「地域医療といえば、釜石の中田薬局」を浸透させる。共感を呼ぶ採用サイトが仲間集めに大活躍。|採用支援事例
地域における人手不足の問題の背景には、少子高齢化、若年層の都市部への流出、地域経済の衰退などがあり、企業は人材確保のために日々奮闘しています。
ソウルドアウトは、2021年6月に岩手県釜石市と地域活性化起業人制度を締結し、任期満了となった2024年6月以降も、釜石市の経済活性化と地域の魅力向上に向けて取り組んできました。2024年10月には釜石市と「包括連携協定書」を締結し、活動を強化しています。
今回、釜石で1955(昭和30)年に開局した中田薬局の採用サイトを制作。昨年10月に完成し、早速一名の採用につながったそうです。
元・地域活性化起業人であり、今も釜石で活動するデジタルマーケットデザイン本部の池井戸 葵とともに、株式会社中田薬局 代表取締役会長の中田 義仁さんにインタビューしました!
釜石で開局から70年。地域の「かかりつけ薬局」
震災を機に「地域連携」「地域医療」に力を入れる
──── 中田薬局さんについて教えてください!
中田:中田薬局は、1955(昭和30)年、私の父が開局した薬局です。
私は仙台で薬剤師として働いたあと、1996(平成8)年に釜石に戻ってきて、中田薬局で働きはじめました。その頃から、患者が病院や診療所で処方箋を発行してもらい、薬局で薬を受け取るという「院外処方」のシステムが広まりつつあり、それに伴い調剤薬局の数も増えていきましたね。
中田薬局も世の中の流れに合わせて、10年ほどは店舗展開に力を入れていました。しかし、やがて薬局の質の向上に経営の軸に置くようになっていきます。薬剤師は、処方箋通りに薬を渡すだけではなく、処方内容にもっと関わっていくべきだという思いが強くなったからです。
──── なるほど。薬局や薬剤師の役割を見直すようになっていったわけですね。
中田:そうですね。特に2011年3月に起きた東日本大震災では、地域医療における薬剤師の役割の重要性をさらに強く意識するようになりました。
阪神・淡路大震災の際には、建物の崩壊や火災による負傷者が多く、医療活動の中心は負傷者の治療でした。しかし、東日本大震災では、長期間の避難所生活を送る高齢者に、高血圧や糖尿病などの慢性疾患の薬をいかに安定的に供給するのかということが重要だったんです。
震災を通じて、薬剤師が地域医療を支える存在として果たすべき役割を再認識しました。
──── 震災を機に、地域医療の重要性を感じられるようになった、と。
中田:おっしゃる通りです。震災以降、行政の中でも「医療・介護連携」の重要性がさらに認識され、様々な取り組みが行なわれてきました。
例えば、2012(平成24)年には医師会と行政の連携による「在宅医療連携拠点チームかまいし」が発足し、中田薬局は釜石薬剤師会の一員として参加しています。チームかまいしの存在によって、釜石の医療・介護・行政連携は大きく前進しています。
(参考:https://www.city.kamaishi.iwate.jp/category/bunya/tiikihoukatukea/zaitakuiryourenkei/
https://www.jmar-form.jp/r5juso/lahkd-03case2kamaishi.pdf)
地域医療の担い手として、病気だけを診るのではなく、その方の生活全体を見つめる。患者さまはもちろん、地域の生活者の皆さまにとって身近で頼れる存在である「地域のホーム薬剤師」として貢献していきたい。中田薬局の全社員がもつ思いです。
地域の課題解決を軸に活動の幅を広げる
──── 地元・釜石への強い想いを感じました。
中田:釜石では人口減少が進み、少子高齢化が顕著に現れています。製鉄業が盛んだった1980年代から1900年代には9万人ほどいた人口が、現在では3万人ほどになりましたし、私が幼い頃、毎年数千人と生まれていた子どもは、今日では年間100人ほどに減ってしまいました。
こんなにも人が減ってしまい、まち自体なくなってしまうのではないだろうか。小さな薬局にも、これからのまちの未来を担う子どもたちが故郷に誇りと希望をもてるように、何かできることはないだろうか。そういったことを考えるようになりました。
そこで私たち中田薬局は、地域のハブ(つなぎ役)になりたいという思いから、「薬局」や「薬剤師」の枠を超え、地域課題の解決に積極的に取り組んでいます。
──── 地域活動というと、どのような取り組みを行なっているのでしょうか?教えてください!
