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TITANEという映画を見た感想

でびる様が久しぶりに映画を紹介しており、そのなかで「TITANE」という映画を紹介していた。
そのあらすじと、でびる様の描いたポスターがきれいだから気になり、見にいった。

このnoteでネタバレはもちろんするが、作品を説明しうるものとして機能するのかは怪しい。
最初の一歩を踏み出して、順序を追って最後まで至る。
その手続きを踏んで何を感じるかこそが作品なので、ここで何を書いたとしても、作品を表すものとしてあまり信じないほうがよい。
この映画における圧倒的な映像は、まさに百聞は一見にしかずのものである。

公式サイトのリード文は、以下の通りだ。

>『壊して、生まれる。』
>頭蓋骨に埋め込まれたチタンプレートが引き起こす[突然変異]。
>常識を逸脱した先にある映画の<未来>を受け止められるか。

……文面はなんだかよくわからないが、カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞したすごい作品らしい。
具体的な紹介文は見当たらなかったが、もしかしたらあるのかもしれない。
以下のでびる様の紹介文はわかりやすい。

>RAW~少女の目覚め~監督新作!
>交通事故でチタンプレートを埋め込まれて以来、車に異常な執着を抱くようになってしまった!
>消防士と出会い、なぜか共同生活が始まる!
>めちゃくちゃキツいしめちゃくちゃグロいとの噂
>途中退場したやつも多数とか云々
>おいおい気になるだろうがよ
>一体どんな執着なんだ
>しかもさらに秘密もあるらしい
>なんなんだよ これ以上の秘密は

見たあとの私が一言でいえば「消えては生まれる熱狂のエロ・グロ・ナンセンス」である。

この主人公の女は、交通事故で頭にチタンを埋め込まれた影響で、車に対して異常な執着を持っているようだが、その点にとても共感した。

なぜなら、私の頭にもでびでび・でびるが埋め込まれているからだ。
でびでび・でびるが頭に埋め込まれているから、でびでび・でびるに異常な執着を示す。これはきわめて自然なことのように感じる。
幸いにしてでびでび・でびるは私に、悪魔のささやきがなにであるかを教えてくれているため、私は殺人を犯したことはない。

本当は私の頭にはでびでび・でびるは埋め込まれていないが、こんな文章になってしまうくらいには、頭にチタンが入っただけで車を愛し、金属人間を孕むのは大変ナンセンスでよい。
それが世界の自然な営みであるとすれば、チャージマン研のボルガ博士は爆弾に執着してしまうかもしれない。
そうしたら、わたしたちが博士の異常な愛情を目の当たりにするのはこれで二度目となるはずだ。
ああ、想像するだけで楽しくなってきた。

結局、主人公の女が望んでいたのは力による庇護だったように思う。
消防士の男は主人公の女を戦闘力で制しながらも、なるべく傷つけることなく扱う。
彼女はいつしか、彼を信頼するようになる。
これはなぜか。

彼女は、交通事故によって単純な「力」というものを信奉するようになったからだ。
車がもつ質量とスピードの強さを、彼女はその身に刻み込まれ、自分自身を圧倒的に変えられた。
頭にはチタンを埋め込まれ、リハビリも大変だっただろう。

車の持つあまりに強すぎる力。
これをむしろ受け入れ、愛するようになることは、自然崇拝に似た構造を持っている。
人類ははるか昔から自然に苦しめられてきた。
そうした自分を苦しめるものを崇め奉り、その恩恵にあずかれるように祈念するような行いを彼女が行っていたとしたら。
彼女がモーターショーで、車に触れながらのセクシーなダンスをする点には、ある種呪術的な舞踏(シャーマニズム)の要素を見ることができる。
「車」という科学技術の粋を集めたものへのフェティシズムと、原始の信仰が手をつなぐような、不思議な感覚だ。

彼女はそうした「力のあるもの」としての車に惹かれていたのだ。
車により力の信奉者となった彼女は、自分の身をもって学んだ「力」のかたちをまねる「暴力」に取り付かれ、いとも簡単に短絡的に凶行を繰り返すようになる。
その振る舞いの果てに現れた、消防士の男からの力による庇護。
彼は自分の衰えに恐れながら、主人公の女をペットのネコのようにかわいがりながら、妻(元妻?)に対し高圧的に接する。

こうした彼の振る舞いは旧来的な家父長制か、もしくは彼らの内に存在する絶対的なものを想起させるが、彼女はそうした振る舞いを心待ちにしており、彼がいなければ、彼女が救われることはなかっただろう。

そして彼女は金属の子を出産し、彼は新たな熱狂に身を投じる。
かくして、このグロテスクな構造は連鎖していくのである。

た、たのしぃー!!わっはっは!
この陰惨な物語!生ぬるい地獄!丸尾末広!
ウルトラバイオレンスが起こりそうなとき、どんどんテンションが高まる音楽!
楽しすぎるぜー!

そんな感じで、アングラ感が気持ちいい映画でした。
でびる様の慧眼恐るべしでしたな。

映画好きの悪魔が、悪魔として気になる映画を紹介してくれたり、他にも日常に潜む悪魔の仕業や恋愛相談など、悪魔ならではの視座がたのしめるVTuber、でびでび・でびる様をよろしくお願いいたします。


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