ノーネーム
あの悲しい街を歩いていたら
あの赤い自転車だって
道端にほかられた持ち主がいないかわいそうな犬のようにみえる
たとえそれが本当は大切にされていて
明日の夕方になったら、持ち主が何事もなかったかのように取りに来る品であったとしても
そんな風に
この街には風はなく
そのかわりにただの空気が流れる
それは、この場所を微かに満たす湿度で湿っていて
それでいて土埃が舞っているような
そんな街
〈 today’s art 〉
Title : no name
/ photograph
/ Place : Florence
/ Yuko