【専門家向け】シンプルに考えるのは難しい|治療を微分・積分で考えてみた

今回はどのように治療技法を学んでいけばいいかについて考えてみました。結構、いろいろ悩んでいる人は多いでしょう。どうやればいいか?羅針盤もなく航海をさまよっている感じの人もいるのではないでしょうか。

結論は「難しい」ということですが、その難しさにも方向はあることを知っていれば、不安で茫然とした感じで心理職を進まなくてもすむかもしれません。

■シンプルは難しい~5年間は、習うより慣れろ

次は今日のツイートです。

高校では微分が初め、積分はあとで学びます。しかし微積の本質がわかるのは、もっと後。大学で物理の実践で使いながら本質が見えてくる。つまり本質から理解しようとしてもムリ。なぜなら本質はシンプルだけど難しいから。だから最初は本質ではなく、習うより慣れろなんです☺

だから、初めは量をこなすことが必要なのでしょう。柔道でいう「段取り」でしょうか。ある程度、おおざっぱな方向さえ間違えないようにすればいいのです。でも全く真逆な方向でも可。その都度、考えて修正を加えれば方向も改善されるというけれど、それも難しいですからね。でも5年くらいやってたら、さすがに方向性間違えてるの分かります。心理職は、1つの心理療法を理解して使えるようになるには、最低1年はかかるでしょう。それを見越して5つくらいの心理療法で5年やれば、自分の適性にあった心理療法が見えてくるでしょう。

この時間を短縮するために、スーパービジョンとか研修受けるのも大切です。自分の進路を常に他人軸をみながら修正を加えるのが初学者には必要なことでしょう。SVは自分の進路の修正作業には必須です。

私も、最初のころは、いろいろな心理療法を受けまくりました。自分が相談者になることもあるし、研修にでかけることもあるし。10年くらいは、心理療法難民(笑)になっていましたかね。やってるほうは、難民でなく本気でやっているわけで。その経験は、いま活きています。いまはカウンセリングというシンプルな形に落ち着きましたが、その随所に、あのころの心理療法の片りんが漂っていると思います。

■臨床に活きる微積分的思考

次は今日の私のツイートです。

例えば高橋和巳先生から見立てを学ぶとします。それは曲線が相談者としたら、その曲線の微分を学んでいるわけです。接線の方向が決まる。つまり見立てが決まる。しかしここからが重要。次は積分して、全体の臨床像から考える作業が始まる。これが治療です。ここができて初めて、高橋見立てが生きてくる。積分は経験と知識の集大成☺

しかし高橋見立てもシンプルですが難しいのですが、それを活かさないと治療へ進めません。微分で見立てを決めて、積分で治療を進めていく。こんな感じですね。

◇積分の治療論

じゃ、この積分をどうやってやっていくか、それは多くの著書に当たって感化されていくしかないでしょう。治療論としては、中井久夫先生の「徴候・記憶・外傷」が今でも燦然と輝く北極星のようです。これ以上の本はないかもしれません。これを軸に、いろいろな、あなたにとってしみじみとする技法や考え方に出会っていってください。中井先生は、臨床の中から出てきたものしか語っていないようです。何らかの理論をもとにしているわけではありません。強いていえば「人間学」かな。

上の本のp.155 「外傷神経症の発生とその治療の試み」に、積分に関連する(と思われる)記述に出会えます。「われわれは全体像をまず持つ。その中での位置づけであって、1つひとつは不正確であってもいいわけです。むしろ事実というのはやぶの中でいい。」とあります。この全体像が「積分」に当たると思います。

この部分は、「虐待の証拠は、治療者が鬼の首を取ったようにしないほうが良い」という中井先生の経験が語られたあとに出てきます。それをすることで相談者との関係が不安定になることがあるといいます。これは本当にそうでしょう。それで関係性を崩した体験、私にもあります。

微分をして見立てをもつのは、事実を得るということで必要ですが、

  • それを声高に振りかざさないほうがいい

  • 事実は不正確のままにしておいたほうがいい(そうしないと人格が破壊される)

  • 藪の中にあったほうがいい ということですね。

結論としては、【見立てを立てたらそこから離れる】ことが一流の治療者ということかもしれません。

⇒解決しない悩みのある方は、ソレア心理カウンセリングセンター へご相談ください。

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