家族療法|ジェノグラムにコンステレーションの視座を入れると強力な航海図になる【専門家向け】
この記事への質問がありました。まとめの後に、追加質問とそのお返事、ラジオのURLを張っておきます。合わせてご覧ください。
【お返事】昨日の放送ですね。リンクを張っておきます。この放送の前半は誉め言葉についてですが、後半の談話室で、シンクロニシティとコンステレーションの話をしました。noteには詳細を書いていないので、ラジオのほうをチェックしてください。この談話室を受けた記事が今回のものになります。
※今回の記事はラジオでも視聴できます。テキストを見ながらどうぞ▼
※この記事は、Twitterの質問箱に来た質問を深掘りして回答したものです。
■愛着障害の人のコンステレーション
コンステレーションー聞きなれない言葉かもしれませんが、まず質問者さんへの回答を先にしましょう。
カウンセリングのときは、どの人に対しても、ジェノグラムを書いていくのですが、私の場合、精神年齢も配置していくのです。それをコンステレーション(布置・配置)と呼びました。精神年齢まで記入していく心理士は、かなり少ないのではないでしょうか。
愛着障害の人の配置は、どの人とも遠い位置になります。ただ、相手が愛着障害の人を思う気持ちはあるので、遠くなるだけではないのですね。愛着障害の人は遠く感じていても、相手の人は近くに感じている場合もあります。そうなると、その「相手の人」は、愛着障害の人にとってリソースになるわけです。愛着障害回復のためのリソースですね。
■家族(ファミリー)コンステレーション
コンステレーションとは、布置とか配置と言われるものです。ユング心理学で使われる用語で、一見、無関係のようなものが、何等かのシンクロニシティのような力が働いて、全体的な意味を含んだものに見えてくることをいいます。
これを応用したものに、家族コンステレーションがあります。ドイツの家族療法家、バート・ヘリンガーが始めました。これは、家族のお互いの関係性を距離と方向でとらえ直したものです。例えば、愛着障害の人が「私と父とは近いけど、私と母とは遠い」とか、話したりします。それに合わせて、各人の配置を、その感覚に近いものに修正をかけていきます。
簡単に説明すると、部屋の中央に相談者が立ちます。そこに役割を与えられた参加者(父親、母親、兄弟など)が、相談者と距離と方向を相談しながら立っていきます。距離を置いて立つ人、近い距離で立つ人、後ろに立つ人、それぞれ、相談者の感じのままに、指示されるままに立っていきます。こうやって、相談者にとってちょうどしっくりくる配置を作り上げていきます。
これで、相談者の現在地の家族の配置図ができあがります。家族配置の全体性が具体的に視覚に見えてくるわけです。
これを机の上でやる方法が、家族配置図というアートセラピーです。A4の紙の中央に自分の〇を描き、その周辺に、父、母、祖父、祖母、兄弟などを配置していきます。
アートセラピーも効果はありますが、実際に人をつかって配置していくダイナミックさには及びません。山形の天童市の祭り「人間将棋」のような感じでしょうか笑。
■コンステレーションをジェノグラムに応用する
私は、家族コンステレーションを、精神年齢という視点からジェノグラムに使っています。この方法は、多くの心理士はやっていないでしょうし、まだ誰も言語化していないかもしれません。当然、ネット上にはありません。
具体的には、まず普通の、実年齢が入ったジェノグラムを作成します。親子3代くらいが描かれるといいですね。つぎに、各人々の精神年齢をその横に記入していきます。ここは心理士の力量が試されるところです。話の内容から推察して、または親子関係を加味して、記入していきます。精神年齢とは、
異(異邦人):高橋和巳先生の用語で被虐者のことです。精神年齢は、幼児期(成人期)でしょう。かりそめの成人期ですね。
学(学童期)
思(思春期)
成(成人期)
これが大きな4つの区分ですが、ここに脳機能の問題がある場合は、次の記号を追記しておきます。
