商店街内の「違法駐輪のメッカ」から駐輪を無くそうとした話
この記事では、STEP(社会的信頼システム創生センター)が2010年~2015年にかけて行った活動について紹介しています。
違法駐輪のメッカ
大阪市北区の地下鉄南森町駅三番出口付近は、「違法駐輪のメッカ」と呼ばれるほど、自転車の違法駐輪状況がひどい場所でした。違法駐輪は、歩行の妨げとして日常的な危険となっているばかりでなく、火災といった緊急時に、消防車、救急車の活動の妨げになるなど、地域にとって長い間の課題となっていました(下の写真は2011年3月の状態)。しかし、違法駐輪を排除する決め手はなく、地域にとってもこの対応は大きな負担となっていました。
撤去しても撤去しても、すぐに元の状態に戻ってしまうのです。
「待ち合わせに使われる場所」を目指して
「日本中で問題になっている違法駐輪をどうしたら減らすことができるのか?」、「地域の情報に習熟した商店街の方々にとってさえ困難な課題に対して何か役に立つことができるのか?」こうした疑問と逡巡を抱えながら、りそな銀行ショーウィンドウ前の違法駐輪排除実験プロジェクトはスタートしました。STEPの用意した解法は、皆が多目的に利用する公共空間を生み出し、それを通じて駐輪を減らすというものでした。
まず最初に、これまであまり利用がなかった、りそな銀行のショーウィンドウを、銀行の理解のもとで、人々の興味を惹く素敵な空間に作り替える試みから始めました。利用できる経済資源がほとんどない中で、りそな銀行、役所、地元企業の協働でリニューアルした写真が下です(2011年7月)。
また、高度な伝統技術を基礎にして出来上がった、伝統ある提灯屋さんの傑作が下のお化け提灯です(2011年8月)。駐輪を見つめる、怖・可愛い提灯は場の空気を変えてくれました。
憩いの場の創生
ピクデザインサービスの山田悦夫さんに指導を受けながら、学生2名が場所のデザインを進め、天神橋筋二丁目商店街の理解と援助をえて実現したのが、下の写真です(1枚目は設置前の清掃作業、2枚目は設置作業、3枚目は設置後)。丹波佐治スタジオに仲介いただき作成した木製ベンチ、木製プランター、木製看板が設置されています。
花は、北区役所に斡旋していただいた「種花の会」の花です。また、その水やりは、りそな銀行南森町支店が担当してくださいました。また、掲示はワープロ打ちではなく、書家の今柄紫峯さんが書いてくださいました。
ショーウィンドウ内も展示が変わっていき、それらを見ながら、待ち合わせたり、談笑したり、食事をしたりする方々が増えてきて、それにつれて、駐輪は減ってきました。
下の写真は2012年4月の展示です。おばけ提灯の展示は、天満の創作民話の展示(地域の技師たちの力の結集!)へと展開しました。このすべての展示は、STEPのそれまでのつながりを基礎として実現したものです。
STEP主催の川柳大会の作品も展示しました。下の写真は、STEP川柳大会で「駐輪」がテーマだった時の大賞作品の展示です。
下の写真は、この場所で「南森てんこもりライブ」が行われている様子と、書家の今柄紫峯さんが、ガラスに書をしたためるパフォーマンスを行っているところです。こうしたパフォーマンス、ストリートライブなどが増えることで、違法駐輪のメッカは、あらたな公共空間へと変わっていきました。
※本稿は、関西大学社会的信頼システム創生センター(STEP)発行『みじかな信頼学』特別号の原稿をもとに、一部改編して掲載しています。