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そもそも魔王って倒さなきゃ駄目なのか?【第2章 謎のシスター少女編 1】

第1章はこちら



―魔王城 ゼジルの部屋―

ふ~ん♪ふふ~ん♪


シャアァァァァ…!!
【ゼジルは花に水をやっている!】

うむ、今日もいつもと変わらず美しい

いや、昨日より綺麗だと言った方が花も喜ぶかな?むふ…!

この凛とした存在感、是非とも写真に撮っておきたいのだが、きっと美し過ぎるフォルムゆえにカメラのレンズが弾け飛ぶだろう。全く罪深き花達よ


「………ゼジル様…」


ぬ、ビビッド居たのか

どうだお前も、われの自慢の植物達をおがむと良い。どれも手塩てしおにかけて育てたものばかりだ


業火ごうか魔法!マラム!!」

ゴォォォォォ…!!
【花は跡形もなく燃え尽きた!】


ア"ァァァァァァ!!

ビビッド貴様なんのつもりだ!!


「なんのつもりだじゃありません!!人間界の花は育ててはいけないといつも口を酸っぱくして言っているでしょう!!これで20回目ですよ!?何めげずに花を育ててるんですか!」


うぐ、だ…だってほら、我の部屋って殺風景さっぷうけいで寂しいだろう?


せめてお花でもあった方が明るく見えるではないか


「考えられうる最も嫌な答えが返って来た!ちくしょう!」


「別に良いではありませんか!殺風景で!」


ビビッドはセンスがないから、そういうのが気にならないのだろう


「誰のセンスが無いですか!人並みにはありますよ!ただゼジル様の自室には明るみがそぐわないからそう言っているのです!」


勝手に決めるな

我嫌だ殺風景、何か温か味が無くてまるで機械みたいではないか

感性にとぼしい王など王足る器に相応ふさわしくない。そうは思わんか?


「いやだからってニマニマと花をでるのは魔王として違うでしょう!」

「……大体、花を育てたいのなら別に人間界の花でなくともいいでしょうに。魔界にだって花はあるんですから」

「なんなら種でも取り寄せましょうか?」


我あまり魔界の花は好かん。臭いし、デザインが可愛くない


「何女々めめしい事を言っているのです。花は育てた後の実用性が最重要でしょう?見た目なんか二の次ではありませんか」


ビビッドは無神経だからそういうのが気にならないのだろう。我はどうしても駄目だ魔界の花


「さっきからセンスないとか無神経とか何なんですか。ゼジル様私の評価を露骨ろこつに下げようとしていますよね?人一倍感覚には敏感だと自負しています!」


とにかく我はやめないぞ、人間界の花を育てることをやめない。いつか我の育てた花で我の城全てを埋め尽くすのが夢だからな

誰にも邪魔はさせん


「世界征服は!?」


―魔物管理部門植物タイプ 養成所 ―

それでだビビッドよ…

何故こうなるのだ


「人間界の花を忘れて魔界の花を好きになって貰うには、じかに見学して魅力を感じ取って貰うのが手っ取り早いと思ったので」


「ここは数百以上の植物達が管理、調教、育成されている場所なのできっとお気に入りの花が見つかりますよ」


我、魔界の花は好かないと言っただろう

入り口から二歩目で既に臭い、帰る

ガチャガチャ…!
【ゼジルはドアを調べた!】

【しかし鍵がかかっている!】


なっ!?


「あ、言っておきますけど、ここに限らず全ての養成所はオートロックになっていますから一度閉まったら外には出られませんよ?」


なんだと!?ではどうすれば良いのだ!?死ぬのか!?土にかえって奴等の栄養分に!?


「何故そうなるのです…ここにちゃんとマスターキーがあります。大丈夫です」


では早く貸せ!


「ゼジル様すぐ出ちゃうから駄目です」


ぬぅ、ではゆっくり10数えて…


「お風呂と一緒にしないで下さい」

「まずはしっかりフロアを見て回りましょう。普段ゼジル様部屋にこもりっぱなしなんですから、きっと楽しいですよ」

「さぁ行きましょう!」


くそぅ…嫌だ…


「ゼジル様分からない事や質問があったらどんどん聞いてくださいね」


出口はまだか?


「出口って…まだ歩き始めたばかりではありませんか、もっと楽しそうにしてくださいよ」


だってちっとも楽しくない。我が好きなのは人間界の花だ


「人間界の花は忘れて下さい。あれは種族を問わず見ているだけで心を魅了する特異な性質があるんです」

「もし万が一にもそれが我々に働き世界征服の意欲を損なう原因となったら不味いんですよ。分かって頂けますか?」


………


「それに魔界の花にだって見所はたくさんありますよ」

「例えばこちら、スズチョウと言って全身麻痺性の燐粉りんぷんを持った植物です。少し手を加えれば人間を捕獲する罠にも使えます」

スズチョウ

「どうですかゼジル様?」


いや、どうですかの意味がわからんが

「部屋に飾るのにですよ」


嫌に決まっているだろう

そんなもの置いていたら物騒でおちおち寝れもしないではないか

それに地味だ。もっとポップで可愛いのが良い


「魔王の口から聞いたことないんですよ。そんな注文」



「ではこちらは?ツルサキと言って名前の通り自由自在に伸びる長いつるが特徴的な植物です。半径三メートル以内に入るものを無条件で締め殺します。カラーリングもいいし、どうでしょう?」

ツルサキ

お前よくそんなものすすめようと思ったな。本当にポップってだけではないか

無論むろん嫌だ


「う~んそうですか…私は良いと思ったんですけど、寝坊助なゼジル様のためにベッドの隣などに」

我を暗殺でもするつもりか


「まぁ…まだまだたくさんの種類がありますし、ゼジル様のお気に入りをゆっくり探していきましょう」


見つかる気がしないのだが…


「ではもっと奥の方にレッツゴー!」


……帰りたい…


〜To be continued〜

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