憧れのル・コルビュジェに会いに行く旅。
ひとりおでかけのうち、半数は建物めぐりをしている。
建築系の出身でもなく、専門知識もないので大したことを語ることもできないけれど、なぜか建物を見ることやその空間にいることが大好き。
1番好きな建築家は、近代建築の三大巨匠のひとり、ル・コルビュジェ。
大学時代の授業で彼の作品が紹介されていて、「住宅は住むための機械である」という合理的な考え方にすっかり魅了された。2016年には、東京都の国立西洋美術館を含む、世界中に点在する17の建築物が世界文化遺産に登録された。
「近代建築の5原則」が詰まったサヴォア邸に行きたいと思い続け、数年前に念願かなって、フランスのポワジーへ旅をした。
パリ市内から電車とバスを乗り継いで約1時間。門から緑に囲まれた遊歩道を抜けた空間に姿を現したサヴォア邸(villa Savoye)。90年近く前の建築とは思えない現代的な美しさ。柱、床、階段を骨組みとした建築手法、鉄筋コンクリートによる華美な装飾がないシンプルで滑らかな壁面、合理性を重視したモダニズム建築。いまや見慣れたこの形が、ル・コルビュジェなくしては成立していなかったと思うと、その存在の大きさは計り知れない。
コロナ禍が明けてまた海外の旅が出来るようになり、つい最近、晩年の傑作のひとつであるロンシャンの礼拝堂(Chapelle Notre-Dame-du-Haut de Ronchamp)への旅が実現した。
うねるような曲線美の屋根に、不揃いなステンドグラス様から差し込む神々しい光と、白いコンクリートのコントラスト。宗教建築として圧倒的な革新性(現代においても)に、芸術家としてのル・コルビュジェを感じた。この日は地元のミサが行われていて、中世から礼拝堂があったこの丘が、キリスト教の聖地として巡礼されてきた歴史を感じた。
この先もきっとル・コルビュジェ巡礼を続けていくのだけれど、必ず行きたいと思っているのは、終の棲家となった、カップマルタンの休暇小屋だ。人間の暮らしの本質が詰め込まれている簡素な「究極の狭小住宅」とも言えるこの空間を、人生の最後の場所に選んだ彼の思いに、いつか触れたいと思っている。
礼拝堂と同じ敷地内に、イタリア人建築家のレンゾ・ピアノが設計した修道院がある。彼の作品では、サヴォア邸の旅の途中で立ち寄ったパリのポンピドゥーセンター、ニューヨークのホイットニー美術館を訪ねたことがある。24年冬から、日本でも東京海上ビルディングのプロジェクトが着工するらしく、完成が待ち遠しい。
ちなみに、バーゼル空港のラウンジにはル・コルビュジェがデザインしたLC2ソファをはじめ、Zanottaのラウンジチェアなど、高級な名作家具がずらり。ずっとここにいたい…と思わずため息が出た。