やる気スイッチはどこにある?|やる気が出ないのは病気なのか?
この記事は「シノブラジオ」の覚え書きです。本編が気になったら、下記のラジオのほうもお聴きください。
>>シノブラジオ
臨床心理士・公認心理師の高間しのぶです。埼玉県志木市のソレア心理カウンセリングセンターでカウンセラーとして働いています。
■テーマ
やる気スイッチはどこにある?|やる気が出ないのは病気なのか?
◇こんな疑問や悩みを持っている方に
・やる気はどうしたら出るのか?
・思春期の子どものやる気を出させるコツはあるのか?
・やる気がないのは何か病気なのか?
◇そんな人がこの放送を聴くと、
・やる気はどこから来ているのかが分かります。それによってやる気を起こさせるためのヒントがわかる
◇ツイート紹介
今日のテーマにつながる私のツイートを紹介します。
本当に何度も言って申し訳ないくらいですが、【伝えたい相手に対して、自分の気持ちを言えなくなる】とやる気がなくなりますよ。特に思春期の人々に、この訴えが多い。アパシーの原因もこれが多そう。相談者の気持ちにフォーカスしていると、やる気なさの素の感情に出会えそう。思春期臨床にどうぞ☺
■やる気と感情マヒ
相手(親)が自分の気持ちを分かってくれないと、子どもは自分の気持ちを出すことをしなくなります。自己主張あるいは自己表現しなくなります。やる気というのは「これをやりたい!という自己主張」なので、自己主張しなくなると、やる気も消失してしまいます。
こうやって自分の気持ちを言う場所がなくなるということは、その人にとっては人生の大問題なのです。これがひどくなると感情をマヒさせます。感情を感じないようになります。能面のような顔つきになっている人もいます。
やる気が失せる遠因は、親との関係にあります。子どもの頃にさかのぼるのですね。そこには分かってもらえないという【怒り】が大きく横たわっています。怒りが抑圧されていると、やる気も出てきません。
今日のタイトルにある「やる気スイッチはどこにある?」の答えですが、以上より「親との関係にやる気スイッチはある」ことが分かりました。つまり親が子どもの気持ちを分かってあげれば、子どもは自分のやる気スイッチをいつでもオンできるのです。
◇マウントする人
マウントする人は、怒りの問題を内在化していることが多く、その怒りをマヒさせないと生活しづらいのでマウントという行為に及びます。「自分のが上」という感覚を強烈に味わって、怒りを手なずけようとするのです。マウントしている瞬間はそれでもコントロールはできていますが、日常生活はままなりません。結局、年がら年中マウントしていないといけなくなり、人格的に他人から疎んじられてしまいます。
■アパシーとは
アパシーとは無気力・無関心になってしまうことです。普通なら感情を感じるようなことにも、感情を感じなくなった状態です。もともとは社会心理学の用語です。
アパシーがどのような状態によく見られるをまとめてみると…
・認知症
・PTSD
これらは精神疾患ですので、それぞれの疾患への特別な対応が必要です。
・五月病
・ひきこもり
・不登校
・出社拒否
これらはスチューデントアパシーと呼ばれるもので、いまのところ決定的な対応策はありません。とりあえず、規則正しい生活を送ることが当面の改善策になります。
◇スチューデントアパシー
「スチューデントアパシー」は、アメリカのWaltersが「大学生に見られる、慢性的な無気力状態を示す、男性に特有の青年期発達の障害」として提唱しました(1961)。青年期の心理的発達の障害です。器質的な発達障害ではないところに注意してください。
当初は大学生に限定されていましたが、だんだんと拡大されていき、いまでは社会人にまで適応されています。このようにスチューデントアパシーを例にしてみると分かるとおり、青年期のアイデンティティの獲得の問題とも深く関わっているのです。
社会的アイデンティティ、つまり自分の倫理規範(生き方)がまだ模索中の状態です。これをモラトリアムともいいます。
対応策は、アイデンティティの形成をめざすカウンセリングが必要です。
◇アパシーはうつではない
・うつは気分が深く落ち込みますが、アパシーでは落ち込むことはありません。
・うつは自分が病気だいうことを認識しています。そして周囲に相談したり、病院へ行こうとしますが、アパシーは症状を改善しようとする行動を取りません。
・うつは自傷行為をする場合がありますが、アパシーはその可能性が小さいです。
・うつには抗うつ剤が効きますが、アパシーに効く薬はありません。
■やる気がないこと自体は病気ではないが…
やる気がないこと自体は何の病理でもありません。しかし、あなたがやる気がないうえに、身体化の症状を出しているなら、やる気がないことも病理としてみたほうがいいかもしれません。身体化の症状とは、
・身体症状症(身体表現性障害)
過敏性腸症候群、頭痛、腹痛、アトピー、吐き気などの身体症状があって、それにとらわれ続けたり、不定愁訴を過度に訴えすぎたりする症状です。慢性疼痛もここに入ります。
こういう人は、家族関係の中で感情を押し殺してきたという歴史がある場合があります。これがやる気を削ぐ原因になっているのです。
■まとめ:やる気スイッチは親との関係の中にある
・親に気持ちを分かってもらえるとやる気が出る
・スチューデントアパシーはアイデンティティの問題だが、やる気にも関係する
・やる気がない人で身体症状症などを持っている人は要注意
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