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そもそも魔王って倒さなきゃ駄目なのか?【第3章 ラスン救済編 10】

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ーラスン 修道院ー

修道院 玄関





マサアキ    グリル      リリアル
HP 43      HP 40    HP 34
MP 0        MP 9      MP 0
LV.9          LV.7        LV.8



「あ、マザー!この人達です!!扉の前に居たというのは!!」


「なんですってん!?リリちゃん!!リリちゃんは!?」


「……お母様…」


「リリッちゃん…ッ!!なんて姿をして…!?」

「あ…あなた!リリちゃんから今すぐ離れなさい!!さもないと!!」

コオォォォォ…!!
【マザーは力を溜めている!】


いっ!?ちょ…ちょっと待て待て!!

何でいきなり来て力溜めてんだよ!この女装したおっさん!!

落ち着いてくれ!俺たちは決して怪しいもんじゃ…!


「ハァオォォォォ……ッ!」


ハァオォォォォって言ってる!

おいリリアル!


「…お母様違うのです…聞いてください…」


「マザー!!私が後方からサポートします!」


サポートしますじゃねーだろ!止めろよあんたも!!

リリアル!とりあえずお前は降りろ!

このままじゃなんか知らない内に俺が殺られる!!


「…あ…そうですね…」

【マサアキはリリアルを背中からゆっくり降ろした!】


ほら離れたぞ!これでいいだろ!?

少し冷静になれ!


「マザー!リリーがターゲットから離れました!そのまま突撃してください!!」


なおも突撃してくんのかよ!


「好機…!!粉々にしてあげるわん!!」


粉々!?言う通り離れたのに話が全然ちげぇ!



「いきます…!!強化魔法!レインフォース!!」

キィィィン…!
【ノエラはレインフォースを唱えた!】


ビキビキ…!
【マザーの攻撃力が1.5倍になった!】


「ありがとうノエラちゃん!行くわよ不審人物X!!最後に何か言い残すことはないかしらん?」


誤解だって!俺達はこいつに何も……!


「問答無用!!くらいなさい!御加護ラリアット!!(乙女)


ダッ!!
【マザーの攻撃!】

あんた言ってること無茶苦───ごっふぅ…ッ!?


ドゴォォォォォォ!!
【マサアキは修道院の外まで吹き飛ばされた!】

【マサアキは21のダメージを受けた!】



「マ、マサアキさーん!!何するんすかちょっと!あんた!」

「大丈夫かマサアキ!?すげーふっ飛んだな!」



「ふ…脆弱ぜいじゃくもいいところ…」

「他愛もないわねん」


「やりましたねマザー!文句のつけようがない見事な一撃です!」


「えぇ、それよりもリリちゃん!?大丈夫だった!?」

ガバッ…!!
【マザーはリリアルを抱き上げた!】


「…私なら大丈夫ですお母様…降ろしてください…」


「でも、修道服もそんなに汚れて……変なことはされなかったリリー?あの人達は何なのです?まさかくだんの作戦の…?」


「…お客様です…本日ラスンへ訪れたばかりの…」


「え…?お客様ん?」


「…もっと言えば恩人です…私にとっても…ラスンにとっても…」


「恩…人」



「マサアキさんしっかりしてください!あぁ駄目っす…白目剥いて泡吹いちゃってるっす…」


「うはははっ!!ブクブクブク〜って、マサアキがカニだ!カニみたい!」




「えぇっと…マザー…?」


「…………」


「これ、どうしま…す?」


「あぁ〜………私洗濯しなくっちゃ」

「後の事はよろしくねん」


謝れよおい!!



ー修道院 診療所 ー

診療所

【マサアキ、グリル、リリアルは応急処置を受けている!】

【HPが回復した!】


マサアキ    グリル      リリアル
HP 63      HP 53    HP 59
MP 0        MP 9      MP 0
LV.9          LV.7        LV.8


いってて……えらい目に遭った。ちゃんと首ついてんだろうなこれ?


「…申し訳ありませんでしたマサアキさん…大丈夫ですか?…」


あぁ…何とかな……


……えぇ〜と、リリアルの…お母様?

…とノルエちゃんだっけ?


