まだまだ夢で、終わらんよっ
それまで好きだったアイドル文化から 邦ロックに嗜好が変わりゆくころ、親友に言われた「けいこと並んで歩きたくない、比べられるから」を皮切りに、わたしはめっきりアイドルや女の子のカルチャーから離れてしまった。
かわいいなんてしょうもない!アイドルなんて!自分で作詞作曲をするわけでもないのに。ただかわいいだけがなんだ。かわいくて何になる!
学校の女子トイレの水道、鏡の前を占領して校則違反の化粧をしている女子に心のなかで舌打ちをして、ゴミ箱からこぼれ落ちたアイシャドウチップを踏みつけて、それを知る由もなく楽しそうなのが悔しくて個室で泣いた日だってあった。
教室で騒ぐ女子に歯向かうように、まいにちすっぴんで真面目に授業を受けて、不安になり泣きながらテスト勉強をして、何食わぬ顔で学年1位を取ったりして、放課後はあそぼうよの誘いを断って、渋谷や下北沢や新宿のライブハウスに逃げ込んで、ロックバンドを浴びるような女の子になっていった。
ひねくれた青春時代。わたしだけの正義を守ることで必死だった。ただでさえ小さい世界のなかで生きていたというのに、その世界すらもを遮断することでわたしは、わたしのかたちを保とうと必死だった。
それでもわたしがいま、アイドルとしてステージに立ち続けてもう5年が経とうとしているのは、その間にわたしを外の世界に連れ出してくれたものがあったからだ。
完璧じゃない女の子が創るストーリーは、わたしがずっと欲しかった煌めきだった。かわいいだけじゃない、それぞれの過去や苦悩をさらけ出してくれていることは、わたしが女の子のカルチャーをもういちど好きになるのには、充分すぎる理由になった。教室に馴染めずにひねくれてしまったわたしのことを、肯定してくれる存在だった。
武道館公演に行くぞと意を決したころに突然訪れた彼女たちの環境の変化とともに、この音楽をうまく聴けなくなってしまったときもあった。
それでもやっぱりわたしは、何故かまたこの音楽に帰ってきてしまう。それはきっと、わたしにとってあまりにも大きな存在だからだ。
わたしは、でんぱ組.incが、好きだ。
でんぱ組.incに出会わなかったら、アイドルが嫌いなまま大人になって、いまステージに立って歌って踊ることさえもなかったかもしれないと、本気で思う。初めてアイドルになった日からきょうまで、そしていつかわたしがステージを降りるその日まで、ひとつのグループに所属し続けることも、無かったかもしれない。
でんぱ組.incが唯一無二なように、きっとSOMOSOMOも唯一無二で、そんなグループに初期メンバーとしていまも居場所があることが、奇跡みたいな宝物だと思う。
SOMOSOMOの発展途上の真っ最中、でんぱ組.incの終わりがわたしたちを震わせた。わたしたちが上を見続けるなか、彼女たちは永遠に、なるらしい。
わたしにもいつか終わりが来るのかな、きっと来るのだけれど、その日までずっと唯一無二で、『SOMOSOMOのツクヨミ ケイコ』を全うしようと思った夜でした。
余談ですが、サムネイルの画像は数年前のわたしの生誕祭で『ORANGE RIUM』をカバーさせていただいたときのお写真。また、いつか、やれたらいいな。