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そもそも魔王って倒さなきゃ駄目なのか?【第3章 ラスン救済編 19】
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ー???ー
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………ん…
……?……ここは……どこだ?
俺は…死んだのか…?
見渡す限りまっ白な空間だ。周りに何もねぇ…
誰か…!誰か居ないのか!?
おい…!誰でもいい!居るなら返事をしてくれ!
パァァァァァ…!
【上空から神々しい光が降り注いだ!】
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「んもう!そんな大声出さなくても聞こえてるわよん」
「こんにちわ、ご覧の通り天使よん」
本当に誰も居ねぇ……のか…?
「…いやあの、だから居るんだけど」
嘘…だろ…
「えっ、嘘でしょう?」
「どういう事?システムエラー?私がだいぶスピリチュアルな存在だから見えてない?」
「………あ!もしかしたら白い空間に白い衣装だから気付きにくいのかしらねん!」
「スタイリストさ~ん!ちょっとまっ黄っ黄の衣装楽屋にあったでしょう?至急取ってきてん!」
くそ…!こんなところに俺一人で…一体どうしろってんだ…!
「そうこれこれ!……うそ!こんな小さいサイズしかないの!?いやいや無理よん……これじゃお腹出ちゃうわん。恥ずかしい」
「あ、ちょっと聞こえたわよ〜ん?誰かしら今お腹よりもっと気にするとこあるだろって言ったの?私は天使なのよ?言って良いことと悪いことがあるんじゃない?謝って!!」
パァァァァァ…!
【上空から神々しい光が降り注いだ!】
「え!?もう時間!?早くない…!?まだ彼に何も伝えて無いんだけど!本当に!?いいのん!?これじゃ何しに来たか分からないじゃな────っ!!」
シュン…!
【天使は光と共に消え去った!】
……………
よぉ~し……!
「いやよぉ~し…!じゃないわよぉォォ!!」
パァァァァァ…!
【上空から神々しい光が降り注いだ!】
うわ…!?また来た!
「15分延長してもらったわん!」
「それより何がっつりシカト決め込んでるのん!?天使だって言ってるじゃない!」
おい…あんまりふざけんじゃねーぞ。リリアルのお母様、もといバケモン
「誰がバケモンよん!それに私はリリアル・フェザードと何の因果関係もありません!」
「神に仕える天使なの!何度も言わせないで!」
どこまでがネタだ
あんたみてーな存在、この世と天界合わせても二人と居てたまるか
「ラスンの修道院でシスター達を束ねるマザーの事ねん?確かに似てるわよね。私も彼には何故だか妙なシンパシーを感じるわん」
シンパシーも何も全く同じだからな
見た目だけならまだしも何で口調も同じなんだよ。明らかに寄せてんじゃねぇか
「だ~か~らぁ、違うって言ってるでしょう!?」
あ〜あ〜…!もうどっちでもいいよ、めんどくせぇし埒があかねぇ
仕方ねぇから5分だけあんたの悪ふざけに付き合ってやるよ
「誰の何が悪ふざけよ!!こちとら時給840Rのガチで天使やってるのん!」
「天使に幻想を抱いているのか知らないけど愚弄しないで!言っておくけど天国も今人手不足で過半数は小汚いおっさんだからね!?私はまだマシな部類よ!」
マジかよ…知りたくなかった
地獄みたいな天国だな
「地獄みたいな天国って何!?」
「もうやだこの男!泣かされそう……!」
「う、うぅ〜……っ!」
あぁ……泣き顔きったねぇ…
分かった分かった、悪かったよ
んで?テンシサマとやら、いつまでもダラダラくだらねーやり取りもしてらんねぇ。いい加減教えてもらうぞ
ここはどこなんだ?あんたならなんか知ってんだろ?
「────う、オホン…ッ!」
「………ここは貴方の心の中、潜在意識とも言われる空間ねん」
潜在意識?
「ようは貴方の精神の一番深い根幹の部分、それを具現化した場所よん」
精神の…根幹?