「ノエラと申します!すいません!」


あ、ごめんなさい…

二人とも…もう、顔上げてもらって良いっすよ…


バン!
【マザーとノエラは土下座をしている!】


「……いいや!リリちゃんから詳しい事情は聞いたわん!」

「何でも、リリちゃんが魔物に襲われ、危ないところを助けてもらったらしいわねん!」


「それと希少なアイテムを譲って頂いたとも聞きました!」

「そんな恩人にとんでもない愚行を働いた我々は、神の啓示に背きし咎人とがびとです!どうかお許し下さい!」


「罪滅ぼしになるとも思ってないけど、頭の一つでも踏んでもらって構わないわん!気の済むまで踏んでちょうだい!」

「さぁ!!」


で、出来る訳ないだろ…

何で修道院に招かれて一発目にすることがシスターの頭を踏むことなんだよ


ていうか……

シスター……で良いんだよな?あんた?


「そうねん!いけない!申し遅れました!」

「私はこの修道院の院長兼リリちゃんの母をやらせてもらっている者!この修道院における生活、霊的指導、活動、運営、その他諸々を全て管理させてもらっているわん!」

「気軽にマザーと呼んでくれて良いわよん!」


あ、はは……マザー…


…………なぁ、リリアル


「…はい…何でしょう?…」


お前のお母様って……あの、やっぱりそっち系?


