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レバレッジやロスカットの一般論

レバレッジ,必要証拠金,証拠金維持率,ロスカットレベル(ロスカットされる証拠金維持率のこと)などについて,数式を用いると結構スッキリまとめられるので記録しておく.

一般論を書くためには,例によって記法を一般的にしなければならないので,「許容ロット統一理論」でも導入した記法をもう一度導入してから始める.


記法

通貨(currency)に通し番号を付けて,$${{\rm CUR}_i \; (i=1,2,3,\cdots)}$$と表し,通貨$${{\rm CUR}_i}$$の単位を$${\$_i}$$と表すことにする.例えば,$${{\rm CUR}_1={\rm EUR}, {\rm CUR}_2={\rm USD},{\rm CUR}_3={\rm JPY}}$$なら,$${\$_1={\rm E}, \$_2=\$, \$_3=\rm{Y}}$$である(noteの$${\LaTeX}$$でユーロや円の単位を上手く書けないので,ユーロの単位を$${{\rm E}}$$,円の単位を$${{\rm Y}}$$と書いている).

通貨ペア$${{\rm CUR}_1/{\rm CUR}_2}$$について,単位pips当たりのレート(つまり,1pipsが何$${\$_2}$$に相当するか)を$${\delta_{21} [\$_2/\$_1 \cdot {\rm pips}] }$$で表すことにする.また,単位ロット当たりの通貨量を$${ \Delta_1 [\$_1/{\rm Lot}]}$$と表すことにする.例えば,$${{\rm CUR}_1/{\rm CUR}_2={\rm USD}/{\rm JPY}}$$ならば,1pips=0.01円であるから,$${\delta_{21}=0.01 {\rm Y}/\$\cdot {\rm pips}}$$であり,1ロットが1万通貨のFX会社なら$${\Delta_1=10,000 \$/{\rm Lot}}$$である.

最後に,通貨ペア$${{\rm CUR}_1/{\rm CUR}_2}$$の為替レートを$${r_{21}[\$_2/\$_1]}$$と表すことにする.例えば,$${{\rm CUR}_1/{\rm CUR}_2={\rm USD}/{\rm JPY}}$$ならば,$${r_{21}=151.23{\rm Y}/\$}$$などである.当然,$${r_{12}}$$と$${r_{21}}$$の間には$${r_{12}=1/r_{21}}$$という逆数の関係があるし,三つの通貨$${{\rm CUR}_1,{\rm CUR}_2,{\rm CUR}_3}$$の為替レートの間には,$${r_{12}r_{23}=r_{13}}$$などの関係がある.


レバレッジ

FX口座に証拠金(margin)を通貨$${{\rm CUR}_3}$$で$${m [\$_3]}$$入金してある状態で,通貨ペア$${{\rm CUR}_1/{\rm CUR}_2}$$のトレードをする場合を考える.$${\ell [{\rm Lot}]}$$のポジションを持つと仮定すれば,取引レバレッジ(そのトレードのレバレッジ:effective leverage; actual leverage)$${L}$$は,

$$
\begin{align*}{}
L:=\frac{T}{m}
\end{align*}
$$

と定義される.分子の$${T[\$_3]}$$はこのトレードの取引金額であり,このトレードで張るロット数を$${\ell}$$とすると,$${T=\ell \Delta_1 r_{31}[\$_3]=\ell[{\rm Lot}] \times \Delta_1 [\$_1/{\rm Lot}] \times r_{31} [\$_3/\$_1]}$$と計算される量である.最大レバレッジ(maximum leverage)を$${L_M}$$(通常,国内のFX会社なら$${L_M=25}$$)とすると,取引レバレッジが最大レバレッジを超えないという条件$${L \le L_M}$$から,証拠金には下限があることが分かる.

$$
\begin{align*}{}
m\ge m_r := \frac{T}{L_M}.
\end{align*}
$$

この$${m_r}$$を必要証拠金(required margin)という.先ほども述べたように,分子は取引金額であるから,必要証拠金は取引金額を最大レバレッジで割ったものである.例えば,最大レバレッジが25倍のFX会社でドル/円で100万円分の取引をするなら,必要証拠金は4万円となる.


ロスカットレベル

純資産$${m'}$$とは,証拠金に評価損益$${\Delta m}$$(含み益が出ているなら$${\Delta m\geq 0}$$,含み損を抱えているなら$${\Delta m< 0}$$と考える)を加えたものとして定義される.

$$
\begin{align*}{}
m':=m+\Delta m \; [\$_3].
\end{align*}
$$

すると,証拠金維持率(margin level; maintainance margin)$${R}$$が,純資産の必要証拠金に対する割合を百分率で表したものとして定義される.

$$
\begin{align*}{}
R:=\frac{m'}{m_r} \times 100 \; [\%].
\end{align*}
$$

通常,この証拠金維持率がある値$${R'}$$より小さくなると,FX会社によって保有ポジションが自動的に強制決算されるという安全策がとられる.このような決算を(強制)ロスカット(stop-out; margin call level)といい,$${R'}$$をロスカットレベルという.すると,ポジションがロスカットされないための条件$${R>R'}$$から,純資産はある値より大きくなければならないという条件が得られる.

$$
\begin{align*}{}
m'>\frac{T}{L_M} \cdot \frac{R'}{100}=m_r \cdot \frac{R'}{100}. 
\end{align*}
$$

この不等式が破れるとロスカットが発生するから,ロスカットを避けるためには,証拠金$${m}$$を増やす,ポジションを一部決算して保有ロット$${\ell}$$を減らす,最大レバレッジ$${L_M}$$が大きいFX会社を選ぶなどの対策が考えられる.


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