中田:誰もが薬局に気軽に訪れてもらえるような場所づくりにチャレンジしています。
現在行なっている地域貢献活動には、体操着のリユース活動、カブトムシの幼虫をプレゼントする「なカブトイベント」、「中たオルプロジェクト」などがあります。
「中たオルプレジェクト」は、地域で不要になったタオルを回収し、高齢者にタオルを雑巾にリメイクしてもらい、それを市内の小、中学校へ寄贈しています。「中たオル」を通じて、多世代が交流できる事業です。
今週末は、「なかぴー」の着ぐるみを被りサンタに扮して、子どもたちへカブトムシの幼虫をプレゼントしてきますよ(笑)。
私自身、釜石の教育委員でもあるので、地域全体で子どもを育てていくことに力を入れていきたいと考えています。
──── 中田さんが楽しそうに取り組まれている姿が印象的です(笑)。
中田:やることは、負担がなく、楽しくできて、継続できること。あとは、純粋に楽しいことが大好きです。
「なカブトイベント」は、うまくいかないだろうと周りからは反対されていたのですが、実際にやってみると、子どもたちから大人気でした!皆の期待を裏切ってうまくいったとき、とても嬉しかったですね。
池井戸:中田薬局さんは、事業を通じて地域課題の解決のために尽力されています。しかもその理由が利益ではなく、地域の皆さんの健康や安心、笑顔なんです。地域を盛り上げるために全力で取り組まれている姿は本当にすばらしいです。
「ナカタ薬剤師」を集めるための採用サイト制作
中田薬局の薬剤師は「ナカタ薬剤師」
──── ここまでお話を伺い、中田薬局は「普通の」薬局ではないな……と感じました。今回採用サイトを制作しようと考えられたのは、何かお悩みがあったのでしょうか?
中田:地方ならどこでも当てはまりますが、中田薬局のある東北三陸の沿岸地域でも、医療従事者の人材不足は深刻な問題です。若手や新卒の薬剤師を採用したいと考え、地道に採用活動を続けてきましたが、企業説明会に出ても、中田薬局のブースになかなか人が来てくれなくて……。
自分たちの取り組みをどのように伝えれば、魅力的に感じてもらえるのか。そして、釜石に住んでいない人たちに釜石の楽しさやおもしろさをどのように伝えれば良いのか。
そんな悩みを抱えていたときに、池井戸さんに出会い、相談したんです。
池井戸:ご相談をいただいたあと、中田さんには内緒で、中田薬局の店舗を訪ね、薬剤師の皆さんに話を伺いました。皆さんの「普段着の言葉」を直接聞きたかったんです。
突然の訪問にも関わらず、どの店舗でも快く対応してくださいました。それぞれの薬局で30分から1時間ほどお時間をいただき、「中田薬局で働くことについて」「職場の雰囲気」「働きやすさ」など、率直な感想を伺いました。
印象的だったのは、皆さんがそれぞれ自分の言葉で答えてくださるなかに、共通している「想い」があるということです。皆さんの在宅医療や地域に対する想いが強く、その想いの深さや一貫性が、中田薬局らしさを形づくっているのだと気づかされました。
これこそが中田薬局の魅力であり、採用サイトでしっかりと打ち出すことができれば、同じ志をもつ人たちに惚れ込んでもらえるはず。中田薬局さんの想いが伝わる採用サイトを作ろうと、改めて決意しました。
──── 最初はどのようなステップからはじまったのでしょうか?
池井戸:まずは「会長メッセージ」の作成からスタートしました。薬剤師の皆さんや、中田さんから伺ったお話をもとに、「中田薬局として、こんなメッセージを発信したいのではないか」と考え、具体的な案を提案をしていきました。
サイトの「仲間になるあなたへ」ページにあるメッセージです。中田薬局ならではの価値観が伝わるように意識した部分ですね。
中田:一字一句、丁寧に書いてくださっていました。まさに、それが言いたかった!ということをストレートにまとめてくださっていたように思います。
池井戸:ありがとうございます!
──── では、採用サイトで特にこだわった部分があれば教えてください。
中田:一番気に入っているのは「ナカタ薬剤師」のところですね。これからもっと発展させていきたい、育てていきたいと考えています!
池井戸:そう言っていただけるのは本当に嬉しいです!中田薬局の薬剤師さんは一味違うぞ、ということを伝えるために「ナカタ薬剤師」という名前をつけてインタビューコンテンツを作成しました。
この部分は、地元の信頼できるライターさんと一緒に取り組みました。伝えたいことが多すぎて、最初はなかなか一つの記事にまとめられなくて(笑)。ただ事実を盛り込むだけではなく、中田薬局ならではの想いや、患者さんへの愛、そしてその言葉に込められた背景まで、しっかり表現しようと試行錯誤しました。
中田薬局の魅力がぎゅっと詰まったコンテンツに仕上がったと思います。
──── 「ナカタ薬剤師」ページを拝読して、皆さんの視野の広さを感じました。「薬剤師」という枠を飛び出して、地域のために働かれている姿勢がとても印象的です。
中田:ありがとうございます!
