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血みどろ肉体ホラー映画 『The Substance』 デミ ムーアが怪演!!!

映画館でチケットを受け取る際「あなたた達、大丈夫? これスプラッターよ。たくさんの人が途中で出ていったわよっ!」という警告を受付の人からもらった。

「タランティーノみたいな感じ?」と夫。受付の人、「それより、もっとよ?」どうもこの女性は観たらしい。

「えっ、そうですか」、と言いながら、私はウキウキ、ワクワク。

さて、期待を裏切らなかったこの映画、確かにスプラッターではあるけど、ブラックコメディとも言えるかも? 前のクローネンバーグより、好きだし面白かったので紹介。


あらすじ(ネタバレあり)


デミ・ムーア演じるエリザベス スパークルは元映画スター。現在はTVのワークアウトショー番組のメイン。そして彼女は50歳の誕生日になった。

彼女の誕生日に、プロデューサーのハーヴェイ(Dennis Quaid)はエリザベスに仕事の解雇を言い渡した。

「視聴者は何か新しいことを常に求めているんだ。避けられない。50歳で終わりだ」(ニコッ)

失意の中の彼女に届いた黒い封筒。

そこには、もっと若く、もっと美しい完璧なあなたになりませんか、と。

一瞬悩んだエリザベスだが、電話して指示された住所へ行き、一つのDIYクローンキットが入った箱を受けとった。

彼女は指示されていた通り、身体の中に液体を注射すると、体から新しいバージョンのもっと優れた彼女が背中から生み出された。

彼女は二人になった。クローンの誕生である。クローンは昏睡している、エリザベスの背中を縫い付ける。

声が聞こえる。忘れないで、あなたは一人なのだと。

   REMEMBER, YOU ARE ONE. YOU CAN'T ESCAPE YOURSELF.
      DON'T FOGET YOU MUST SWICH EVERY 7 DAYS.


昏睡している間は栄養チューブで生かされる。もう片方は自由に動き回れる。

一週間ごとに自分と新しいクローンの自分との入れ替えの日々が始まる。

それをきちんとしないと、体に重要な影響が起きる。

新しいバージョンの彼女は、スーという。Margaret Qualleyが演じる。

キラキラな顔とボディで、すこぶる魅力的だ。ピンクのシャドーがゴージャス。

スーはエリザベスが予想したより可愛く野心家で、あっという間に、彼女が元やっていたエアロビクスのワークアウトショーの後釜を射止め、その後も快進。年末のキャスターに選ばれる。

スーはもはや天にでも登る勢いでキャリアを積み出す。
自分の時間を伸ばすため、エリザベスへスイッチする時間を遅らせ、暗い部屋で昏睡しているエリザベスから彼女の若さを注射で吸い取り自分の体へ入れる。エリザベスの体の部分部分の老化が急激に始まる。

そして年末の大きな仕事の直前に、エリザベスとスイッチしないとダメな状況に追い込まれたスーは、一度しか許されてない、はじめの液体を自分の体にもう一度入れて、もう一人の自分を作ろうとする。

生まれて来たもの。

それは、、、見たことがないようなモンスター。
その姿で、テレビに出演する名前さえないモンスター……。

それを見た、観客の悲鳴。
モンスターはどこへ?

デミ ムーアが大変貌


40歳の時、人目を気にせず全身整形をして人々の大きな反響を呼んだデミ ムーア。

若さと美しさに特にこだわるデミームーアが、「The Substance」で若さと美しさに完璧にこだわる役を演じる。

デミ ムーアのその過去を元から知っていた人からするとデミ・ムーア、これにでるの???? すごい〜、である。彼女の人生の物語に似すぎていない?

この数年彼女は大きな映画などで見かけない。話題として彼女が出てくるのは元夫のブルース ウイルスが前頭側頭型認知症で彼女も介護しているというくらい。

だからこの映画に彼女が出るということで、デミ ムーアの名前を知ってる人なら一目でもいいから見なくてはとその気にさせらる。(視聴者、観客は常に残酷なものだ。私も含めて)

この役はデミ・ムーアだと思いついた監督は、コラリー・ファージェ
フランス人の女性監督、頭がいい! 

ただ、あまりのボディホラーである為、彼女に決めるまで6度ほども会い、お互いの不一致がないことを確かめた。とても慎重だ。

監督は「彼女はすべてを見せなければなりませんでした。彼女の体だけでなく、恐怖や不安も」といろいろなインタビュー記事で語る。

確かに、観客はエアロビのワークショーをしている50歳という設定のデミ ムーアの裸体を何度も見た。(実際は61歳の時)、
老婆になった彼女、
モンスターになった彼女。
そしてその不安、嫉妬、恐怖感を感じた。

それは、観客としての私にとっても不思議な感覚だ。フィクションなのに、なんだか他人事ではない

私にも、誰にも、老化は毎日襲ってきているので、ある程度をすぎた大人なら、デミ ムーア演じるエリザベスにとても共感してしまう。

(その液体サブスアンスを入れるか入れないかは、個人によるが)