あんたと俺以外何もねーけど…
「それは現実世界の貴方が気絶して眠りについているから」
気絶……
あばよ、優秀な人間
……気絶か、よくそれで済んだな…
……!そうだグリルは…?
それにリリアルやウマオさんやシスター達、ラスンの人達もどうなった!?
「慌てないで、大丈夫」
「貴方がバミラと戦ったことにより、村への被害は最小限に留められた」
「その代わりに貴方と貴方の言っているグリルという子はバミラのアジトへ連れていかれてしまったのだけど」
グ、グリルは無事なのか?
「そうがっついて質問攻めしないの、あなたせっかちねん」
「そっちも心配ないわよん。彼も彼で気絶してるけど無事よ」
……そ…そうか…!
良かった…
「まぁ…これからの事はわからないけどねん」
……!…どういう事だ?
「グリルという子は貴方が思っているような普通の魔族の子供じゃない。見た目に反してその体にとてつもない魔力を内包しているわん。下手をしたら世界を脅かしかねないまでのね」
「まぁ…周りの人間はおろか、本人さえもその力に気付いてはいないのだけどん」
ちょ……ちょっと待ってくれ
「はい?」
……理解が追い付かねーよ
あのグリルが?世界を…?
…冗談きついぜ、だってあのグリルだぞ?
「信じる信じないは貴方の自由だけど、これは紛れもない事実よ。今はまだ僅かだけど徐々にその力も開花してきているわん」
「まぁ、こういうのは言って聞かせるより見てもらう方が早いわねん」
「ということで、はいあちらに注目」
ポワン…!
【天使はまっさらな空間に映像を映した!】
『はぁ!?なんだこりゃあ!?』
『なにしたんですかこのガキんちょ!?』
なんだこの映像?あいつらの……?
……つーか
ゴオォォォォォ!!
【辺りが莫大な炎に包まれている!】
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なんだ……これ?火の海じゃねーか………
「わかったかしら?これ全部グリル君の力よ。まだまだほんの一部だけどねん」
「ちなみにグリル君が気を失ったのはこの時よん。自ら生み出した力の負荷に耐えられなくてね」
グタァ……
【グリルは力なく倒れこんでいる!】
グリル……!
なぁ、おっさ……じゃねーや、天……いやおっさん!
「え、怖いわん……何で今間違いに気づきながらあえておっさんで貫き通してきたの?」
「口には気を付けてね。次言ったら貴方天界にお持ち帰りするわよん」
グリルの安否が分からないってのはこういう事か!?あいつ今もこの状態なのか!?
「そう焦らないのん、少し落ち着きなさい」
落ち着いてられるかよ!こんな理屈も分からねぇようなデタラメな力使ってどこが無事だ!
……悪いがあんたと話すことはもう何もねぇ、最後に教えてくれ
ここからどうやったら出れるんだ?
「出れるも何も、ここはあなたの意識そのものだってさっき説明したでしょう?リアルのあなたが目覚めれば自然と現実世界に引き戻されるわよん」
ちっ…!いつになんだよそりゃあ…!
「大体……」
「意識が戻った所で今のあなたに何か出来るの?」
あ?
「バミラとの戦闘による詳細は私の手元にも届いているわん。結果は圧倒的な完敗、惨敗、大敗──」
「仮にあなたがまたバミラに向かって行って勝てる確率は1%にも満たない。………いいえ」
「もっと端的に言えば、100回同じことを繰り返したってそんな見込みはないのん」
「無駄死によ」
………何が言いてーんだよあんた、だから指でも咥えてじっとしてろってか?
そもそもあんたは一体何なんだよ。何が目的でここにいる?
「私がここに来た理由はねん。いわばゲームのコンティニューのようなもの」
コンティニュー……?
「私は天使。まだまだ旅人として未熟な貴方に一度だけチャンスを与えに来たのです」
パァァァァァ…!