私自身、現場に出て患者さんと向き合い、何か問題があれば自ら行動するということを常に意識しています。「そこまでやっていいのか」という姿勢を、隣にいる薬剤師に見せることが大事だと思っているんです。
薬剤師は、どうしても医師に遠慮してしまいがち。そこで私自身が医師とかけあったり、医師との関係性をよくしたりして、医師への「壁」を下げ、薬剤師が行動しやすい環境をつくるようにしています。
池井戸:「中田薬局の魂をもつ『ナカタ薬剤師』ならこうする」という姿勢を、代表である中田さん自身が現場で体現されてきたからこそ、その考えが社員の皆さんに浸透しているんだと思います。
──── 「ナカタ薬剤師」のネーミング、すてきですね。「中たオル」「なカブドイベント」もそうですが、親しみがもてます。
中田:「中たオル」というネーミングは、インターンシップに来た大学生が考えてくれたんです。大学生ならではの柔軟な発想で、すごく気に入っています。過去4回インターン生を受け入れたことで、私にとっても社員にとっても良い刺激となり、地域活動を促進させることができました。
地域活動をするなかでは、様々な人と関わり、力を借りる機会が増えています。「薬局」という枠にとらわれず、広がりをもちながら、楽しく仕事をしていきたいですね。
池井戸:中田さんのすごいところは、何事もブレーキをかけず、前向きに「いいね、やってみよう!」と言ってくださること。そのあとで気になる点があれば、どう解消するかを一緒に考えてくれます。
もし「それはだめ」「それはいい」と線引きされてしまうと、お互いに探り合いになったり、「どこまでやっていいのだろう」と迷いが生じたりすると思うんです。
中田さんとのコミュニケーションは常に前向きなので、私も安心してアクセルを踏むことができます。
想いに共感して、採用につながった
──── 実際、成果にはつながっていますか?
中田:はい、中途採用で新しい仲間の採用が決まりました!
釜石への転職を希望する40代前半の男性薬剤師の方で、中田薬局以外にも、二つの薬局と迷っていたそうです。事前に採用サイトを見てもらい、面接では私と薬剤師二人と直接お話をしました。
あとから聞くと、「採用サイトに書かれていることと実際の薬剤師の話がまったく一緒だった」「地域医療への想いに共感できた」ということも入社を決めた要因になったようです。
池井戸:採用サイトを作って本当によかったです!採用サイトの内容と、実際の薬剤師さんの話が一致していたことが、すごく重要なポイントですよね。
──── すばらしいですね!では、中田薬局の社員の方々からの反響はいかがでしたか?
中田:自分たちが何者なのか、中田薬局がどのような役割を担っているのかを改めて認識する機会になったと思います。一人ひとりが、「中田薬局の目指しているビジョンと自分たちのやっていることがつながっている」と感じてくれたようです。
池井戸:インタビューさせていただいた石田さんからは「ありがとうございました」というメールをいただきました。隅々まで読んでくださったんだろうな、と思います。
石田さんはとてもまじめな方で、人の「人生」に真正面から向き合っていらっしゃる方。訪問医療では、人生の終わりに立ち会うこともあるそうです。目の前の患者さんが、これまで積み重ねてきた人生の最後をどのように締めくくるべきなのか、真剣に考えていらっしゃって。今でもそのお話を思い出すと、胸が熱くなります。
今後の採用サイトと中田薬局の広がり
「地域医療といえば中田薬局」全国から仲間集め
──── 今後、採用サイトをどのように活用していきたいと考えていますか?
中田:「ナカタ薬剤師」という言葉をもっと広めていきたいです!誰かにとっての憧れのような存在になれたら嬉しいです。
また、地域のかかりつけ薬局として、できることはまだまだあります。いろいろな人とつながり、地域の中に入って、積極的に活動していきたいです。
採用サイトを通じて私たちの想いに共感してくれる仲間をもっと増やし、地域医療を発展させていきたいです。
池井戸:「地域医療といえば中田薬局」が、地域や県という枠を超えて全国に広まっていくといいなと思っています。
この採用サイトが学生だけではなく、薬剤師のネットワークを通じて全国に発信され、地域医療に関心がある人から問い合わせが来たり、全国から研修に来たりするようになるといいですよね!
そのためにも、「ナカタ薬剤師」ページを定期的に更新したり、地域連携の事例を充実させたりして、魅力を伝えていきたいです。
──── 全国から「ナカタ薬剤師」の仲間集め、今後もやっていきたいですね!
中田:最近は、地域おこし協力隊の募集も始めました。私たちの活動の様子を発信する役割を担っていただく方を募集しています。釜石という3万人のまちで働くことが、その方にとっても私たちにとっても、きっとすばらしい経験になり、多くの学びが得られると思っています。
私たちの地域貢献活動は、地域の方からも評価が高く、まだまだやれることがあると感じています。ただ、現在はマンパワーが足りません。
採用サイトを通じて、私たちの想いをわかりやすく伝え、共感していただける仲間と一緒に、さらに釜石を盛り上げていきたいです。
──── 本日はありがとうございました!
編集後記
「地域医療の担い手になる」強い責任感をもちながらも、とても楽しそうにお話ししてくださった中田さんが印象的でした。インタビュー前に採用サイトを拝見し、お会いできるのを心待ちにしていましたが、当日は本当に楽しいお話を伺うことができました!いつかナカタ薬剤師さんに会ってみたいです。
【インタビュー・執筆・編集:みやたけ(@udon_miyatake)】
▾釜石市で活躍する池井戸へのインタビュー記事です
👇 そのた対談・インタビューはこちら
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