亀
昨日11年飼っていた亀が天国へ旅立った。
最期は、いつも日向ぼっこをしている置き石の上で眠っているかのような姿をしていた。
天命だったのだ、と思いたい。
うちの亀の名はカメナシと言う。出会いは大学2年の冬。ペットショップの水槽で彼を選んだ。
自慢ではないが、毎日のえさやりを欠かしたことは無かった、はずだ。早番で朝4時起きの日であっても毎日10粒エサをあげていた。この量が適量だと信じていた。水槽の中の水が汚れていたら、小まめに替えるようにもしていた。だから世話を怠ることは無かったのだと思う。
この亀を飼う、という行為から学んだことは、何かを育てるということは都合の良いことばかりではないよ、ということだ。可愛いから愛でる、だけでなく餌やりを忘れていないか常に気にかけなくてはいけないし、水が汚れたら都度替えなくてはならない。当然、代わりに誰もやってくれない。
この亀が自分に与えてくれたものは、自分はどんなに多忙でも亀一匹のことを気にかけられる人間であるという証明だ。11年の間、自分以外の生き物の存在を考え感じ続けられた日々は幸せ以外の何物でも無かった。