【上空から神々しい光が降り注いだ!】
ず〜~〜っと神々しい光が似合わねーな。あんた
「ほっといてん!」
「──良い?もし貴方が再び戦う意思を見せるのなら私が強制的に現実世界の貴方を呼び起こしてあげる。その後の事は保証しないけどねん」
………
「けど貴方が再び負けること、傷付く事を恐れ躊躇うなら別の選択肢を用意してあげるわん」
……選択肢……?
「あ、安心して?このまま死んで生まれ変わるとかそういう事じゃないから、むしろ貴方にとっては朗報よん」
「貴方とグリル君が危険にさらされている今の現状そのものを変えてあげる」
……!
そんなこと出来んのかあんた…?
「天使に不可能はないわん。貴方が望むのなら叶えます」
頼むわ!早速──!
「ただし……聞いて、これからが重要だから」
……?
「リリアル・フェザード」
「これまでの彼女に関する情報は、貴方の記憶から一切無くなるわん」
は…?
「正直この一件は簡単な問題なのよん。私がやろうとしてることは時間遡行、時を巻き戻すだけ」
「つまりリリアル・フェザードとの過度な干渉を避けて貴方の通常の予定通り、冒険者の町まで向かう選択へと再決定をすれば今回の危機は回避することが出来る」
「この選択肢に心当たりはない?」
リリアルと名乗る少女を助ける
モンバルヘ行かなきゃな
………!それは…!
「これをモンバルに向かう選択へ選び直す」
「それで一件落着よん」
………
「全く、冒険を始めた初心者にありがちな話よねん。私から見てもこれは明らかに悪手よ。間違った選択で自らの首を絞めるなんて」
「寄り道以外の何物でもないことなんて、貴方だって気づいていたでしょうに」
「ま、だから今回は特例で私が遣わされたワケだけど、運がいいわ貴方」
…………
………一つ、聞きたいんだが
俺がもしここで選択を選び直してモンバルに向かったら、あいつは……ラスンはどうなる?
「リリアル・フェザードやラスンが辿る末路は知っているけど、あまり聞く事はオススメしないわん。合理的な判断が出来なくなるから」
「あなたの気持ちが分からない訳じゃないの、でも罪悪感なんて感じる必要はないわよん。選び直した後の世界線のあなたはここまでの記憶をどのみち失うわけだから、負い目を引きずることも無い」
「少しだけ立ち止まって考えてみなさい。今この瞬間にも親を亡くし嘆いている者、反対に家族が増え幸せに満ちている者、戦いに勝利しその喜びを仲間と分かち合う者、戦いに敗れ失った仲間を弔う者」
「いつの世も、幸と不幸を混在しながらこの世界は回っている。それが自然の摂理なの」
「あなたにはあなたの、リリアル・フェザードにはリリアル・フェザードの人生がある」
「だからこそ、ここで感情論に身を委ねるのは愚かな選択よん。貴方が旅立った動機も分かっている。グリル君の為でしょう?だったら迷う事なんてないはずよ」
「あなたの小さな手の平じゃ、救える命はあまりにも少ない」
「バミラと戦って、それはあなたが一番痛感しているはずよん」
………
パァァァァァ…!
【上空から神々しい光が降り注いだ!】
『──残り時間、5分です』
「あら、もう?」
「どうやら時間もないみたいねん。さぁ選びなさい」
「通せる保証もない。それでも己の正義を貫くか、再選択をして身の丈に合った無難な道を行くか」
「道は二つに一つ、どちらを選ぶのもあなたの自由よん」
「……身の程を弁えて下さいよ!……村の期待を背負う勇者とはいえ……マサアキさんはまだ駆け出しも駆け出しの冒険者なんすから……!…」
勇者じゃねーよ
それはそうだが、仕方ねぇだろ?
このままじゃあいつはまた、元の場所に戻ってさっきみたいな無防備な真似繰り返すぞ
それでいいのか?
