クリスタルライト・イン・L
エルは毎晩、自分が
描いた絵を
メッセージでわたしに
送信してくれる。
エルの描いた絵は
わたしの心の中で、
深く繋がっている。
エルが何を
表現したがっているのか、
わたしには、
すぐわかるのだ。
エルの絵を眺めていると、
気持ちがよくなって
眠たくなる。
暖かい毛布にくるまって、
わたしは暖かい光を孕む
豊かな闇に落ちていく。
犬が居た。
大型のラブラドールに似た
賢そうな犬だ。
犬はわたしを見て笑い、
凄い勢いで走り始める。
まるで、
「僕についてきな」
とでも言わんばかりだ。
わたしは犬を追いかけて
走る。
夢の中では重力がないから
わたしは風に乗って、
飛ぶように走る。
犬の背中を追って
飛んでいたら、
いつの間にかわたしは
遊園地のメリーゴーランドに乗って居た。
ぐるぐる、ぐるぐる
周るメリーゴーランドの先で、空中を茶色い犬が
走りながら飛んでいる。
わたしは笑う。
大笑いしながら、犬の背中を追う。
メリーゴーランドは
次第にスピードを増して、
全ての景色が溶け出して
虹色になる。
頭の中がぐるぐる、
ぐるぐるして、わたしは
息切れする。
その息切れが終わり
どこからともなく湧き出たコップ一杯の水を飲み干したとき、
茶色い犬は、ベージュの
砂丘に変わった。
砂丘にエルが立っている。
わたしを見て微笑んでいる。
今日も楽しそうだね。
一緒にもっと深い世界に行こう。
エルはわたしの手を取る。
わたし達は手の温もりに
身を委ねる。体が次第に溶け出して、幸せなひとつの金色のシャボン玉になっていく。
僕達の故郷に帰ろう。
エルの声が、風にそよいで
小さくなって、
太陽の光に照らされたクリスタルみたいに
キラッと輝いて消えて行った。
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