「…まぁ…一般的な解釈で見たらそうなるでしょうね…」


だよな…何ていうか大変?だな

お前がちょっと変わってるのも頷けるよ


「…どういう意味ですかそれは…」


これからも頑張って、強く生きろよ


「…釈然としないエールを送らないでください…」


「うお〜!中、ひろー!いっぱい遊べるとこありそうだな〜!」


【グリルは複数のシスターに手当てをしてもらっている!】

「あの、あまり動かれると包帯が綺麗に巻けません」

「じっとしていないと傷口も開きますよ!」



おい、あんまり騒ぐなグリル

お前もそこそこ傷深いんだから、ちゃんと手当してもらえ


「修道院の中って初めて入ったっすけど、思ったよりみんな自由にしてるし、何というか普通っすね」

「もっと戒律とか厳しくて、重々しい雰囲気なのかと」


「…シスターと言っても…普段から特別変わったことをしているわけではありませんよ…細かい決まりこそあるものの…定期的な祈祷と日常的な村民への奉仕…」

「…この二つが主な活動で…それさえ守れば…特に厳しい制限はありません…食事だって…お酒も飲むし…お肉も食べますよ…」


「へぇ〜、意外っす。実態を見ないと分からないもんすね」


「ふふ…そうでしょうん?先入観の乖離で驚かせることも多々あると思うけど、その時はごめんあそばせ」


いや、多分あんた以上の衝撃はねーよ




「マサアキさんと言ったわねん?言い訳になってしまうかもしれないけど、今私達の村はご覧の通りの惨状でね。それゆえ厳戒体制というか…全体的にピリピリしているのん」

「そこへ皆の反対を押し退け、村の状況を変える為に飛び出して行ったリリちゃんがこんな状態で帰ってきたものだから…思わず我を忘れてしまったわん」

「本当にごめんなさい」


……それに関してはもういいよ。勘違いは誰にでもあるもんだ

余裕ない時って、間違った判断もしがちだしな

気にしないでくれ


「な、何という寛大な心…!」

「あなた……さては良い男ねん!?」


あ、いや全然、クズです俺は


「よく見たら顔も私好み!やだ、余裕なくて間違っちゃいそう!」


ごめんなさい……ごめんなさい……



「マサアキさん、それで…このマギアの結晶も本当に頂いてしまってよろしいのですか?採れたてのようで殆ど傷も付いてないし、相当の値がつくと思われますが…」

マギアの結晶


あぁ、いいよ

そいつはリリアルの戦果でもある。俺達は最初逃げ出しちまってな

色々ある中で、結果的に俺がおいしい所を持っていっただけの話なんだ

遠慮なくもらってくれ


「………マサアキさん…」


いやまぁ…ほぼ事実だしな

それにあんな高価そうなもん、こう言った方が奴らも受け取りやすいだろ


「…ありがとうございます…」


「ありがとう!本当に…本当に助かるわん!」

「あなた達も皆、お礼を言いなさい!」


ザッ
【修道院のシスターは全員一列に並んで頭を下げた!】

「「「「此度いただいたこのご恩は、決して忘れません。あなたに主の祝福がありますよう、心よりお祈りいたします」」」」


お、おぉ……こんだけのシスターに一斉に言われると圧倒されるな

あんたらも、そんなにかしこまんなくていいって

村での暮らし、少しでも良くなるといいな


「「「「…………!」」」」


「は、か、会話!話してしまいました!どうしましょう!」

「違います!あなたと話してません!今のは私に言ったのです」

「いいえ!私と目が合っていました!だから今の発言は私に対してです!」

「ヤバイ人は大抵そう言うのです!自覚した方がいいですよ。すいません握手は可能なのでしょうか?」

「すぐボディタッチに行こうとするあなたの方がヤバイです。破廉恥な、シスターの風上にも置けません」

「ああ神よ…幻惑に囚われし、この哀れなシスター達にどうか聖なる後光でお導きを」

「一人だけシスターっぽく振る舞って点数を稼ごうとしてる性悪がいます!許しません!」


急にキャピキャピ揉め出した!

機械的かと思ったら、案外各々おのおのの主張つえーのな…



「じゃあノエラちゃん、早速そのマギアの結晶を使って依頼できる範囲の傭兵か衛兵を手配してちょうだい!」

「プロにお願いして、バミラとルーボをどうにかしてもらうのよん!」


「了解しました〜!」

【ノエラは診療所を後にした!】


「マサアキさん、お礼と言ったらささやかなんだけど、今日はこの修道院でゆっくりして行って下さいな」

「大したおもてなしも出来ないけどねん。今晩やりくりするだけの備蓄はあるはずだから」


あぁ、お言葉に甘えさせてもらうよ


「え!マサアキ今日はここにお泊まりか!?やったぁー!」


そういうことだ。あんまし迷惑かけん……お前すげーな格好!

【グリルは全身に包帯を装備した!】


「おいらミイラおとこ〜!グオォォ!」


グォォォじゃねーよバカ。あとでちゃんと巻き直してもらえよ




「……………」


ん、どうかしたかリリアル?そんな呆けて


「…あ…いえ…少しだけ…気掛かりなことが…」


気掛かりなこと?


(…マサアキさんから頂いたマギアの結晶は…紛れもなく高価な代物です…今の状態ならば…高くて50万Rルークはするでしょう…)

(…降って湧いた幸運に…一時はどうにかなるかもしれないと…浮かれていた自分も確かにいました…)

(…しかし…バミラもルーボも…力の底は未だしれません…私の見立てでは100万Rを積んで…ようやく安心できるかどうか…)

(…この50万Rで無事に解決できれば良いのですが…)


ビシ…!
【マサアキはリリアルにチョップを放った!】


【リリアルは2のダメージを受けた!】

「…あ…っ…」


一人で難しい顔してんなよ

もしなんか問題が起きたら、そん時にまた皆で考えりゃ良い


「………マサアキさん…」


【シスター達は高揚して盛り上がっている!】

「バミラとルーボがいなくなればお肉ももっと食べられますかね?」

「当たり前じゃないですか!みーんな持って行ってしまうのですから!」

「お肉だけじゃなく、食卓自体もっと豊かになります!」

「ビクビクせずに堂々と商売もできますしね!」

「それに伴い、村の方達との交流も自ずと増えることになるでしょう」

「おかしな話です。最低から普通に戻るだけなのに、ウキウキせずにはいられません!」



「…贅沢をしたいなど思った事はありません…どれだけ貧困だって文句は無かった…誰かのお腹が鳴り…それをまた誰かが笑って…お腹空いたねって言い合える日常さえあれば十分なのに…」

「…そんな些細な幸せを願うのすら…私達には高望みだと言うのですか…」

第2章  8話より



あれが、おまえの望んでた未来の形じゃねぇのか

せっかく取り戻せるかもしれないのに、お前の方から目を瞑っちまってどうすんだよ



「…………はい…」

「……そうですね…危うくこの祝福ムードに水を差してしまう所でした…ありがとうございました…」


ん、まぁ良いってことよ


「マサアキさん達、食事の準備が整ったようだわん!食堂があるから、そちらに移動してもらって良いかしら?」


「ごはん!?ごはんくれんのか!?食べるー!」


【グリルは食堂の方へ飛んで行った!】


あいつ、その状態で行くなっての…!

俺らも行こうぜ、リリアル


「…あ……はいすぐに…」

「…………」

「……皆で考えりゃ良い……ですか…」

「……もしこの窮地を乗り切れたら…私も少しだけ変われる気がします…」

「…そうなったら…皆と共に歩くこと…そろそろ許して頂けますか?……」


「…お母さん……」


〜To be continued〜

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