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「楠の並木通り」は大木を誇る様に数十本の楠の木がある。黄昏れに合わせてガス灯のマントルに点火される。私は皺くちゃなトレンチコートに両手を突っ込み背中に影を映して世間に覚めた態度は余り冴えているとは言い難いと独り呟いた
私には少なくとも寂寞感がある。面倒臭いイデオロギーや賤しい藝術を天秤にかける話をしたい訳でも無いが現存する価値には興味がある。
議会制民主主義の危うさは昔から変わらない。人間の本質は権力から無縁であらねばならない。しかしそこに群がる
回想は既に終息した時代に生きている。それは私個人の劣等感と置き換えても良い
生茂る楠の並木通りには昼間の弾ける賑やかさは小鳥達のコミューンの場
私はレストアした自転車でそこをテストコースにする。ある時にはリメイクの良し悪しをロケーションに相応しいか⁈を確かめるべく自分の感性のままレストア自転車を泳がせる
夕暮れの仄暗い頃にはガス灯のマントルに勢いよく火を付ける番人がいた。そこから何かの解放された音が蒼い白い炎と共に「シュゥ-」と放たれる別の意味の素描は得も云えぬステージが別世界で展開されいる。私はそこを歩いている或いは自転車で通るだけで至福な時間になる
ショットバーと云う響きが当時としては新鮮に映っていた時代。私は脚の長い背もたれも無い椅子に不安を感じながら独りでバーボンロックを人差し指でステアーしていた
賑やかな奥のテーブルに5〜6人の素敵な男女グループがいてある意味そこを私は無関係に素通りする場面だ
敢えてそこに再び訪れた時もその様子は前回と同じ記憶のメンバーだった。そこで「気になる存在」を発見した。それは対象としてまたどこかですれ違う様な直観的「素描」を頭の中にイメージし焼き付けた
その「素描」を意識して別のショットバーに出かけたある日。そこは2階にあるステンレスヘアーライン仕上げの分厚いドア。ブラスノブを開けると「ギィ−ギギギィッ−」とその気になる「オノマトペ」とは相まって「ブライアンフェリー」のフレンチポップスの切なげな音に融合した「素描」が眼の前にいたそれは詰まりその
「気になって仕方が無い」ぐらいの「素描」は私と行動パターンが同じである⁈と認識し妙な確信に変換された。当時その店内はひしめき合い混んでいたし座る場所が無いぐらい狭さを感じていた
目の前には目障りで邪魔だけにしか思えない電話がある。そんな眼の前にある様な窮屈な場所に私は仕方なく座った
オーナーはカリスマ的な存在感がありそして皆んなからの人望と信頼が厚い人だった
「オーナーゴメンナサイ」⁈意味不明
と静かに呟く独り言
とは ある意味預言的インスピレーション
私の座るカウンターの眼の前に邪魔な電話あると想いながらいつもの様に独りバーボンロックを人差し指でステアーしながら過ぎて行く時間
それでも右側の瞳に映る⁈気になる対象のその「素描」がかなり飲んでいるように見えていて妙に心配もしていた⁈その最中に私の隣に席が空くやいなや
するとそこに誰かが鎮座し
電話の会話が始まった
「素描が自ら接近してきた」⁈いや違う
記憶を保ちたい想いで瞳のファインダーに納め瞼でシャッターを切った映像ファイルのそれはある意味で素描と気持ちが繋がった瞬間
こんな偶然はそうは無いだろうな。そをな必然性はさらに無い。「素描」の輪郭は未だ何も掴めていない中に有る。黒いフレーム眼鏡がいいと云う程度の事でも無い
眼鏡はその人の雰囲気をガラリと変身させる力があるし人生さえかえてしまう
ガラスのレンズが宝石の様に輝き顔全体が引き締まり知性を帯びる魔法の様な素描に仕上がる可能性を感じさせてくれたり
私もビルの3階にある眼鏡屋に知り合いが居て唯それだけの話だ⁈今どこで何をしているのだろう
ある時期あるお店で仕事していて全員が眼鏡だった時の記憶はさらに口ひげも同じだったと
周囲からすれば誰が誰だか見分けが付かない奇妙過ぎて戸惑いがあったかも
楠の並木通りには昼間の弾ける賑やかさは小鳥達のコミューンの場で有りまた夕暮れの仄暗い頃には蒼白いガス灯のマントルが勢いよく点火された解放音が「シュゥール」に放たれる別の意味の素描は得も云えぬステージが展開されそこを歩いているだけで至福な時間だ
素描を頭の中で想い出し
ガス灯と楠の並木通りに集まる
小鳥と云う天使と重ねみた
mystery