MR(軽度知的能力障害)
DD(発達障害)明らかにわかる場合は、ASD、ADHD、LDなどを記載。
SCZ(統合失調症)
BP(双極性障害)
D(認知症)
これで精神年齢が記載されたジェノグラムが完成します。この精神年齢を見ていると、相談者の人が誰とつながりを強め、誰からは離れたほうがいいのかが分かります。また離れたほうがいいのに、離れられない事情の理由のようなものも見えてきます。つまり、心理学でいうところの「人間関係の力動(力学)」が見えてきます。
このようなコンステレーションが配置されたジェノグラムは、カウンセリングを進めていくうえで、とても強力な羅針盤になります。この航海図は、毎回のセッションで、なくてはならないものになっていくでしょう。
このように、コンステレーションはあらゆる人間関係に介在する関係性なので、愛着には関係ありません。
■まとめ
コンステレーションとは、人間関係の配置のこと。いくつかの関係が全体的に見えてくるもの。
関係者の精神年齢を配置(コンステレーション)すると、人間関係の力動・今後の方針がよく分かる。
◇ラジオのおやすみ談話室:箱庭は砂を触っているだけでもセラピー効果あり。
■追加の質疑応答
この記事に対して、質問が2つ来ていました。その質問と回答を収録しておきます。ラジオのURLも張っておきます。
【お返事】それぞれの距離感を解説しましょう。
愛着障害の人のパートナーや子どもとの距離は遠いです。おっしゃる通りです。そしてこのことは、本人も結構自覚しています。ここが普通の人とは違うところです。
しかし、回復が進むと、彼らとの距離感は近くなります。カメレオンと同じです。そんな人にとっては、双子のカメレオンは近い存在になります。
また、カウンセラーへの距離感は、相談者によって違います。このカウンセラーは十分に分かってくれていると認識できた場合は、当然ですが、近くなります。これらは普通の人と同じですね。
【お返事】愛着不全の人にとっては、基本的には、他人を求める気持ちが強いので、人との距離は近いといえます。人を怖がって、ひきこもってはいるのですが、自分のことを「捨てないで」との思いが強いのです。
表面的には遠い感じがしますが、心情的には近いのです。
しかし、やっかいなことに、近くに引き寄せておきたいのですが、近くなりすぎると、甘えが突然最大化して、怒りに変化することがあります。それが相手に向くのです。これが繰り返されます。相手にとっては、振り回されている印象が強くなり、本人から遠ざかりたいと思うようになります。そんな気持ちの動き・コンステレーション(配置)があります。
だから、距離の配置を見ると、近くになったり遠くになったりしているのですが、その引力変化に相手がついていけなくなると、遠い距離を感じてしまうのが愛着不全の方々といえるでしょう。
最後に今日のツイートの解説をしておきます。
毎日いつ症状が悪化するかと怖い思いをして生活しているお母さんの話です。そういう思いをしているので、いつ「お母さん」と呼ばれるか、気が気じゃありません。その娘を思う、母親の気持ちが、娘が母を呼ぶ声(エコー・こだま)として聞こえるだけです。
これは「幻聴」ではないのです。「絆」なんです。そこをカウンセラーは見立てていないと、変なカウンセリングになるので気をつけましょう。
幻聴に関しては、昔から、その背景や内容を精査せず、一発で統合失調症と誤診されるケースが後を絶たないという不幸な現実があります。症状から病名を決定するDSM-5の弊害ともいえるでしょうか💦
■他の助けを求めるのもいいでしょう
もし、あなたが家族関係がなかなか改善しない場合は、上のようなジェノグラムを作る心理士にアドバイスを求めるとよいでしょう。あなたが家族のストレスにうまく対処できるように、そのような心理士は特別なトレーニングを受けています。
⇒解決しない悩みのある方は、ソレア心理カウンセリングセンター へご相談ください。
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