「……お言葉っすけどマサアキさん……よく聞いて考えて下さい……」
「………確かに少し気の毒かもしれない……でもあの子がどこでどうしようが何しようが…」
「それ本当に…あなたのこれからの旅の目的と関係あるっすか?…」
「……優しいだけでは人は救えないんすよ?…」
……………
ははは…ざまぁねぇな俺、結局足を引っ張っちまってるわ
それどころか、庇ってもらって逆に怪我させちまうとか
何しに戻って来たんだって感じだよな
みっともねぇ…
「…みっともないなんて…そんなことはありませんよ…」
え…?
「……マサアキさんも虫けらさんも……私を助ける為に戻って来てくれたのでしょう?…」
………
「……囮作戦という名目から考えるとそれは確かに誉められた事ではありません…その上お二人の戦いぶりは…私が見ていた限りどうしようもない雑魚でした…」
慰めてんのか貶けなしてんのかどっちなんだよ…
「……しかし……それでも私は嬉かったのです…勝ち目の殆どない魔物相手に…あなた方が不恰好になりながらも助けようとしてくれた事が……」
「……魔物を一撃で仕留められるような強い人に助けて貰うよりも…ずっとずっとです…」
……俺は───
────────────
───────
───
パァァァァァ…!
【上空から神々しい光が降り注いだ!】
いい加減見飽きたな……このパァァァァァ言うやつ
他の演出ねぇのかよ
「どういう文句よ。天使の後光だからねこれ?それをこんなふんだんに使ってもらって何を贅沢な…」
「本来はもっとありがたがるべきなのよん?」
つーか、ここ俺の精神世界って言ったよな?あんたが長く居ることで冒されたりしねぇのか?大丈夫?
足ちゃんと洗った?
「天使をバイ菌みたいに扱わないで!」
あ、そうそう天使の足もちゃんと洗っとけよ
「何であなたに辞めさせられなきゃいけないワケ!?……うっ…うぅ〜…!うぅ…ッ!まるで悪い事みたいにぃ〜…!」
泣くなよすぐに…
きたねぇ
「泣く度に汚ないって言うな!本当に憎たらしい…!」
「…まぁいいわ!あなたと関わるのもそろそろ終わりだしねん!」
「……それに、私は天使だから…無理やり言葉数を増やして心を鎮めようとしている貴方の心中を察してあげるわよ」
はは……バレちゃあ世話ねーな
「…その選択に、後悔も迷いもないのね?」
あぁ…
「なるほど…」
「…分かったわ。あなたの願い聞き届けました」
パァァァァァ…!!
【マサアキは淡い光に包まれていく!】
うお…!?なんだこれ…!?
「大丈夫、貴方の望み通りここから出してあげるだけよん」
「それともう一つ、えい」
ドフ…!!
【天使は強い光の玉をマサアキへ打ち込んだ!】
おふ!?な……何しやがるてめぇ…
「餞別よん。目覚めた先で役に立つかもね」
……後の事は保証しないとか言ってなかったか?
「あらそうだったかしらん?まぁ天使は気分屋なの、ラッキー程度に思っておきなさい」
パァァァァ…!
【マサアキを取り巻く光が強くなっていく!】
「じゃあね。機会があったらまた会いましょう」
はっ……縁起でもねぇこと言うんじゃねーよ。こっちは二度と御免だっつの
「これで本当に最後になるけど、何か言い残した事はない?」
……最後…
……いや、あんたが本当に天使だってんなら、どうせこの後の俺の事もどこからか見てんだろ?
だったら、言葉はもういらない
俺の選択が間違いじゃなかったことを証明してくるよ
「ふふ……顔引きつってるわよ?格好つかないわねん」
……気付いても言わないで送り出すのが優しさじゃねぇか?
「あら失礼、じゃあ…」
「二度と会わない事を祈ってるわん」
おう
まぁ、なんだ……色々失礼な事も言ったけど、何やかんや世話んなった
サンキュ……
「マサアキ君!」
……あ?
「ん~~~っちゅ!」
【天使は投げキッスを放った!】
ふ……っ!!
お前ふざけんじゃ────っ!!!
ヒュン…!
【マサアキは光と共に消え去った!】
「ふふ……」
「面白い子……生意気だけど」
Contineu?
このまま続ける ◀︎
やめておく