Tortoise-like tenter / 化粧パフができるまで-仕上げ加工編-
弊社、杣長(ソマチョウ)は化粧パフで使用されるビロードを製造している京都の会社。
前回の記事では、ビロード生地の染色・仕上げ加工をおこなう昌和染織を訪れ、染色加工がどのようなものなのか?を紹介した。
今回はその続きとなる、仕上げ加工編をお届けしよう。
仕上げ加工ってなんだ?
仕上げ加工は文字通り、生地を仕上げる最後の工程で、目的は主に2つある。
1つは、パイルの風合いを柔らかくすること。
もう1つは、パイルを毛立ち良い状態にセットすること。
※パイルとは、ビロードの毛の部分のこと
具体的な流れをみていくと、まずは、柔軟剤の入った浴槽に浸かったビロードは、ゆっくりと乾燥機を流れていく。この乾燥機は、ベルトコンベア式で生地の両端をピンで保持しながら送り、熱風で生地を乾燥させていく機械。染色業界ではテンターと呼ばれている。
乾燥速度はカメのような遅さ
このテンターで生地を送る速度は、時速0.5km程度。リクガメは時速0.2-0.5km程度と言われている[1]ので、実にカメのような遅さ。※ちなみに人の歩く速度は時速4km程度
このカメのような遅さで、長さ25mほどの距離を進みながら、ビロードをじっくりと乾燥させていく。
それと同時にパイルもブラシで毛立ちをきれいに保った状態でセットしていく。例えるなら、ドライヤで髪をセットするようなもの。
パイルは高温でセットされるため、洗濯などで水に濡らしても、乾燥すれば再びきれいに立ち上がる。これほどの強力なセット力があるのは、化粧用のパフが基本的にポリエステル製だからということも、加えて記しておきたい。
ビロードの保管・輸送に使われる「フレーム」
このあと、ビロードに欠点が無いか検査をしたのちに、問題なければ、専用のフレーム(下の写真)にセットされる。
このフレームは、ビロード同士の間に隙間が空くように作られている。それは、ビロードがシワの出来やすい繊細な生地のためで、生地同士が擦れたり、パイルが潰れるのを防いでいる。
また、フレームにビロードを巻いていくのは手作業だ。2人がかりでフレームの両側から、生地の張り具合を調整しつつ、両端をフレームの針に引っ掛けていく。
こうして、フレームに巻かれたビロードはパフの縫製を行うメーカーに出荷され、晴れてパフとなり、皆様の手に届くこととなる。
最後に
さて、2回に渡りビロードの染色加工と仕上げ加工がどのようなものなのか?を紹介させて頂いた。
染色加工編では一日をかけて洗い続け、仕上げ加工編ではカメのような遅さでゆっくりと乾燥させていく、というとても手間暇がかかる素材としてビロードを紹介した。
パフは、ブラシなどの化粧道具と較べるとスポットライトが当たりにくいように思う。しかし、もしお手持ちのパフがあれば、この記事を読んで、大事に使っていただく機会となれば幸いだ。
最後になりましたが、染色・仕上げ加工方法について機密があるなかで、情報の提供及び、工場写真の撮影許可を下さった昌和染織様にも感謝申し上げます。
脚注
[1] Tortoise (5 June 2024, at 16:20 UTC). In Wikipedia: The Free Encyclopedia.
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