私的には受賞歴も少ないデミ ムーアなのだけど、この映画でぜひアカデミーで主演女優賞を獲って欲しいと思う。

体を張った演技という言葉がよく使われるけど、まさに、そのとおり。ここまで体を張ってという役はないだろう。そして、それをデミ ムーアは恐ろしいほど上手くやったと思う、心も使って。


↑ アメリカのトークショーから解説↓


ワークアウトショーの役作りはジェーン・フォンダのエアロビクスビデオなどがお手本。

デミ ムーアが感じた一番ひどい暴力シーンは、デニスがシュリンプを4ポンド(2キロ近い)食べながらパワハラをするシーン

最後に若いアクターに何か言えることは、という質問に対しては

「OK。あなたは失敗してもいいのよ。もし自分に何か起こったら、ダメだ、やばいじゃなくて、それをどう使えるかを考えて」と。

そこにいた全員が喝采。彼女は多くの人が考えていたより、進歩してよりパワフルになっていた。👏

Pretty girl is always smile /ルッキズムとホラー



この映画の中のハリウットのプロデューサーHarvey役を、Dennis Quaid演じる。ものすごいハマり役だ。

ハーヴェイはまさに社会の有り様を表す。パワハラに、ルッキズムの王国の番人、ハーヴェイ。

ハーヴェイが、『可愛い女の子は常に笑顔でいなければなりません』とスーにスマイルを求めるシーンがある。そして、番組のスポンサーたちと思われる高齢男性陣をひき連れてスマイル、スマイルと連呼する。

キャスト側からの視線で見るとこのシーンは実際にかなりのリアルホラーに違いない。これは監督が表したかったもう一つのホラーだ。

若くて可愛い女性がルッキズムが必要とされ、若さを保つという不健在なことに一番振り回される人が多いのがハリウッド。

そこに、なんとか対応しようと頑張ってきたことはデミ ムーアだけではなく、その昔のジェーン フォンダ、ハリウッドの多くの役者が体験してきたことである。

行き過ぎた、ルッキズムと若さ信仰、どこの世界もこのままこれが続くのだとしたら、本当にホラーである。

アイデンティティ「Remember you are one」、 

DIYで自分のクローン作り 笑

さてさて、自分とはなんだろう? 
もし、ここがハリウッドでなければ、
エリザベス スパークルは、スーになる必要がなかったのだろうか?

いやいや、状況が変わってもそれはわからない。
老化は世界にいる誰にも訪れる。一般人の私でさえ気になるんだから、多くの人が気になるだろう。(ここでは老化を受け入れようという大人の話はしてない……)

近未来になり、DIYで自分でやるのではなく、病院で、新しい自分を作りませんか? とこのような液体サブスタンスを買うのを勧められたら、

拒める人はいるのだろうか?

それこそ、待ちに待ってる人はたくさんいるのではないか。

ただ、やはりそうなると、ドッペルゲンガーとしてもう一人の自分が生まれるのだろう。 

スーのような野心的で、元の私の若さを吸い取る吸血鬼のような存在かもしれない。

あえて言うとそれは、自分なのだろうか? 

REMEMBER, YOU ARE ONE 確かに遺伝子的にはそうなのだろうが、、、、。

若返りを求める人が増え続け、それに多額投資されている中

クローンの自分が産み出されるのか、

あるいは自分自身の体が若返る方向へ変身するのか、

老化予防深掘り。研究は二つの方向で進められているようだ。(下参照)


すでに老化予防なる薬は産み出されているが(マウスでテスト)、まだ未完成。若さの過剰摂取をすると、あっという間に死んでしまうのだ。↓ 

コロナをきっかけにしてmRNAが解禁になったので、おそらく遺伝子治療だというよりは、老化予防がどんどん進むのは確かだ

老化しない私、を見てみたい気もするけど、それは20歳くらいの若い時に受けるべきであり、ほぼ還暦の私はこちらの映画にあるようなクローン系のもう一人の私という、怪物を扱わなければいけないことになりそうだ。

そうなると、また倫理的な問題や、もう一人の私との付き合いは、どういうものなんだろうというのが気になりだす。

自分を裏切るスーのような自分(クローン)が出てくるのか、誰でも心配だ。

映画を通じて何を語るか?


コラリー・ファージェ監督がデヴィッド・クローネンバーグやジョン・カーペンターのようなジャンルの巨匠の流れを汲むホラー映画に優れていることは紛れもない。

ただ彼女はそこにフェミニズムを入れ込んで、社会にコメントをしているのが面白い。

彼女が得意な暴力と、ホラー、近未来というジャンルは魅力的なので、視聴者も押しつけられた感じがなく二次的なメッセージを受け取るが、大抵の人には一つもそのメッセージは受け取れない可能性もある。

ただ映画はとてもエキサイティングなので、エンタメとしてだけでも大成功を収めても、興業的にはそれでいいのだ。大成功なのだ。

この辺りが、言っては悪いがまだまだ日本映画の欠けているところなのかもしれない。

作り手側が、何か社会的なことを伝えようとするなら、超ショートムービーにするか、あるいはこのようなジャンルを選ぶのが最適なのは確かなところだ。日本だったらミステリー、ホラー、近未来あたりか?

最後に、、、、、一言。

まだ見てない人、

もし血を見るのが少しでも苦手な人は絶対に見ないでください





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