絶景温泉200#15【峰温泉の大噴湯と河津桜】
新しくスタートした連載「絶景温泉200」。著書『絶景温泉100』(幻冬舎)で取り上げた温泉に加えて、さらに100の絶景温泉を順次紹介していこうという企画である。
第15回は、峰温泉・大噴湯と河津桜(静岡県)。
「今年も河津桜が開花しました」
東京に住んでいたとき、伊豆の桜のニュースが流れてくると、心が躍ったものである。長い冬が終わり、春がそこまで近づいている証拠だったからだ。春の気配を先取りしようと、これまで5回ほど河津桜を見に出かけた記憶がある。
河津桜といえば、東伊豆の河津町を中心に分布する早咲きの桜である。河津川の両岸に3キロにわたって、河津桜が一直線に並ぶ景色で有名である。
ソメイヨシノよりもピンク色が濃いのが印象的だ。まだ寒い季節に花を咲かせる桜だからだろうか、どことなく力強さを感じさせる。河津桜の下には菜の花も植えられており、ピンクと黄色の鮮やかなコントラストが美しい。
川の土手を上流から下流に向かって歩く。河津桜は土手を包み込むように枝をのばしているので、空を見上げても桜の花がいっぱい。まるで桜のトンネルである。絶景なり。
地球上の多くの生物がそうであるように、春の気配を感じると、途端に体に力がみなぎってくるものだ。
とくに満開の時期は見事である。ひと足早く春の訪れを告げる河津桜まつりは、例年2月上旬~3月上旬にかけて開催される(今年は2年ぶりに開催されている)。
河津桜を見に訪れたら、会場近くにある「峰温泉大噴湯公園」まで足を延ばしたい。河津は温泉資源が豊富な土地でもある。なかでも峰温泉は河川敷から歩ける距離で、まつり会場から最も近い温泉地である。数軒の宿と「踊り子温泉会館」という日帰り入浴施設で構成される。
峰温泉の開湯は奈良時代までさかのぼると伝わる。当時は「花田の湯」と呼ばれたが、その後荒廃したという。それからしばらく経ち、大正11年に伝説の「花田の湯」を復興すべく、この地に住む稲葉時太郎が温泉採掘に取り組むと、100℃の温泉が噴出し、その熱泉は50メートルの高さまで達したという。大正15年のことである。
この自噴泉は、それ以来一度も絶えることなく噴き上がり続けている。すさまじい温泉パワーである。ただ、現在ではまわりのへの影響を考慮して、噴き上げの時間と量を人工的に絞っているという。
峰温泉大噴湯公園(入場無料)では、1日7回、高さ30メートルに達する湯の噴き上げを見学することができる。
50メートルに達する本来の自噴を拝みたいところだが、そのまま噴き出したままにするわけにもいかないから仕方ない。
時間になると、ドドドドッとすさまじい音を立てながら熱湯が噴き出す。見上げると、上空に舞い上がった湯しぶきに太陽光があたり、虹があらわれた。これぞ温泉がつくりだす芸術である。桜もいいが、温泉もいい。
自噴泉1分ほどで噴き上げは終了するが、これほどの勢いで湯が自噴している光景は、他ではなかなか見られない。「東洋一を誇る大噴湯」と謳われてきたのも、あながち大げさではない。
峰温泉に宿泊するなら、公園の隣にある玉峰館がおすすめ。峰温泉が噴出した大正15年創業の老舗だが、今は和モダンの宿として高級路線を歩む。
少々値は張るが、伊豆の旬の食材を活かした料理は美味で、温泉はかけ流し。料金に見合う価値を体験できる。
※トップの写真は、河津町役場の公式サイトからお借りしました
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