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「なぜ本を読まないといけないか」には答えられないけど・・・(その2) 【青二才の哲学エッセイ vol.13】

前回からの続き。

私が本をずっと好きでいられた要因として大きく二つ挙げた。一つ目は、いい本に出会えた時にはなんとも言えない「感動」があるということ、二つ目は、本でないと得られない深い知識があると思っているということだ。私にとっては、本を読むことは素晴らしいことである。私がそうだからと言って当然、みんなが本を読むべきであるという結論に至るべきではない。

一つ目に「感動」という娯楽的な側面を挙げたが、こうした感覚になれる本にしょっちゅう出会えるわけではないし、他の娯楽と比べると、文章を読むということ自体慣れていない人にとっては、骨が折れる「作業」と言えるかもしれない。私自身本好きではあるが正直、読み進めてから序盤で「なんかこれつまんないな・・・」ってなることも少なくない。(それなりの値段を出して買ったのに!)お金がもったいないという気持ちはあるが、時間を無駄にするのはもっと嫌なので、面白くなる見込みがないかもと思ったら読むのをやめ、本棚の肥やし、また、部屋のアンティークと化す。そういう時のことを思うと、今は無料や格安で楽しめるコンテンツが世の中に溢れているし、いわゆる「コスパの悪い行動」と言われても致し方ないのかなとも思う。

そして二つ目の「深い知識」であるが、これはある意味「信仰」みたいなものなのかもしれない。本を読むことは良いことなんだという刷り込みをどこかからされた結果から、本には本でしか得られない深い知識があるはずだと思いこんでいるだけかもしれない。それはこれまで過ごした環境、身の回りの人達にも左右される。そもそも、知識の深い浅いってなんなのだろうか。また、知識そのものは本、文章という形になっていなくても得られるのではないだろうかとも思う。知識を得る、はたまた人生を豊かにするための手段はもちろん本だけではない。知り合いから聞く、テレビ、動画を見る、ウェブの記事を読む、セミナーに行くなどある。特にウェブメディアは競争の激化、収益性の向上などから質もどんどん良くなってきているように思う。

それに、私の周りの人達を思い浮かべた時、普段本を読んでいなくとも素晴らしい、尊敬できる人はたくさんいる。前回取り上げた記事の若手起業家もそうなのかなと思う。判断力や行動力に優れ、思慮深く、自分の頭でしっかりと考え、「どこからそんなすごい考えに至ったんだ」というものに到達してしまう人もいる。こういう人たちを見ていると、個人的な意見ではあるが、自分の頭で考えることは、ただ知識を溜め込むよりよっぽど大切なことなのではないだろうか。

本好きな私があえて「別に本を読まなくともいいのではないか?」という懐疑から、考えを進めていくと、本を読まない人たちの気持ちがなんとなくわかるようになった気がするし、本は読まなければならないものだと、どうしても言い切ることはできない。色々考えてみたけれども、やっぱり人生における手段の一つとしか言えない気もする。本を読まない人に対し、「なぜ本を読まないといけないか」に今の私では答えることができない。

それでも、本を読まない人、文章への興味がない人に対しておすすめしたいことがある。それは「書くこと」だ。

私は元々文章を書くことが得意ではない。ただ、こうして文章を書き始めて気づいたことは、文章にしようとなると支離滅裂なことは書こうとは思わないので、あくまで自分の中の話ではあるが、論理的に組み立てて考える力がつく。また、じっくり考えることで、これまで自分が考えていたことが頭の中で整理されるし、記憶の定着も良くなる。何より良いと思うのは、そうして考える中で自分でも思いもよらない言葉が出てくることもあるということだ。誰かに話すことでこうした思いもよらない考えが出てくることもあるし、それでいいのではないかと思う人もいるかもしれない。ただ、誰かと一緒にいる場ではその場の空気に左右されて話せないことだってある。どんなに気の置けない人であれ、無意識のうちにその人に自分の話すことを合わせてしまう。集団になれば場の空気というものができ、特にそれが顕著になる。自分の中で考えるだけなら場の空気や社会の常識に邪魔をされることもない。大袈裟に聞こえるかもしれないが、書くことで「自由」も得られるのではないだろうか。

別に最初から綺麗な文章でなくても構わない。まずは自分がわかればいいのだ。自分の中で考えて、自分の中で論理的な思考が出来上がるならそれでいいと思う。スポーツ選手が日記をつけるシーンをスポーツニュースやドキュメンタリーなどで目にしたりするが、あれはすごくいいと思う。私の場合は机に座ってかしこまって書くのが苦手だし、考えていたことを忘れることもあるので、スマホのメモ帳に書くようにしている。すぐに書けて見返すことも容易なのでおすすめだ。

繰り返しになるが、本や文章を読むこと、そして書くこともそうであるが、あくまで人生を豊かにするためのツールだ。様々な選択肢の中でも本には本の良さがある。他の媒体にはない長所がある。書くという主体的な行為から文章への興味を持ってもらうということも選択肢の一つではないだろうか。読書離れを嘆く人にも同様におすすめしたい。

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