ってウキウキで買って、つい最近まで現役だった。さすがに10年以上着てるとぺったんこ。お気に入りだったんだけどなぁ。
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知らんおっさんをタクシーで帰す
働きはじめてすぐの20代前半、仕事終わり。実家までの最終バスがとっくになくなった金曜日の深夜26:00。確か2月末か3月頭だったと思う。
駅から家まで徒歩で2時間近くかかる道のりの途中。絵に描いたような千鳥足でゆっくり歩く人の姿が前方に。
右へふらふら、左へふらふら。転けそうになりながらゆっくり坂を登っている。ぐんぐんのその人に近づいていくと、スーツ姿のおっさんだとわかった。暗くてはっきりとは見えないが、手には大きな花束を抱えているようだ。
嫌やな、酔っ払い。さっさと通り過ぎよう。
歩くペースを早めて、手を伸ばせば触れそうな距離まで近づいた時、おっさんは道端のフェンスに寄りかかり、花束は潰さないように倒れこんでしまった。
まさか目の前で倒れるとは思わずびっくりしたが、だるい絡み方をされずに済んだと安心し、横目に通り過ぎる。
10mほど進んでからふと気になって後ろを見たが、おっさんは未だに倒れている。まだ夜の冷え込みが厳しい季節。いくら自制できず飲み過ぎた自業自得だからといって、このまま見過ごして寒空に放置してしまうのはさすがに気が引けたので、おっさんのいる場所まで戻り、声をかける。
ー大丈夫?起きてます?
ーウゥーン……大丈夫大丈夫…歩ける………
目を閉じて俯いたままおっさんは答えるが、明らかに大丈夫じゃない。絶対寝る。このままではいけない。
ータクシー呼べる?この辺あんまり通らんから、自分で呼ばな来ぉへんよ?
ー……ちょっと……休むだけやし……大丈夫……
いけない。本当にいけない。ちょっとどころか最悪一生休んでしまうかもしれない。声をかけてしまった手前このまま「気をつけてね。さようなら。」とは言いづらく、タクシーを呼んだ。当時は配車アプリなんてものはなかったので、タクシー会社に電話をする。
空いたタクシーが近くにあったようで、5分ほどで到着するとのこと。
待っている間におっさんの家はどこか聞くと、どうやら僕の家からそんなに遠くないらしい。心配ついでに、一緒に乗って近くまで帰ることにした。
人と会話することで意識が覚醒してきたのか、タクシーに揺られている間におっさんがこうなった経緯を話してくれた。
ー定年で最後の出社やって、社員みんなが送別会開いてくれてな、こんな花束まで貰って、嬉しくて苦手な酒を飲みすぎてしもたんや
酔っているのか、送別会を思い出して泣いているのか、おっさんの水分を含んだ目が街灯にキラキラ光っている。
程なくして、僕の家付近まで帰ってきた。おっさんはすっかり酔いから醒めたのか、あとは自分で帰れるし、代金は払っておくからと降ろして貰った。
ーありがとうな、助かったわ。若いのに気が利くなぁ。今日はめっちゃ良い日やった!もう会社辞めるけど、これ貰っといて!
そう言って名刺を渡された。聞いたことの無い会社の、専務取締役と書いてあった。めっちゃ偉いやんおっさん。
去っていくタクシーを見送ってから家に帰った。
時刻は深夜27時になろうとしている。明かりのないリビングに、僕の分の取り分けられたご飯にラップをが被せてあった。
レンジから出して口に運んだご飯は、いつもよりも少しだけ、暖かく感じられた。