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吉里吉里人

先日吉里吉里人を読み終えました。860ページにも渡る大作を読み終えるのに大変時間がかかりました。ですが、こうして読み終えた今、この本を読むことに時間を費やしたことに対して充実感を感じています。
<blockquote class="twitter-tweet"><p lang="ja" dir="ltr">「吉里吉里人」を読了。簡潔に言うと東北の農村が独立国家を打ち立てて日本国家に立ち向かうという話。日本が従来持っている農業、医療、法律などを駆使すれば十分世界に通用するポテンシャルがあるという痛烈なメッセージを感じる本。こう書くと堅苦しいが、意外にも笑える場面が多くあり読みやすい。 <a href="https://t.co/sGGUEBJ2kj">pic.twitter.com/sGGUEBJ2kj</a></p>&mdash; たけけん (@shibainu2030) <a href="https://twitter.com/shibainu2030/status/1592477739868884994?ref_src=twsrc%5Etfw">November 15, 2022</a></blockquote> <script async src="https://platform.twitter.com/widgets.js" charset="utf-8"></script>

先日Twitterにてこの本の感想を書いたのですが、140字だと語り落としがあると感じました。なので、このnoteにてTwitterには書ききれなかった部分について書き足していきたいと思います。

この作品は、Twitterにも書いたように日本の農業や医療などの分野に対し作者が強い問題意識を持っています。しかし、井上ひさしさんの素晴らしいところは文学作品の中で現実の問題に対し解決策を提示していることです。具体的には、

農業→農家として働いていると田舎者として(都会の人に)馬鹿にされがちだが、実際は自給自足をすることができる素晴らしい職業だ。日本の食糧自給率は40%を切っているのだから自給自足ができるのは素晴らしいことだ。

医療→日本の医者は親が医者である人が世襲制的に引き継ぐことが多い。その為本人は医者になる気がなくても親がお金を大量に継ぎ込んで医大に入れ、又医師になる為の国家試験も一発合格でなくても良いので何度でも受験ができる。その為他の国に比べると医者になりやすい国だと言える。その点医師免許を持っていないニセ医者の方が、無免許で捕まるリスクを侵してまで医者になっている時点で仕事に対する熱意があり夜間の診療も厭わない。つまりやる気があるということだ。吉里吉里国では試験に受かりさえすれば積極的にニセ医者も医師として採用している。

(※上記の文章は1980年代に作品の中で書かれていた表現であり賛否両論があると思われます。読んでいて不快な思いをされた方が居たら申し訳ありません。又、農業に関する項目は解決策と呼ぶには弱いような気がしますが敢えて訂正はしないでおきます。すいません。)

以上のような大胆な提案をされています。もちろんこれらはあくまで一例に過ぎません。800ページ以上に渡る大作である本作は、日本の現状に対して本当に様々な問題を突き付けています。それらの欠陥を東北の小さな農村が独立国家として立ち上がるという形を通して新しい仕組みを作り補填していく、というところが非常に斬新だと感じました。

私は現状の政治に嫌気が差し代わりに自分達で国家を立ち上げるという話をいくつか知っています。例えば、坂口恭平さんの「独立国家の作り方」という本やジョン・レノンが自分達の理想とする国を作ろうとしたというエピソードなどです。それはそれとして素晴らしい取り組みだったのではないかと思います。しかしながら、井上ひさしさんの吉里吉里人という作品は圧倒的に新しい国家の可能性を提示していると思います。あくまで小説の中の話でしかないですが、きちんと現実を把握し真剣に問題を解決しようとした姿勢が感じられます。私はこの本を、一人でも多くの、できれば私と同じような悩める若い人達に読んでもらいたいと思います。そしてこの本を読んだ方と感想を語り合う日がいつか訪れてほしいと願っています。長くなりましたが、以上が吉里吉里人を読んだ感想となります。最後までこの記事を読んで下さった方、本当にありがとうございます。





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